ムッ…

　どこか遠くの場所へ行きたいと思うことが、増えた。旅するのが好きとか言えば聞こえは良いが、本当は何もかもが億劫で、何も出来ない自分に腹立たしくなってしまうので、それらを知ってしまう前に逃げ出してしまいたいのだと思う。

　夜中に思い立って小一時間かけ海辺へバイクを走らせたこともある。街灯の一つもない湿化た砂浜はなんとも物寂しい気持ちになった。
コンビニで買った安いライターであかりを灯してみても、夜は寂しいままだった。

足元さえ見えないほどなのに、海では波が白く光っている。波と星、どちらが明るいのか、私にはわからなかった。

ざあ、と白波が押し掛けてきては、くらい海中に一滴残らず引きずられていくのを後ろに聴きながら、どうしてか無性に人に会いたくなった。あんなに1人になりたかったのに、いざそうなるととてもこの寂しさには耐えられない、参ってしまう。

海ばかり見てると人に会いたくなるし、人ばかり見てると海を見たくなる。不思議なものだ。