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【損保オヤジの独りごと】企業における地震リスクと地震保険

日本における地震の発生状況

「最近、地震多いね」

日常の生活の中で、一定のタイミングでこのような会話がなされるような気がします。
そうです、日本は地震大国だからです。

ご存じのとおり、日本列島は4つの岩盤の上に位置しています。
「ユーラシアプレート」「北アメリカプレート」「太平洋プレート」「フィリピン海プレート」の4つです。

陸は海底に引き込まれる傾向にあるため、少しずつ動いていったプレートが限界を超えて元の位置に戻ろうとする際に、跳ね返りを起こすことで、大地震が発生します。
そのうち、よく耳にする南海トラフとは「ユーラシアプレート」と「フィリピン海プレート」とが接する海底の溝状の地形を形成する区域のことをいい、それらの岩盤の境目で発生するものが「南海トラフ地震」となります。

皆さまが「地震が多い」と感じるのは、テレビで地震速報をみる、緊急地震速報を耳にするなどのタイミングだと思いますが、体感しない程度の小さな揺れの地震はもっともっと発生しています。

みていただければ分かるように毎日のように発生していますね。

しかしながら、実際に私たちに被害を及ぼす可能性があるのは大地震です。
気象庁では、人的、物的に被害をおよぼした地震を「被害地震」として公表しており、
被害規模の大小はありますが、大地震もそれなりに頻発していることが分かります。

地震による被害を極小化するためには

地震による被害を「最小限にするためには」、「極小化するためには」、を考える前に、リスクマネジメントの概念をお伝えします。

リスクマネジメントは4つの原則から成り立ちます。
・リスクの回避
・リスクの低減
・リスクの移転
・リスクの保有
 の4つです。

地震も日常生活を送る上でのリスクの一つですので、それぞれ何ができるかを考える必要があります。

リスクの回避
リスクの回避は、リスクをなくすことに近いので、(あるかどうかは分かりませんが)地震が全く発生しない国・地域に住むということでしょうか。
とはいえ、日常生活に必要なことは「地震リスクの回避」だけではありませんので、多くの方にとっては非現実的ではないでしょうか。

リスクの低減
いわゆる減災ですね。
地震が発生することを前提として、発生後の被害を極小化する対応です。
置いている家具に揺れ止めストッパーを設置する、耐震補強を行う、防災グッズを備えておくなどがそれにあたります。

リスクの移転
リスクの移転は、リスクを保険などに転嫁することです。
金銭的な被害などは保険へのリスク転嫁により、一定カバーすることが可能になります。地震リスクの場合ですと、「地震保険」への加入がそれにあたります。

リスクの保有
文字どおり、特段の対処をせずにリスクを受け入れることです。
個人の場合ですと、金銭的負担も大きいためなかなか難しいのかもしれませんが、
資産の余裕があるなどといった場合に取られる対応になります。

話を戻して「地震による被害を極小化するためには」ですが、
上記リスクマネジメントの考えを活用し、さまざまな組み合わせで実施することが重要です。
対応の多くは、「リスクの低減」と「リスクの移転」です。
すなわち、防災・減災の対応をしながら、しっかりと地震保険に加入することが最もポピュラーかつ必要な対応と考えられます。

地震保険とは

地震保険は「地震保険に関する法律」に基づき、政府と民間の損害保険会社が共同で運営しています。

国民の財産を守るため、国として普及を推進している制度になります。
地震保険は住宅を対象としており、建物と家財を対象として加入することができます。
ただし、地震保険単体での加入はできず、必ず火災保険の特約として加入する必要があります。

実際の普及度合いはどうかというと、2021年度の火災保険への付帯率は全国平均で69.0%となっており、最も高いのは宮城県で88.7%です。
世帯加入率は全国平均で34.6%最も高いのはこちらも宮城県で52.7%です。

データをみていただくと分かるように、震災を経験された地域の加入率は高い傾向にあり、地震保険制度の認知度の高さ、また地場の保険代理店の皆さまの普及活動(使命感)によるものと考えられます。
一方で、世帯加入率は、右肩上がりで年々高まっているものの、まだまだ十分とはいえません。

企業における地震保険とは

個人の財産を守るために地震保険が存在するのと同様に、企業にとっても地震リスクに備えるための保険が存在します。

こちらも企業分野の火災保険に「地震危険補償特約」としてセットして加入することが可能です。
一方で、個人の地震保険と異なり、政府の後ろ盾があるものではありません。
民間の保険会社が地震リスクを丸抱えする形(※)になるため、加入の条件(引受可能な保険金額、支払限度額、保険料)は、個人向けより厳しくなります。
(※)基本的には引受保険会社はリスクの一部または全部を再保険という形で、さらに保険を掛け、制度の安定化を図っています。

「企業分野の地震保険は高い」

そんな声も多く聞かれるように、巨額の集積リスクを保険会社が抱えるため、保険料が「高い」と感じられる方が多いようです。
実際に、加入している企業は、企業全体の1割程度といわれています。

企業にとって地震保険は必要なのか

企業における地震保険への加入の必要性を考える前に、自社が事業を行ううえでどのようなリスクがあるのか、どのリスクが脅威なのか、そのリスクに対処する方法は何なのか、といった事業継続計画(BCP)を立て、しっかりと整理することが重要です。
地震リスクは目につきやすいリスクではありますが、経営リスクの一つの観点に過ぎないのも事実です。

<検討の流れ>
STEP1 事業継続計画(BCP)の検討・策定
STEP2   地震リスクが与える自社への影響を確認/PMLの把握
STEP3 企業分野地震保険への加入検討

STEP1 事業継続計画(BCP)の検討・策定
ご存じのとおり、BCPとは自社が自然災害や有事の際に、中核事業を継続または早期復旧するための計画のことですが、計画策定をする中での検討プロセスでリスクの洗い出しを行います。
検討過程において、自社に与える地震による被害想定がいかなるものか、を考える機会になります。

また、BCP策定の前段として、防災・減災を主な目的とする「事業継続力強化計画」の策定も有効です。
※当社も認定を取得しています。

STEP2   地震リスクが与える自社への影響を確認/PMLの把握
地震リスクへの対策の重要性を認識された後は、被害想定の検討をさらに深める必要があります。
全国各地に拠点・工場がある企業であれば、1回の地震ですべての拠点に被害が生じることはないかもしれません。
または、同一地域に多くの拠点を有している企業であれば、1回の地震が与える影響は甚大かもしれません。

そういった観点や、そもそもの建物構造、立地などを総合的にリスク評価する仕組みが、民間の保険会社の関連会社で多く提供されています。
以下は一例です。

PMLとは「Probable Maximum Loss」の略で、「予想最大損害額」ともいいます。
一定期間内における地震による最大の被害想定のことですので、リスク量を数値化することで、経営に与えるリスクを把握することが可能です。

STEP3 企業分野地震保険への加入検討
STEP1,2を踏まえて、一つの解決策として企業分野地震保険に興味が湧いてきたら、加入を検討しましょう。

STEP3までたどり着いたならば、地震保険が必要な企業といえます。

企業向けの地震保険に加入する際のポイント

企業分野の地震保険に加入する際にポイントはいくつかあります。

■原則として火災保険の特約として加入する
 一部例外的に単独で加入可能な場合もあります。

■適正にリスクを把握して工夫することで合理的に加入する
 ・対象とする建物・設備什器・商品の特定(BCPの考え方!真に必要な財産は?)
 ・支払限度額の設定(PMLの考え方!)
 ・高額免責の設定(リスクマネジメントの考え方!どこまで保有してどこから移転するか)
 
企業分野の地震保険で重要なことは、画一的な保険設計はないということです。
企業固有のリスク状況に応じて設計することで合理的な契約内容・保険料での加入が可能となります。

損保オヤジの独りごと

最後に、

「企業分野の地震保険は高い」

という声が多いとお伝えしましたが、本当に「高い」のでしょうか。
「高い」ということは何かと比較をしているのだと思います。
おそらく比較対象は、主契約となっている火災保険の保険料です。

多くの方は

「火災保険の保険料と比較して、企業分野の地震保険は高い」

といっていると想像できますが、火災保険と比較することが正しいとは思いません

地震保険は「火災保険の特約」という位置づけで存在をしていますが、火災保険で抱えるリスクと、地震保険で抱えるリスクは大きく異なります
リスクが大きく異なるので、当然ですが保険料も大きく異なります。

例えば、自動車を買おうとするときに、自転車の価格と比較しているようなものだと筆者は考えます。
用途は似ていますが、全く異なるものという考えが一般的で、普通比較対象にはなりませんよね。

企業分野の地震保険を考えるうえで重要なことは、保険料ありきではなく、自社の経営環境と照らし合わせたうえで、どういったリスクマネジメント手法で対処するか、です。
企業内で導き出した最良の結論が、地震保険での対処なのであれば、加入の検討を開始してみてください。

※こちらも参照

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