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【エッセイ②】黙って抱きしめなはれ。

 私が住む、暑苦しい島にも、夜になれば心地いい風が吹き込む季節になってきましたな。

 この風が、我々の島での秋の合図なのかなとも思ったりして。

 風に吹かれながら飲むビールはやはり格別ですな。いつも飲んでるビールですが、何かこう贅沢な感じがしますな。

 1人、街をブラブラしてたまたま見つけた居酒屋で一杯飲んでた時です。

 カウンターの隣の席に、自分よりは年上とも思える、男女2人が入店してきて。

 何やら、色々話をしている女性。それを親身になって聞いている男性。
 趣のある光景ですね。羨ましい。
 私も含めてですが、やはり誰かと2人で過ごす時間はいいですな。

 酒も、時間も進むにつれて、女性よりも男性が話す比重の方が多くなってきて。
 色々、アドバイスをしているようで。

 人は、生きていれば多くの悩みを抱えてしまう生き物ですね。それは、仕事のことだったり、恋のことであったりと、様々で。

 そんな時は、誰しもが誰かにそれを聞いてほしいと思うもので。
 私も悩んだ時は、人に話したり話さなかったり。

 はたまた、悩みを話された時は、それを解決してあげたいと思うのも人間なんだなと。その解決策をズバリと言えるならカッコいいだろーなーとか思います。

 しかし、そのアドバイスや解決策というのは、悩んでいる本人が、本当に求めていることなのか?とも思ったり。

 悩んでいる立場になった時、本当に欲しいものは何なのかとか思ったり。

 それは、たいそうなアドバイスでも、かつて誰かが仰ったであろう名言ではないと思うのです。
 そんな言葉は、誰かが言ってくれる、はず。

 悩みを話された人にできるのは。2人のときに話をしてくれた人のためにできるのは。

 相手が気が済むまで、話を聞いてあげたり。
 相手が「帰ろう」というまで共に時間を過ごしてあげたり。
 お酒代なんか払ってあげたり。

 名言やアドバイスなんかじゃなく、「あなたの味方だよ」と一言。
 その方が救われるのかなと。

 それが、大切だと思う相手であるなら、なおさらです。

 我々はまだ若い。きっと。この人生における悩みなんて誰も解決なんか出来ないのです。

 だから、味方であるという事を伝えてあげればよろしい。それだけでよろしい。

 隙があれば抱きしめてあげたり。ロマンチックな夜を過ごしたり。
 願わくば、いい夜を。

 それでは、失礼。

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