ケインとアベル

シアターオーブにて、ミュージカル「ケインとアベル」を観劇。

ネタバレありです。

同じ日に生まれたケインとアベルという二人の男の生涯の話。
銀行の頭取の息子として恵まれた環境で育つも、はやくに父をタイタニック号の事故で亡くし、大学を出てから母も亡くなり、ひとりになったケイン。
孤児として育ち、祖国の男爵の養子になり、戦争で祖国を追われてアメリカに逃げ延びたアベル。
出会ってしまった二人の男の、掛け違えたボタンの話。

アベルの持つ金持ち(ケイン)への偏見と、恩人(リロイ)が自殺するに至った株価暴落と、それを助けなかった銀行への恨みが、憎悪としてケインに向けられる。
ケインは確かに恵まれた環境に生まれたけど、育ちが恵まれていたかといえばそうでは無い。
相次いで両親を亡くし、唯一の親友を亡くし、父の教えを守りたいと思って差し伸べた手を、アベルに噛まれて、全てを無くしたケイン。

彼の気持ちを改めて知ったアベルの後悔と、彼に残された家族。
なんだかケインが報われなかった。
あのラストなら、むしろめちゃくちゃ後味を悪くしてもらったほうが納得いったかもしれない。
わたしはどうしてもこうへいくんのファンだから、こうへいくんが報われなかったあの気持ちがどうにもモヤモヤしてしまった。

結局、上流階級のボンボンがよ!っていう、アベルの根底にある偏見と差別の話なのか。
ちょっとジョジョとディオみを感じたわけだが、
まあケインのほうがジョジョほど慈悲深いイイ奴ではないんだけど、ケインは生まれながらのお坊ちゃまで、でもお父さんの意志を継ぎたいという信念のようなものは持っている。慈悲と己の中にある確固たる信念の元に行動したら、結局巡り巡って仕事も無くす。
息子も結局手元から離れてしまう。

それに比べるとアベルの、底辺から成り上がっていく過程がなかなか面白いと思った。
頭が良く見目も良いアベルは、ホテルのウエイターからどんどんと成り上がっていく。
自分を引き上げてくれたリロイに感じた親愛と、それを助けてくれなかった銀行への恨み、生まれ持っての金持ちへの恨みつらみが一気に爆発するイメージ。

金持ち喧嘩せずの、精神ではあるが、結局ケインも同じ穴の狢になってしまい、さらに両者の確執は深くなるばかりで、あの選択がひとつ違えば…掛け違えたたったひとつのボタンが齎す慈悲のなさが切ない話であった。

ケインが哀れでならない、なぜ彼の死後に全てがつまびらかにされたのだろうか。

個人的には、子どもたちをも巻き込んだドロドロの復讐劇のような形になった方が良かったかな、とも思えた。
最後にお互いドロドロに殺しあって、ケインが死んだ後に真実を知ったアベルが後悔し、彼も全てをなくして孤独に死ぬ。そういうラストのほうが良かったのではないかな~と思ったわたしは心が歪んでいるのだろうか。
あまりにもケインが報われない。

いいなと思ったら応援しよう!