
プロダクトマネージャーになるには?LIFULLのオンボーディングの取り組みを紹介
1. はじめに
この記事は、これからプロダクトマネージャーやWEB企画職にチャレンジしたい人向けです。
約3ヶ月でプロダクトマネージャーとして1人立ちするLIFULLで、どのようなオンボーディングを行っているのかをご紹介します。
こんにちは。LIFULLの三枝です。
不動産・住宅サイト「LIFULL HOME'S」の新築マンション部門のプロダクト責任者・プロダクトマネージャー、およびLIFULLサービス企画職の職種マネージャーを務めています。
また、2024年に発足した「オンボーディングギルド」の責任者(ギルドマスター、通称ギルマス)としても活動しています。
LIFULLにおけるギルドとは、職種の環境をより良くしようという志を持った人々の集まりです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「オンボーディング」とは、新しい仲間が組織に順応し、活躍を促進する取り組みを指します。私は「オンボーディング」という言葉を初めて聞いた時に、「波に乗ってる!」というご機嫌な意味だと思っていました。
ちゃんと調べると、船や飛行機に乗るという意味の「on board」が語源だそうです。
正しい意味を理解しつつも、「新しい仲間がいち早く波に乗ることを支援するギルド」をミッションとしています。ギルドによるオンボーディング対象者は、新卒入社・中途入社・ジョブチェンジ(職種変更)です。
今回は、「新卒のオンボーディング」についてご紹介します。

2.新卒オンボーディング 2024年度実施一覧
2024年の4月~6月の実施実績は以下の通りです。
企画職の定義・基礎を学ぶ
サービス企画概論:サービス企画職の定義や目指していること
課題定義・企画提案手法:課題定義と企画提案の手法。企画の型の基礎
プロダクトマネジメント:プロダクトマネジメントの概念(基礎編)
プロジェクトマネジメント:プロジェクトを成功に導くためのプロジェクトマネジメント方法
不動産業界の知識、WEBの知識を学ぶ
動画研修/業界・事業研修:業界理解やサービス理解を深める
WEB基礎知識の習得:WEBの基礎知識を習得する
SEO:検索エンジン最適化の基礎知識を学ぶ
アクセス解析・データ
データ活用概論:データの重要性と活用の考え方を学ぶ
Amplitude使い方入門:データ分析ツールの使い方を学ぶ
EDD(Experiment Design Doc):A/Bテストの設計を学ぶ
定性データ活用:UXリサーチおよび活用方法を学ぶ
実際の業務フロー、ドキュメントの書き方を学ぶ
業務フロー:企画立案から、プロダクトが世にでるまでの流れを知る
要件定義・仕様書作成:プロダクト開発の要件定義・仕様書の作成方法を学ぶ
多くの講座が動画としてアーカイブされているので、誰でもさまざまなタイミングで講座を受講することが可能です。新卒以外でも、中途入社の社員や、職種変更をした人が動画を見て学ぶことが可能です。
上記のうち、代表的な講座を4つ紹介します。
①「サービス企画概論」
LIFULLのサービス開発は「プロダクトマネジメント制」を採用しており、サービス企画・デザイナー・エンジニアの3職種が一体となって行います。
各職種にはそれぞれ役割があります。簡単に言うと、サービス企画は「何をするか」、デザイナーは「どう伝えるか」、エンジニアは「どう作るか」に責任を持ちます。3職種で協力しながらアウトカム=価値を生み出します。
プロダクト開発の起点である「何をするか」を決める重要な役割を担うサービス企画の概論は、配属初日に開催されます。
講義は、CPO(Chief Product Officer)兼職種長の大久保慎さんによって行われます。
主な内容は以下の通りです(2024年実績)
サービス企画職とは?
成果を出すための公式
課題定義の方程式
LIFULLにおけるサービス企画のあり方
サービス企画として成長するためのTips
この講座は毎年、環境の変化に合わせてアップデートされるため、新卒だけでなく、2年目以降の社員や中堅社員にも人気があります。日本における有数のプロダクトマネージャーである職種長と直接対話できる点も魅力です。

②「LIFULL HOME'S斬り」
新しく入社した社員は、一般のユーザーに最も近い視点でサービスを利用し、改善点をプレゼンするというのが最初の実習であり仕事になります。文字通り「LIFULL HOME’Sを斬る」ですね。
実際に実行する新卒にとっては、サービス理解を深めながら、現状把握・課題発見・解決策立案までの追体験ができるものです。
このプレゼンを聞くのは普段サービス開発をしているメンバーです。
誰もがこの取り組みを楽しみにしています。
というのも、どうしても社内で慣れてくると自分の思い込みが増えていくものです。新鮮な視点を取り入れることで、新鮮な気持ちを思い出し、日々のプロダクト開発に活かすことができます。これは何十年も続く伝統で、新卒だけでなく、中途社員も必ず実施しています。


③データ活用およびプロダクトアナリティクスツール「Amplitude」活用講座
データ活用の考え方から、分析のためのツール活用講座を受講することができます。
LIFULLでは、ユーザーがWEBサイトをどのように使っているかを分析するために、Amplitudeというツールを使用してデータドリブンな企画を立てています。
従来のアクセス解析ツールはページビューや訪問者数などの基本的なデータを提供しますが、ユーザーの具体的な行動まではわかりません。
一方、プロダクトアナリティクスツールは、ユーザーがどのボタンをクリックしたか、どの機能を使ったかなどを詳しく知ることができ、行動からユーザーを分類し、同じような行動をする人という分類での課題発見や、ゴールを引き出すための行動(どんなコンテンツを利用するとゴールしやすいか)の解明などができるようになりました。
また、LIFULLは、世界中のAmplitude利用企業4.5万社の中から「Pioneer of The Year賞」を受賞しました。これはプロダクトとデータを活用して革新的な成果を上げたことが評価され、日本から初めて受賞しました。
詳細は以下の記事をご覧ください。
④プロダクトマネジメント講座
LIFULLで導入している「プロダクトマネジメント」の考え方を学ぶことができます。
導入の背景としては以下です。
プロダクトマネジメントは、プロダクトを起点とした戦略の実現を最大限早め、成果を高めることを目的に導入
各々の役割・職種としての専門性に基づいて「4つの価値・リスク」にコミットすることを軸に、役割分担・責任の明確化
顧客の問題を解決することで生み出される成果(アウトカム)を重視し、リリース自体をゴールと捉えること(アウトプット偏重)からの脱却を図る
本講座は、サービス企画概論と重なる部分はありますが、プロダクトマネジメントのより基礎的な知識を学ぶことができます。


3.配属から3ヶ月でプロダクトマネージャーとしてスタート
2024年度の新卒入社の事例をご紹介します。
サービス企画の新卒は、職種共通の2週間の研修(一般的なビジネススキルなど)を経て、4月中旬頃に各部署に配属されます。
配属部門では、担当プロダクトでアウトカム(=成果)を創出するための基礎を先輩から教えてもらいます。
主に業界知識・サービスの知識・チームのプロダクト開発の手順などが最初です。その上で、担当プロダクトの営業同行研修に向かい、実際の顧客の声を聞いてより理解を深めます。これが5月末までのスケジュールです。
同時に、オンボーディングギルドでは「企画の型」を職種長・企画マネージャー・各分野のスペシャリストから徹底的にレクチャーを受ける機会を提供しています。
配属部門と連携しながら、どの順番で実施するか調整し、オンボーディングギルドの座学→部署での実践という流れを作って実施しています。
6月からは、小規模なPJからですが、PjM(プロジェクトマネージャー:そのPJの成功を担う人)を任されます。小規模といえど、自身で考えたものが実際に世に出て、誰かに使われる経験をすることができます。それがプロダクトマネージャーの人生のスタートラインです。

4.まとめ
以上がプロダクトマネージャーに初めてチャレンジする人向けの最初の研修のご紹介でした。
その後のキャリアパスとしては、
組織長として事業推進する
新規サービス・事業を立ち上げる
PjMまたはグロースハッカーとしてスペシャリストになる
など様々です。
近年では、優秀な若手はどんどん抜擢していきたいという会社の方針もあり、若くして組織長になる人や、新規サービスを自ら立案しその責任者として活躍している人が増えています。
また、プログラム・体制を検討するオンボーディングギルドのメンバーは素晴らしい人たちです。メンバーそれぞれが「新卒の上司やメンターとして、もっとよい仕組みにしたい」「(新卒2年目)自分だからこそできることがあるんじゃないかと思った」「自分がつまづいた経験がある。だからもっと良くしたい」という想いをもって、日々改善活動に取り組んでいます。
これを読んだ方がLIFULLに入社してくださった時には、さらに研修やフォロー体制がブラッシュアップされていると思います。
私自身はメンバーが波に乗って活躍している姿を見るのが好きです。
6年前に「5年で三枝さんを超えます」と言ってくれた新卒がいました。
その新卒は2年目で後輩の育成に携わり、持ち前の吸収力と行動力が買われ規模の大きいPJにどんどんアサインされるようになりました。また、新卒2年目として異例なスピードで、LIFULL HOME’Sの全体戦略立案プログラムの新規サービスチームに召集。3年目にその新規サービスの立ち上げを行い、現在は別の新規サービスの企画部門の責任者として活躍しています。うれしい限りです。
超えられちゃいましたか?いいえ、私も現役なので負ける気はありません(笑)。若手が成長するように、先輩も成長し続けますから。ただ、若手は伸びるスピードが本当に速いので、うかうかしていられません。このように若手が成長すると、負けられないと先輩方が奮起し成長。結果、会社全体が成長し、よりよいサービスが生まれていきます。
故に、新しい仲間が「波に乗っている」ことが大切なことであると信じています。
ということで、プロダクトマネージャーにチャレンジしたい方、お待ちしています。
一緒にプロダクトで誰かの笑顔を創っていきましょう!
用語の解説
サービス企画職:LIFULLで主に企画・ディレクションやプロダクトマネジメントを行う職種
ギルド:チームの協力を促進し、共通の目標を達成するための枠組み
オンボーディング:新しい仲間が順応し、業務に早く適応できるように支援するプロセス
プロダクト:製品やサービスのこと
Amplitude:製品やサービスのユーザー行動データを解析するためのデータ分析ツール
SEO:Search Engine Optimization(検索エンジン最適化)。WEBサイトの検索エンジンランキングを上げる手法
EDD(Experiment Design Doc):A/Bテストを計画し、実施するためのフレームワーク。詳しくはこちら