女学生の手記〜ようこそ青上町へ〜【hololiveERROR 二次創作小説】

注意書き

この小説には戦後描写がガッツリ書かれています。「そういうタイプの可哀想は可愛くないよ…」って方はブラウザバックをお願いします。
なんもかんも本編が終戦の翌年なのが悪い。

本編


昭和20年8月15日、11時50分。
私、美空時乃(12)は、家の居間で家族と過ごしていました。ただ、そこに和やかな空気はありません。お父さんも、お母さんも、もちろん私も、とても緊張しています。
それもそのはず。昨日からどの新聞もどのラジオ局も「15日の正午に重大発表があるので、全国民聴くように」と言っていて、これがただ事ではない事位は幼い私にもわかります。しかもこれを天皇様自ら発表されると言っている局もありました。
もちろんにわかには信じられなかったけど、私は「きっとそれだけ大事なことなんだ。」と思うことにしました。
ちゃぶ台の真ん中には1つのラジオ。あまりにも凄い緊張感で、この時間が早く終わって欲しいと思う事しかできませんでした。

「ただいまより、重大な放送があります。全国の聴取者の皆様、ご起立ください。」

ラジオからそう聞こえると、私たちは正座を崩して立ち上がりました。そして、本当に天皇様が発表することを告げられると、君が代が流れ……先程までとは全く違う声が聞こえてきました。
もちろん、この国の人間は誰一人として天皇の声なんて知りません。でも、きっとこれを聞いている全ての国民が、この声の主が天皇である事を疑っていないでしょう。そう思わせる声でした。

ただ雑音が酷くて喋ってる事も難しく、私は聞き取ることができませんでした。でも、隣に立っているお父さんが「そうか……」と言って涙を流している姿はとてもとても印象的でした。
放送が終わった後、私はお父さんに「なんて言ってたの?」と訊ねました。お父さんは「戦争は終わったよって。今まで頑張ってくれて本当にありがとう、でもこれからもっと大変になるけどみんなで頑張ろうって。そう言ってたんだよ。」と、そう教えてくれました。

そうしてこの日、私達の「生きるための戦い」が始まったのです。

昭和20年9月3日。
私たちは我が家を追い出されました。連合国軍のせいです。アイツらは「日本人なんて死んでも構わない」と思っています。
連合軍は、辛うじて空襲を免れた我が家を奪いました。軍の施設にするらしいですが、私たちに代わりの住む場所が与えられる事はありませんでした。持てるだけの食糧とわずかな生活品を持ち出して、私たちは焼け野原になった東京に放り出されました。
もう周りは仮住まいで一杯で私たちが入れる場所は無くて、瓦礫まみれの東京をひたすら彷徨って住める場所を探すしかなかったです。持ってきた食糧は少ないので、食べることを我慢しなきゃいけない時も沢山ありました。こんなにお腹がすいているのに、何とか歩けている自分に驚きました。

夜は星空の下で地べたに寝転びました。街灯が無くなった東京で見た星空は悲しくなるほど綺麗でした。「星ってこんなに綺麗だったのね。たまには夜空を見上げるのも悪くないわね」とお母さんが言いました。お母さんだってお腹がすいて辛いのは同じでしょう。でも、力を振り絞って私たちを励ましてくれたんだと思います。お父さんは、ただ静かに泣いていました。
それから何日も東京を彷徨い続けて、私たちは3人分住める場所を見つけました。そして周りの瓦礫をかき集めで屋根を作りました。
その日の夜、追い出されてから初めて雨が降りました。私たちの屋根は凄く雨漏りをしていて雨粒が冷たかったけど、この屋根が無かったら冷たいで済んでなかった。きっと道端で凍え死んでいたと思います。
「本当に間に合って良かった」
私たちはそう話し、生きてることを喜びあいました。

昭和20年9月10日。
今日のご飯もお茶碗の3分の1ぐらいしかありませんでした。お昼ご飯を我慢してるのにこれだけしかありません。もうずっとずっとお腹が空いています。

「金ならいくらでもあるはずだ!なんでこれしか手に入らないんだ!!」
「それがもう東京のどこにも何も売ってないの!!米も小麦粉も肉も野菜も!!!このお米だって汽車で何時間も揺られて農家さんに押し掛けて何とか譲ってもらったんだから!!」

お父さんもお母さんもお腹が空いているせいで毎日喧嘩しています。私はもう中に入って喧嘩を止める力すら残っていません。
ああ、今日はすごく寒いな…
そっか。もう秋だもんね。
秋になったら、お腹いっぱい食べれるかな…

昭和20年9月26日
今日はご馳走です!!ご飯がお茶碗山盛りだから!!
お父さんもお母さんも、1口1口噛み締めながらゆっくりじっくり食べるので、口いっぱいにほうばりたい気持ちを抑えて私もゆっくり食べます。
お腹がいっぱいなのってこんなに幸せだったんだ…!でも、今までずっとそれが当たり前だったのに、こんなになってしまった事が悲しくなってきます…
気付いたら、私は涙を流していました。
いや、私だけじゃなくて、お父さんもお母さんも涙を流していました。
今は悲しいけど、久しぶりに今日はお腹いっぱいで寝れるから、眠ったら楽しい夢を見れるんじゃないかな。今日くらいはいい夢を見させてほしいな…

昭和20年10月15日
…寒い。凍え死んでしまいそうです。
結局お腹いっぱいになったのはあの日だけで、それから毎日お腹の半分にもならないくらいしか食べられてません。
だけど気温は日に日に低くなるばかり。
お父さんに「いつになったら家に戻れるの?」って聞いても、「多分戻って来ないだろうな。」って返されます。
お母さんに「焚き火は出来ないの?」って聞いても、「東京の木は空襲で全部燃やされちゃったもの。田舎に行っても落ち葉すら売ってくれなかったわ。」って帰ってきました。
屋根の隙間から冷たい風がずっと通ってきます。吹きさらしでも、なんとか毛布だけで頑張って夜を乗り切らなきゃいけません。
今夜こそ朝起きてたら死んじゃったりしてるのかな……寒いよぉ……

昭和20年10月30日
今日、隣の家の人が死んでいました。触ってみると冷たくて、きっとあの寒い寒い夜を耐えられなかったんだと思います。
私はなんとか生きています。でもいつかこうなってしまうのかと思うと、とってもとっても怖いです。
ご飯を食べる時に「私もこうなっちゃうのかな」って言ったら、お父さんとお母さんは「絶対にそうさせない。時乃は、この人たちの分まで全力で生きなきゃいけないんだよ。私たちが時乃を絶対に守るから、生きることを諦めないで。」と言ってくれました。
今お父さんが私たちが住める場所を必死に探してくれているみたいです。お母さんも食べ物とか他の人が要らなくなった毛布とかコートとかを必死に集めてくれてます。

でも私は本当に生きれるのかな… 毎日お腹すいてて辛いし、死んじゃった方が楽になれるよね…
…いや、でも、きっと隣の人だけじゃなくて、色んな人が生きたいのに生き残れなくて死んじゃったんだ。きっと食べるものも寒さを凌ぐものも買えなくて死んじゃった人達が沢山居るんだ。
…生きなくちゃ。その人たちの分まで、私は生きなくちゃいけないんだ!!
お願い神様…私を…私達を生かして下さい!!!

昭和20年12月1日
私は汽車に揺られています。
汽車の中は外の何倍もあったかくて、どれだけお腹がすいてても大丈夫な気がしてます。
私たちは住める場所を見つけることができました。私たちが引っ越す先は、東京から遠く離れた『青上町』という所です。
お父さんが昔仕事で知り合った古河さんという方にお父さんが必死に頼み込んで、なんと家を建ててくれる事になったみたいです!!
本当は家が建つまで東京に居るはずだったんだけど、お父さんが「きっとそれを待っていたら私たちは死んでしまう。隙間風さえなければいい。小さな小屋を作って貰えないか。」と土下座して頼んで、なんとそれも許してくれたんです!!
しかも新しい家だけじゃなくて畑もくれるみたいです!!「来年の今頃は芋でお腹いっぱいかもな」と言っていたお父さんは、今までで一番かっこよくて、私を死なせないように頑張ってくれた事が本当に本当に嬉しくて……
あとは、東京は学校も全部燃やされちゃって無かったけど、向こうは今も普通に授業を受けれるみたい!本当は4月から高等女学校の1年生なんだけど、今まで学校も無かったから…でも!来週から転校生として青上にある高等女学校に通える事になったみたいです!
小学校の時は内気なせいで全然友達できなかったけど…青上町ではいっぱい友達作るんだ!
きっと今まで辛い事が沢山あった分、青上町では楽しい事がいっぱい待ってるよね!辛い事があっても、きっと神様が助けてくれるはず!
楽しみだな〜青上町!楽しみすぎて全然眠れないや!

…私、本当に生きてて良かったな。本当に本当に辛い事ばっかりだったけど、きっと神様は見ててくれてたんだね。私たちの頑張って生きてる姿を、ずっと見ててくれた。それで、「時乃ちゃんはどんな事があっても生きてていいんだよ。」って許してくれたんだ。
じゃあ私は神様に恩返ししなくちゃ。私を助けてくれたから、全力で生きる事でそれをお返ししよう!

どんな町なのかな。でもあの瓦礫しかない街よりはきっと素敵な場所だと思う!
東京ではお父さんやお母さんが頑張ってくれたから、青上町に行ったら私もいっぱい頑張らなくちゃ!

…窓から朝焼けの眩しい橙色の光が入り込んでくる。新しい1日が始まったんだ。そして今日から、新しい日々が始まるんだ!!頑張るぞ!!

周りの人達が皆寝ている中で、私は1人で拳を上に突き上げて、頑張るぞっ!!ってやったのでした。


あとがき

どうも、お久しぶりの『地歴公民オタクのhololiveERROR考察シリーズ』更新です。
実はこの小説はまだERROR熱が残ってた頃に途中まで書いてたのですが、辛くなって投げ捨てたモノだったりします。
じゃあなんで復活したのかというと、最近はpixivの方で執筆活動を熱心にやってるのですが、そっちでのフォロワーさんがERRORの小説を書きはじめまして… それを読んだらGoogleドキュメントの奥底からコレを引っ張ってくる気になれたので、気が変わらないうちにとりあえず書ききることができました。ただかなり粗は目立つのでしれっと所々変わってるかもです。悪しからず。

最後に書いた感想ですが、汽車の中のシーンは書いててめっっちゃ胸を締め付けられました!!!
可哀想なことして本当にごめんね!!!でも多分昭和20年代に田舎の町に引っ越してくる理由とか絶対これしか無いんよ!!!文句はカバーのシナリオライターに言ってもろて!!!

唯一の救いはそらちゃん自身が「お化け役やってみたかった」って言ってたことか…マジで『ホロライブの始祖』に相応しい、こんな重すぎて救いの無いバックストーリーをよく思い付くなぁ…
しかもそれをあえて本編では言わず『昭和21年』という単語だけで伝えてきた訳なんで、本当に脱帽モンですよ。でもちょっと救いが無さすぎるんじゃないかなシナリオライターさん????😭😭
この続きを書くとすればERRORが存在しない世界の話になると思いますが…まぁいつになるかは本当にわからないので気長にお待ち下さい。
それでは。、

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