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岡山県西粟倉村に移住した寺尾武蔵さんのLOCAL MATCH STORY 〜移住キャリア相談が転機をもたらした40代からの移住〜

その人らしい多様な移住のカタチをお届けするLOCAL MATCH STORY。

今回ご紹介するのは、2022年7月より岡山県西粟倉村(にしあわくらそん)の地域おこし協力隊に着任した寺尾武蔵(てらお・たけぞう)さんです。

約20年間に渡り、電力会社で主に水力発電所の運用・保守に携わってきた寺尾さん。 人生後半戦をいかに幸せに生きるかの答えとして「移住」という決断があり、“世のため人のため”に働くセカンドキャリアがあったと話します。

これまで積み上げてきたキャリアを一旦手放し、新しい世界に飛び込む決断を後押ししたものとは? 年齢を言い訳にせず、とことん自分の人生と向き合う寺尾さんのマインドセットは、40代からの生き方にヒントを与えてくれるものです。

約20年間勤めた会社を退職。残された人生を楽しむために「自らも楽しく、人の役に立てる仕事」を見つけたかった

沖縄の海でマリンスポーツを楽しむ会社員時代の寺尾さん(写真右)

—今回、LOCAL MATCH主催の移住キャリア相談がきっかけとなり、西粟倉村の地域おこし協力隊に応募されたそうですね。まずは、相談会に参加された理由を教えてください。

寺尾武蔵さん(以下、寺尾):これまで電力会社で20年ほど働いていたのですが、それなりに思い描くところまで到達して、そろそろ次のステップに進みたいと考えているところでした。移住自体は8年くらい前から考えていて、なおかつ将来的に起業も視野に入れていました。海が好きだったこともあり、当初は沖縄あたりの温かいところで綺麗な海を見ながら起業したい……みたいな感じだったんです。そこから移住マッチングサービスや転職サイトを色々と見ていたところ、LOCAL MATCHさんが1対1の個別相談を開催しているのを見つけて、話を聞いてもらおうかなと思ったのが参加のきっかけです。

—相談会に参加されたときには、すでに会社を退職されることが決まっていたそうですが、今後のビジョンはすでにお持ちだったのでしょうか?

寺尾:いえ、特にビジョンはなかったですね。ただ、「僕の能力を使って“世のため人のため”になる仕事がしたい!」という思いはありました。仕事を辞めてからは、しばらくは何にもせずに、ぼんやりと沖縄に移住して「自分にできること」を考えるつもりでいたんです。そんなとき、LOCAL MATCHさんの個別相談会に参加してみたら、西粟倉村の地域おこし協力隊をご紹介いただき、採用に至ったという流れになりますね。

—トントン拍子で次のお仕事が決まったんですね。とはいえ、当初は明確なビジョンがない中で、不安などは感じられなかったのでしょうか?

寺尾:これを言うとおこがましいのですが、基本的には何でもできるかなというのが感覚的にありました。僕は本を読むのが好きで、「人としてどうあるべきか」「人生とは何か」ということを、本を通してよく勉強していました。その中で、この世界は半永久的に続くけど、自分の人生は有限だということが、ものすごく頭の中に残っていたんです。残された人生をどのように過ごしたら幸せになるんだろうと考えたら、やっぱり仕事も自分が楽しめるようなことをしなくちゃいけないと。

さらに色々突き詰めていくと、「仕事は親切、世のため人のためのお役立ちである」という考えにたどり着きました。自分の好きなことで、人のためにもなってお金が稼げたらばっちりだなと。ただ、僕の中にそういうビジョンはまだありませんでした。それで仕事を辞めて、ゆっくり見つけていこうと考えていたところ、思ったより早く転機が訪れました(笑)。

—相談会が分岐点になったようにお見受けします。

寺尾:そうですね。僕のイメージとしては、相談会はコーチングを受けているような感覚でした。色んな質問をしてくださることで、自分が本来どんな強みがあって、何がしたいのかを深く考えさせられました。なかでも一番大きかったのが、自分が過去に積み上げてきた知識と経験がブランドになるのだなと気付かせてくれたことでしたね。今回の西粟倉村でのお仕事は、電力関係の経験者であることからオファーをもらって、うまくマッチングしました。そういう意味でも、僕の中にある強みをあらためて発掘してもらったように感じています。こんなスキルがあるなら活用してみたら、と。なので、僕にとってはかなり有意義な機会となりました。

40代からの移住と仕事。過去のキャリアを活かすと同時に重視したことは?

村の面積の93%を森林が占めている西粟倉村

—電力関係のお仕事をずっとされてきて、その部分の強みに活かそうとは、そもそもお考えではなかったのですか?

寺尾:そうですね。これまで約20年間ひとつの企業で働いてきましたが、会社の方針や組織のあり方について、少しずつ疑問を感じるようになっていました。そんな思いにも後押しされて退職を決意しました。なので、次は転職にせよ起業にせよ、電力関係の仕事はやらないというのはあったんですよね。

—そんな寺尾さんが再び電力関係のお仕事を選んだのは、どういったいきさつからですか?

寺尾:西粟倉村の方からよくお話を聞いてみると、電力は電力だけど、一般的な電力会社とはやっていることが全く違うと分かったんです。今回オファーをいただいた業務は、西粟倉村が運営する小水力発電所やバイオマス発電所の管理という前職と似た業務もありました。それだけでなく、西粟倉村の将来像として、風力発電の新設や太陽光発電の拡充など、新たなエネルギーの創出を計画していました。それら全てを統括して、村内で地産地消のエネルギー循環が可能なモデル地域を目指すべく、発電事業会社を立ち上げたいという面白そうなビジョンにも興味を惹かれましたね。新しいことを始めながら、なおかつ今あるものをゆくゆくは自治体から民間に譲渡する流れが生まれることも見据えると、会社の設立や経営、さらに事業継承など、さまざまなことが勉強になるだろうと。僕の修行には、もってこいかなというふうに思いました。

—この場所でなら、これまでのキャリアの強みを活かしたいという気持ちになったということでしょうか?

寺尾:そうですね。年齢的に何ができるんだと冷静に考えたとき、僕の能力を必要としてくれる人がいれば、それで人の役に立てるわけですしね。「仕事は親切、世のため人のためのお役立ちである」という考えにもつながります。そういった意味では僕という能力を好き放題使ってくれる人がいるなら、その気持ちに応えたいですし、新しいことに挑戦していくようなすごい人たちに使ってもらった方が、僕も成長できるんですよ。僕の能力を活用しつつ、さらに成長させてくれる土壌があったことが大きかったです。

西粟倉村が運営する水力発電所の様子

—西粟倉村という地域に関しては、どういった点で魅力を感じられたのでしょうか?

寺尾:西粟倉村はローカルベンチャーの聖地で、若い人たちが集まって新しいことに挑戦している点にも惹かれました。色んな人と出会って、刺激を受けながら、ビジネスの知識やネタみたいなものも発掘できるかなという考えもあって、西粟倉村への移住を決めました。

移住を成功させるマインドセットとは? 大切なのは、目の前の偶然に飛び込む勇気と「なりたい自分」を思い描く計画性

本から人生を学ぶことが多いと話す寺尾さん。愛読書とともに

—個別相談会に参加したタイミングでは、若者支援といったソーシャルビジネスにもご興味があったそうですね。電力関係はもういいかなと、別のフィールドを検討されていた中で、寺尾さんご自身も今回の決断は予想外だったのでは?

寺尾:そうですね。ただ、これまで色んな本を読んで勉強していく中で、心理学者でスタンフォード大学教授でもあるジョン・D・クランボルツ氏が提唱した「計画的偶発性理論」というものを知ったんです。世の中で成功している人たちに、「なぜ成功したのか?」をインタビューしていった結果、成功したいと思って成功した人よりも、はるかに大きな成功を遂げた人々の大半は『偶然だった』と答えているんです。つまり、常に自分を成長させる努力は必要だけど、一番大事なのは「目の前で起こる偶然の出来事に飛び込め!」という考え方なのだと提唱しているんです。

西粟倉村のお仕事は、経験を活かせるうえ、新しいことにもチャレンジできる。やりたいことが全部つまったこの土地に、とにかく飛び込んでみようと思いましたね。

—寺尾さんはスムーズにお仕事も決まり、ご自身が納得できるカタチでの移住を叶えられた印象です。当時を振り返ってみて、成功要因みたいなものがあれば、ぜひアドバイスとしていただけますか。

寺尾:過去の自分へのアドバイスにもなるんですけど、現状に不満があるから、どこか新しいところに行きたいというのは、あまりよくないんじゃないかと個人的に思っています。逃げる意味で移住や転職を選択すると、失敗しやすいですよね。そうじゃなくて、将来どうなりたいのかをきちんと考えたうえで、自分がなりたい像に向けて「どういうプロセスを踏んでいくのか」「どういう計画でいくのか」「いつ行動するのか」といったことを、ちゃんとマインドマップを組んで行動するのが一番かなと。

—確かに計画性は必要ですよね。

寺尾:あとは、自分がよければいいという感覚じゃなくて、人の役に立ってこそ初めて自分は幸せになれるという考え方——僕はそれを“利他自責”と呼んでいるのですが、他人の利益のために行動して(利他)、身の回りで起こることすべてに自分が責任を取る(自責)という考え方で生きていたら、必ず成功できるという感覚があります。現代人はその逆で、“利己他責”で生きている人が多いのかもしれませんね。とにかく自分の利益だけを考えて(利己)、何か起きたら他人の責任にする(他責)、みたいな。そういう考えでは何をやってもうまくいかないので、ある程度自分で責任をもって、世のため人のためになることを考えると、道が拓けるように思います。

—移住にあたっての大切なマインドセットですね。とはいえ、特に40代からの移住となると、プレッシャーを感じる方もいらっしゃるかもしれません。その点、寺尾さんなりの不安との付き合い方を教えてください。

寺尾:これも本から教えてもらったことなのですが、僕の好きな詩の一つにサミュエル・ウルマンの「青春」という詩があるんです。その中に「青春とは、人生の或る期間を言うのではなく、心のあり方を言う」という一節があります。だから、年齢なんか関係ないと。自分がやりたいことに情熱を持って、夢中になれたらいつでも青春だろうと言うわけです。僕もそうありたいなと思いました。

あともう一つは、さっきも言いましたけど、人生は有限であるということです。そう考えたら、もう年だからと考えるのはおかしいなと思ったんです。今日一日を生きられただけでよっぽどありがたいというのがあるので、とにかく一日一日を後悔せず生きていくことが大切だなと。移住にあたって不安は確かにありました。でも、今のままずっと不安を抱えて、やりたくもないことをしていくよりは、明日死んでもいいように今日やりたいことを全力でやるという方が、僕は勝ったというイメージですかね。

ミスマッチを防ぐための工夫が詰まった「LOCAL MATCH」

—今回LOCAL MATCHを通して、寺尾さんの移住をお手伝いできて、非常にうれしく感じています。今後、移住を検討される方にもLOCAL MATCHを広くご利用いただきたいのですが、LOCAL MATCHを使ってみての寺尾さんのご感想も少しお伺いさせてください。

寺尾:案件を条件付きで絞り込みができるので、その点は使いやすかったですね。ほかのサービスと一番違うと思ったのは、個別相談会をやってくれたことです。通常の転職サイトだと、自分で履歴書を書いて、あとは機械的にマッチングしていくのが一般的ですよね。その点、自分の能力を活かして移住がしたいという個人に対して、ちゃんと話を聞いてくれて、アテンドしてくれるのがLOCAL MATCHさんの強みかなと思いました。

—ありがとうございます! LOCAL MATCHでは一人ひとりのマッチングを非常に大切にしているので、個別相談会以外にも募集情報の内容についてかなり力を入れています。そのあたり、他の転職サイトさんとの違いなどは感じられましたか? もしあれば、教えてください(笑)。

寺尾:地域の特性や募集背景が細かく書かれている点は、非常に良かったです。その土地が本当はどんな所なのかをわかるようにしてくれているので、ミスマッチを防いでくれるように思います。実際に移住して、こんなんじゃなかったとか、お客様感覚で行って失敗して帰る人もいると、たまに聞きますので。なので、「来て来て」というよりも、この土地はこういう場所だけど、それでも来たかったら……という、人を選ぶような書き方がされているのが印象的でした。ミスマッチを防ぐためには、こういった書き方は必要なんじゃないかなと思いました。

—おっしゃる通り、地域のことを理解していないとミスマッチが起こりやすいんです。地域のリアルな部分をしっかり伝えつつ、その土地の魅力を引き出すことにはかなりこだわっているので、その点をしっかり受け取っていただき、非常にうれしいです!

この3年は人生折り返し地点の重要な時間。この結果が僕の人生を面白くしてくれる

地域おこし協力隊が集まった研修時の集合写真

—2022年7月に移住されたばかりですが、西粟倉村での生活はいかがですか?

寺尾:ローカルベンチャーが盛んな土地ということで、若い子たちがたくさんいて、刺激にあふれています。それこそ僕が7月に来てからも、2人ぐらいは新しい方が来られていましたね。特別な場所というか、ものすごく活気にあふれた土地です。人とのつながりという面では、村内の協力隊員で集まる食事会に参加して人脈を広げたり、あとは今、納車待ちで車がないんですけど、西粟倉むらまるごと研究所が取り組んでいるモビリティシェアリングの実証実験に協力するという形で、電気自動車を貸してもらったり。そういった方々とのコネクションもできて、ツテは広がっている感じですね。

—まだ2ヵ月弱しか経ってないですけど、かなり濃密な時間を過ごされているのですね!では最後に今後の展望を教えてください。

寺尾:地域おこし協力隊は3年の任期があるので、吸収できるものは何でも吸収して次のキャリアにつなげていきたいです。この3年間は僕の人生の転機というか、折り返し地点の一番重要なときだと思っています。とにかく馬車馬のように働いて、目の前に来た機会には全部とびついて、自分を成長させ、変えていきたいと思っています。正直、3年後に自分がどこで何をしているかというのは、まだわかってないんですよね。本当に漠然とした中で、とにかく目の前のあることをこなしながら、新しいことにチャレンジして、人と出会い、その結果が僕の人生を面白くしてくれるんだろうなと思っていて。だから今できることを精一杯やるしかないと思います。

—すばらしい意気込みですね! 寺尾さんの今後のご活躍を楽しみにしております。本日はありがとうございました。

(終わり) インタビュー時期:2022年8月

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