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【まとめ#4】「台湾と二号」「映画と短篇のタイトル」「007」

こんにちは、三太です。

今年ラストの投稿にする予定でした・・・。
最近は月曜投稿をしているので、本当はそうなのですが、今日から来週まで年末年始をはさみ、毎日投稿をしてみようと思います。
そんなにたくさん一気に投稿をしたことがないので、若干不安ですができる限り頑張りたいと思います。

では、久しぶりにこれまでのまとめをします。
これまでに3回まとめをしているのですが、前回は昨年の8月でした。
つまり、1年以上前ということになります。
いつも忘れた頃にまとめをしているので大変ですが、逆に言うと忘れているからこそまとめることに意味があると考え、整理していきたいと思います。

今回は吉田修一さんの全四巻の個人全集も全て一段落したということで、これまでに作ったまとめと、それ以降の投稿記事を読み直していきます。


これまでに紹介した作品・映画

左が吉田修一の作品名(番号順)で、右側の数字が打たれているのが、その作品に出てきた映画名です。
ちなみにこれまでの3回のまとめでは、作品は27作、それらに関する映画は89作(見られていない映画が13作)、まとめていました。

ここからが、今回新たにまとめる作品と映画です。

#28 『平成猿蟹合戦図』

#29 『太陽は動かない』→90 太陽は動かない

#30『路』→91 悲情城市
      92 シカゴ
 
#31『愛に乱暴』→93 流れる
         
#32『怒り』→94 ライフ・オブ・パイ
       95 怒り
 
#32(番外編)『小説「怒り」と映画「怒り」』→96 ブエノスアイレス
  97 ブロークバック・マウンテン
          
#33『森は知っている』
 
#34『作家と一日』→98 ベニスに死す
          99 殺人の追憶
          100 グエムル
          101 男はつらいよ 花も嵐も寅次郎
     
#35『橋を渡る』→102 戦場のメリークリスマス
      
#36『犯罪小説集』→103 酔拳
          104 白蛇伝
          105 楽園
 
#37『泣きたくなるような青空』
  →106 それでも夜は明ける  
   107 シェルタリング・スカイ
   108 スイミング・プール
   109 舞妓Haaaan!!!

#38『最後に手にしたいもの』
  →110 南極料理人
   111 007 スカイフォール
   112 フィフス・エレメント
   113 残菊物語
         
#39『ウォーターゲーム』→114 愛人/ラマン
             115 カサブランカ

#40『国宝』→116 喜劇・駅前女将
       117 喜劇急行列車

#41『おかえり横道世之介(続 横道世之介)』→118 吉原炎上
   119 鬼龍院花子の生涯
   120 陽暉楼
   121 ポンヌフの恋人
   122 ベティ・ブルー
   123 夜をぶっとばせ
   124 イージー・ライダー
   125 キャノンボール

#42『アンジュと頭獅王』
       
#43『逃亡小説集』

#44(20『うりずん』・21『静かな爆弾』の間)「紙吹雪」『青春 コレクションⅠ』
→126(56「フラッシュダンス」・57「子猫をお願い」の間) ハンニバル・ライジング
      
#45(44「紙吹雪」・21『静かな爆弾』の間)「命綱」『青春 コレクションⅠ』

#46(24『元職員』・25『キャンセルされた街の案内』の間)「一途」『青春 コレクションⅠ』

#47「自伝小説Ⅰ」『青春 コレクションⅠ』

#48(44「紙吹雪」・45「命綱」の間)「愛のある場所」『恋愛 コレクションⅡ』
 →127(126「ハンニバル・ライジング」・57「子猫をお願い」の間) 愛の讃歌

#49(32『怒り』・33『森は知っている』の間)「愛を誓う」『恋愛 コレクションⅡ』

#50(34『作家と一日』・35『橋を渡る』の間)「六つ目の角で」『恋愛 コレクションⅡ』
 →128(101「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」と102「戦場のメリークリスマス」の間) 欲望という名の電車

#51(35『橋を渡る』・36『犯罪小説集』の間)「愛住町の女」『恋愛 コレクションⅡ』

#52「自伝小説Ⅱ」『恋愛 コレクションⅡ』→129 神様のくれた赤ん坊

#53(26『横道世之介』・27『空の冒険』の間)「ストロベリーソウル」『犯罪 コレクションⅢ』

#54「自伝小説Ⅲ」『犯罪 コレクションⅢ』

#55(15『7月24日通り』・16『ひなた』の間)「台北迷路」『長崎 コレクションⅣ』

#56「自伝小説Ⅳ」『長崎 コレクションⅣ』

これまでに合計で、作品は56作、それらに関する映画は129作(見られていない映画が15作)紹介してきました。

吉田修一作品と映画のつながり

1回目のまとめ時に指摘していたのは、「様々な人の視点での語り」「逃避行であること」「罪を扱っている」ことでした。

2回目のまとめの時に指摘したのは、「登場人物の設定が映画と通じること」「映画で扱われているテーマが作品のテーマにもつながっている」「上京という設定」ということです。

3回目のまとめの時に指摘したのは、「「アウグスト・ザンダー」と『横道世之介』がカメラマンでつながる」「ある町を舞台とすること」「青春を描くこと」ということです。

ここからが今回のまとめです。
映画と吉田修一作品のつながりを見ていきます。

「悲情城市」→任侠の世界は吉田修一作品にもよく出てきます。(『長崎乱楽坂』『国宝』など)

「流れる」→映画「流れる」では男(親)の不在が描かれます。また「流れる」の制作年(1956年)が『愛に乱暴』内の事件の年と関わる。

「ライフ・オブ・パイ」→一人の男の人生を描くという点では、『国宝』と通じます。

「ベニスに死す」→同性愛的な要素はつながります。

「殺人の追憶」→警察の事情聴取のひどさなどが『湖の女たち』の警察にも通じる。
 
「グエムル」→社会問題を作品の中に取り入れるという手法は共通している。

「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」→キャラの良さで言うと、寅さんと世之介はつながる。

「白蛇伝」→「白球白蛇伝」(白球白蛇伝)という短篇に出てくる一節です。短篇のタイトルにも生かされていたり、白蛇のイメージが短篇の中に出てきたり(『犯罪小説集』(文庫)p.365)短篇を創作する際の大きな源泉となっていることが伺えます。

「007 スカイフォール」→『太陽は動かない』に影響を与えているのではないか。①世界各地でアクションがある点。②ボンドの両親が亡くなっている点。(鷹野らAN通信のメンバーも孤児達です)

「フィフス・エレメント」→未来を描く(SF)という点では、『橋を渡る』と通じます。どちらも今の延長上にある世界というのがよくわかる描かれ方がされています。

「残菊物語」→歌舞伎の世界を描くという点では『国宝』とつながる。

「喜劇・駅前女将」→『国宝』にも荒風・大雷など関取(お相撲さん)が登場します。特に、大雷は喜久雄の娘にとって重要な人物となります。

「喜劇急行列車」→『国宝』で喜久雄と徳次が長崎から大阪に出て行くときに、乗る寝台列車が「さくら」です。

「吉原炎上」→春・夏・秋・冬と章が区切られていく感じが『ひなた』と同じです。ちなみに『横道世之介』と『おかえり横道世之介』は四月・五月・・・三月と月ごとに章が区切られます。春夏秋冬が描かれるという点ではそれも似ています。

「鬼龍院花子の生涯」→ヤクザの盛衰を描くという点では、『長崎乱楽坂』や『国宝』とつながる部分がある。

「ポンヌフの恋人」→パリの街から浮いている、つまり世間から隔離されている二人という意味では、逃避行をする『悪人』の祐一と光代の姿にも似ているように感じました。

「ベティ・ブルー」→社会から切り離された男女という点では、『悪人』に通じます。

「夜をぶっとばせ」→青春ものという点では、『横道世之介』をはじめ吉田修一さんのいくつかの青春に関わる作品に通じている。

「イージー・ライダー」→ラストの破局に至る感じが『悪人』のようです。

「キャノンボール」→吉田修一作品でアメリカ大陸を横断する話はいくつかあります。そもそも『おかえり横道世之介』では、この映画が出てきたあと、世之介はコモロンとアメリカ大陸を横断する旅行に出ます。また『あの空の下で』にある短編「踊る大紐育(ニューヨーク)』でも、アメリカ大陸を横断します。二つの話と違うのはこの映画は東海岸から西海岸へ向かうことです。(作品はどちらも西海岸から東海岸へ向かいます)

「愛の讃歌」→一代記という点では『国宝』などに通じます。

「欲望という名の電車」→「六つ目の角で」という作品のタイトルに映画の内容が関わっています。もしかして作品を作る上でインスピレーションを与えたかもしれません。

『愛に乱暴』→①p21に台湾の話題が出てくる。(『路』や「悲情城市」からの流れがありそう)②桃子の義父の宗一郎は二号さん(時枝)の息子で、正妻の息子ではなかったということ→「悲情城市」の始まりは妾の出産のシーンから始まる

以上がまとめになります。

新たな気づき

今回映画から作品への直接的なつながりが感じられたのが、『愛に乱暴』です。
台湾が出てきたり、妾の子どもであったり、『路』や「悲情城市」からの流れがありました。

映画と短編のタイトル(「白球白蛇伝」や「六つ目の角で」)とのつながりもありました。これはこれまでにも『あの空の下で』や『空の冒険』に見られた手法です。

「007」は上でも指摘したように、(①世界各地でアクションがある点、②ボンドの両親が亡くなっている点)『太陽は動かない』に影響を与えているのではないかと思えました。

最近の実感としては数が増えてくると、作品と映画とのつながりが見えにくくなってきていました。
けれども、改めて振り返ってみると、意外に多くのものがつながっているなと感じました。
また、今後も『ミス・サンシャイン』や『罪名、一万年愛す』など映画が深く関わる作品があるので、吉田修一作品と映画の関係について注目し続けたいです。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

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