日本が陥る大国病とは「13歳からの地政学」要約・所感
おはようございます。本日は田中孝幸さん著書の「13歳からの地政学」を取り上げたいと思います。
これまでにも地政学に関する書籍は取り上げました。本書の特徴はタイトルにもあるように中学生でも分かる語り口である事、ストーリー仕立てである事から非常に分かりやすくサクサクと知識が入ってきます。
高校生と中学生の兄妹が街のアンティークショップで見かけた古い地球儀に一目惚れするところから話が始まります。店主である博識のおじいさんとの関わりから二人の成長を見届ける中で多くのことを一緒に学ぶことができます。
本書から新たに学んだことを、以下にまとめておきたいと思います。
1.地図を立体的に捉えることで見えてくるもの
排他的経済水域とは沿岸国が、その範囲内において、資源の探査・開発などを含めた経済的活動の権利を持ついわばその国の縄張りです。
日本は陸地面積は約38万㎢ですが、排他的経済水域を合わせた面積は約447万㎢に及び、これは世界で6番目の広さとなります。
さらに地図を立体的に捉えると地政学にも深みが出ます。排他的水域内にある海の深さが深ければその自分の縄張りも大きいことになります。
実は日本列島の周りは太平洋側も日本海側も深海で囲まれています。縄張り内の海水の体積でいうと世界で4位、6000m以上の深海だけでみると世界で最も大きい海水体積を持つとも言われています。
沿岸の海に深海を持っているというのはどついう意味があるのでしょうか。実は核兵器を保有する国にとっては軍事的にその価値は非常に高いものになります。
核兵器はミサイルで敵地を攻撃するわけですが、現代軍事では発射装置は海中に置くことが定石になっています。なぜなら地上に発射基地を置いていては相手からも警戒され易いですし、戦時は真っ先に狙われてしまうからです。
核兵器を最強アイテムにする3つの条件があります。1つ目は長い間潜って動き続けられる原子力潜水艦があること、2つ目が海の中からミサイルを発射できる能力、そして最後3つ目が潜水艦を潜らせておく深い海があることなのです。現在この条件で最強の核兵器をもっているのが、アメリカとロシアになります。
現在、アメリカに変わって世界の覇権を握ろうとしている中国は1つ目と2つ目の条件は揃っていると言われています。唯一もっていないのが深い海なのです。
中国が世界中から避難をされようが、力尽くでも南シナ海を自分のものにしようとする背景にはこのような背景があるのです。
2.日本が陥る大国病
日本が他国から一度も侵略をされたことがない稀な国であるということは、以前のnoteでもとりあげました。その要因は島国であるという地政学以外にも様々な要因が言われています。
そして、戦後はアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国に成長します。現在は中国に抜かれてはいるものの一国で人口1億人を超える大国であるのには変わりありません。
日本は世界的にみれば英語が話せる人が少ない国になります。先進国で教育水準も高いにも関わらずなぜそうなってしまったのでしょうか。それは話す必要がなかったからに他なりません。
日本は大国であるがゆえに国内だけで十分のマーケットがありました。ある会社で何か商品を作るにしても日本にいるたくさんの人向けで商売が成り立つことが多いのです。苦労し外国語を覚えてまでして、海外へ商売をする必要がこれまではなかったのです。
お隣の国である韓国に話を移しましょう。
大国に挟まれた半島という、地政学にも恵まれない位置にあります。そのため朝鮮半島は19世紀から20世紀前半にかけて日本とロシアや中国との勢力争いの舞台となり、何度も外国の軍隊の戦場となりました。またその以前も中国の王朝に支配されたり中国の臣下のような扱いをされていました。
戦後もアメリカとロシアの関与を受けて南北に分断され、現代でも統一は実現していません。
韓国では英語を話せる人の割合が日本よりも高いといいます。その理由は大国ではないからでしょう。近年経済発展はしてきているものの人口も日本の半分で、国内市場は決して大きくはありません。国の経済の80%以上を対外貿易に依存しているので、英語圏を中心とした海外企業とのセールス交渉がより必要になってきます。
つまり最初から世界を目指してものを作っているのです。近年、韓国の映画や音楽といったエンターテイメントが世界的に認められ活躍をみせています。その背景には歴史的にも地政学的にも厳しい条件の中で必死で生き延びようとやってきたからに他なりません。
3.豊かになれないアフリカ大陸の構造
かつてはヨーロッパの列強たちの支配下にあったアフリカ大陸ですが、第二次世界大戦後に次々に独立。いまや多くの国が独立から半世紀以上の時間が経っています。
アフリカ大陸はもともと天然資源豊かにある地域です。潜在力でいえばもっと経済発展する国が出てきても不思議ではありません。しかし、現代においてそれが実現できていない背景には何があるのでしょう。
ヨーロッパが支配していた時代、彼らは現地の人々がどこにまとまって住んでいたかとかそういう情報にはほとんど関心を持たずに自分たちの都合だけで縄張りを決めていました。独立後もその上下左右に引かれた線が国境線として残りました。
いろいろな民族や部族をまとまりもなく国民として抱えることとなった国では何が起こるでしょう。政治の求心力はなく国の一体感は生まれません。むしろ民族ごとにバラバラになろうとする遠心力が働き争いが耐えません。共通の歴史や絆を持たない民族たちを同じ国民として手っ取り早くまとめるには力ずくしかありません。アフリカに軍事政権や独裁政権が多いのはこのような事情があるからです。
国が経済発展して豊かになるためには、ものを作ったり天然資源を外国に売って得たお金を自分国の将来ために使う必要があります。
しかし、先のような民族問題を抱えるアフリカの多くの国のリーダーたちはお金を広く国民のために使わず、自分の民族の身内だけを優先するようになります。それだけでなくお金をヨーロッパやアメリカの有力者に流しているのです。こんな状況ではいくら天然資源があっても国は決して豊かになりません。
本書では地政学から経済を考えるという知見が多く得られます。大国病を患った日本は経済停滞という病から立ち直ることはできるのでしょうか。
これまでの生物の進化がそうであるように、また戦後の日本がそうであったように生存を脅かされるような窮地にさらされなければ、変われないのかもしれない。そんな感想を抱きました。
より詳しく知りたいと思った方は、是非手にとって読んでみてください。
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