竹村英樹@教師

竹村英樹@教師

最近の記事

【あの時はありがとう ─ 55年後のお礼 】

 小学校1年生の時の話である。その小さい女の子は給食が苦手だった。小食のうえ、時間内に食べ終わらないといけないから。とくにパンを食べきることが負担だった。一方、その男の子は給食が得意だった。彼は「名は体を表す」という言葉がふさわしく、大柄であった。給食を食べ終えて、隣をみると、女の子のパンがほとんど残っている。「オレ、食べてやるよ」といって、パンを両手の手のひらでつぶして、口の中に放り込んだ。女の子は救われた。この出来事は女の子の記憶に刻まれた。  さて、時は半世紀以上すぎ

    • 【コロナ禍を乗り越えて ─ S君との4年間】

      「約束だ。いつか見に行くからね。」  4年生のS君との約束を果たしに、彼の選手生活最後の試合を見にいった。S君は学部時代のクラスメイトの息子さんだ。地方在住の親の代わりに、年に2,3回食事をしながら大学生活の話を聞いていたが、競技者としての姿を見るのははじめてだ。コロナ禍で制限された大学生活の前半、怪我による手術とリハビリ、研究室に所属してからは離れたキャンパス間を行き来する生活。その時々に話を聞いていたが、4年間で多くの時間を過ごしたその器械体操場と彼の競技を見たことがなか

      • unlearn 学びほぐす

        哲学者の鶴見俊輔(1922-2015)が、NYの日本図書館でヘレン・ケラー(1880-1968)と会った時の話です。鶴見が17歳の時ですから、戦前です。   私がハーヴァードの学生だとこたえると、自分はそのとなりのラドクリフ女子大学に行った、そこでたくさんのことを「まなんだ」が、それからあとたくさん「まなびほぐさ」なければならなかった、と言った。  たくさんのことをまなび(learn)、たくさんのことをまなびほぐす(unlearn)。それは型どおりのスウェーターをまず編み