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『日本文学全集 10』 【うちの本棚】#歌舞伎

読書感想でなく、本棚にある歌舞伎関連書籍について、どんな本なのか記録しつつ紹介するものです。

基本情報

タイトル:池澤夏樹=個人編集日本文学全集 10
発行
(奥付の初版の年を記載):2016年
出版:河出書房新社

特徴

記事タイトルが、全集の番号だけてある理由は、表紙をご覧いただきたい。

表紙

日本文学全集10 背表紙
表紙。不思議な帯の絵…エリンギ?(違)

奥付のとおりにタイトルを書くとすると、こうなる。

池澤夏樹=個人編集
日本文学全集10

能・狂言
説経節
曽根崎心中
女殺油地獄
菅原伝授手習鑑
義経千本桜
仮名手本忠臣蔵

訳者=岡田利規
   伊藤比呂美
   いとうせいこう
   桜庭一樹
   三浦しをん
   いしいしんじ
   松井今朝子

日本文学全集10 奥付より。実際の本の奥付にある作品名のフリガナは省略した。

…というわけで、記事タイトルにどうやってどこまで書いていいのかわからず、全集の名称と号数だけを記載しました。

能として入っているのは《松風》《卒塔婆小町》《邯鄲》。
狂言は《金津》《木六駄きろくだ》《月見座頭》。
説経節は《かるかや》。いずれも現代語訳で収められている。
浄瑠璃・歌舞伎でおなじみの作品ももちろんすべて現代語訳。どれも個性的な訳で、もとの文を知っていても面白いし、知らなくても面白い。

説経節《かるかや》がバリバリの九州言葉だったり、《女殺油地獄》の殺し場で与兵衛の息遣いが怖いといった楽しさもあるし、全訳なので浄瑠璃・歌舞伎の三代名作をストーリーの細部まで読める面白さがある。

何より、これらの作品が一冊に収まっているのが、ちょっと感動的である。

その他

この本を「#歌舞伎」という分類にするのも厳密には、違うとは思う。記事タイトルでの強引な省略に続いて、言い訳ばかりで恐縮ながら、わたしがこの本を買ったのは歌舞伎のためだったので、#歌舞伎 という分類にさせていただいた。

歌舞伎舞踊《汐汲しおくみ》は、能《松風》を題材にしている。
説経節《かるかや》を原拠とする人形浄瑠璃・歌舞伎《苅萱桑門筑紫いえづとかるかやどうしんつくしのいえづと》がある。(「いもり酒」の場面を観たことがあるが、確認のために公演データベースを観たら99年の上演が最後だったようで驚いた。)

歌舞伎の予習のとき、演目によって『謡曲百番』とか、日本古典文学大系の浄瑠璃集なども開くし、そこにある言葉も素晴らしいのだが、素人のわたしが注釈と補註と古典の文章を行ったり来たりして読むのは骨が折れる。分からない言葉があっても、ざっくり分かればなんとか…と思っているうちにウトウトしてくる。

そういうとき、この本は救世主に思える。最初の《松風》の、「あのー、ちょっとすみませーん」て風合いの訳に仰天したのだが、これが実は一気にその世界に興味を持たせてくれる。

池澤夏樹 個人編集の日本文学全集シリーズは『平家物語』などもあり、『源氏物語』は角田光代が訳をしている。わたしは『源氏物語』が苦手なのだが、角田光代の、主語を丁寧に補いながら優しく風情のある訳で、ようやく読むことができた。