前作を知らずに見ると楽しさ半減?_映画『あのコはだぁれ?』【映画感想】
*ネタバレを含みます
2023年に公開された『ミンナのウタ』。その続編『あのコはだぁれ?』を観てきた。
前作は、令和の音楽業界に、ド昭和なテープの呪い(野望?)が解き放たれ、死んだ中学生「さな」がキラキラ男子をかたっぱしから連れ去っていくホラー。
令和のキラキラを担うのがGENERATIONSで、ド昭和を担うのが探偵役のマキタスポーツ、当時の担任の先生、「さな」の両親だった。
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『ミンナのウタ』から続投となる、昭和メンバーの比重が大きくなっている。
それもあって、この映画は、続編系によくある(求められる?)「前作を見ていなくても楽しめる」よりも、「前作を見てないと半分ぐらいしか楽しめない」感が強い。
今回『あのコはだぁれ?』の舞台は、「さな」の母校(中学校)。
「学校」で「30年前と同じ悲劇」が起きて、そのとき「補修のため教室に集まっていた生徒」や、先生が次々と高谷さなの世界に連れ去られていく。
処分されたはずのテープやレコーダーが残っていたという展開も含めて、外枠は古風なホラー。しかし、「高谷さな」の霊は今回も、恨みつらみを訴えてその解消と慰めを求める幽霊とは違う。
彼女の動機は、素晴らしいウタを作るという夢と希望の達成であり、そのために、ミンナの「音」(断末魔)を集めているからだ。
霊が生前からモンスターだったらどうする? という状態。よって今回も、「さな」の心に寄り添うという解決法が通用しない。
そうかといって、理解不可能の絶叫ホラーでもない。
「さな」に友情めいたものを感じる「瞳」(早瀬憩)だけでなく、瞳の母親、さなの両親など人物が丁寧に描かれていて、それぞれが抱える30年間の呪縛がドラマを支えている。
特に、山川真里果が演じる、「さな」の母親の存在感が前作を上回って凄まじい。
前回は、高谷家で訪問者の前に現れる幻影の、針の飛ぶレコードみたいな芝居に背筋が寒くなった。
今回はそこに加え、全体を通じて、母親(あるいはその役を引き受ける人)が背負わされている重圧、そこに潜む多様な感情と狂気が表される。
この存在が、物語の悲しみ部分を引き受けつつ、ホラー度も押し上げている。
もっとも、母親像を強烈に描くためなのか、探偵の権田と「さな」の父という、父親組に関しては、現実逃避と言い訳ばかりの残念な描かれ方で、いくらか気の毒ではある。
途中、ゲームセンターの場面は強引というか浮いているように感じたものの、ラストは意外性もあってとても良かった。
さなの弟の名前が「としお」くんだったり、君島先生(渋谷凪咲)が高谷家で勧められて口にする菓子の断面が、あんこの「渦巻き」だったりと、『呪怨』を漂わせてくるのも面白い。
2度3度と見ることで、気がつくものがありそうなので、機会があればまた観たい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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