埼玉県長瀞町に移住した清水勇多さんのLOCAL MATCH STORY〜町おこしからブランドを作り、世界への発信を挑戦してみたい〜
移住を経験し、地域で活躍されている人を紹介する「LOCAL MATCH STORY」。
今回は、埼玉県長瀞町に移住された現役地域おこし協力隊の清水 勇多さんをご紹介します。
そして、この記事は清水さんご本人に執筆いただきました。
自己紹介
清水 勇多(しみず ゆうた)
1990年生まれ 大阪府阪南市出身
埼玉県長瀞町の企画財政課 (地域おこし協力隊)
アメリカのデニムブランド「AG JEANS」に就職、販売員としてキャリアをスタート。東京に転勤しブランドPRなどを経験する。その後、室内園芸ブランドの立上げや個人のブランド企画をしながら、2020年10月から長瀞町の地域おこし協力隊として移住。人や町の歴史にフォーカスする「ウラ長瀞」、自然豊かな長瀞町で環境問題について考える「WITH RIVER」、2つのプロジェクトを企画し町おこしの活動をしています。
私が移住した地域はこんなところ
写真:長瀞町の中心を流れる荒川
写真:長瀞役場裏の畑
埼玉県にある長瀞町は、自然の美しさに囲まれた観光地です。明治時代ごろから観光地として栄え、年間300万人の観光客が訪れています。しかし長瀞町の人口は7000人をきり、人口減少は大きな問題となっています。また高齢化が進み若い世代は少なくなっています。実は長瀞町全体が県立長瀞玉淀自然公園に指定されており、その中心を流れる荒川の両岸は美しい景色や自然に囲まれています。ラフティングなど川での遊びやキャンプ場も多いため、観光客として若い世代は多く訪れています。渋谷まで電車で約2時間で行けるため、都内へのアクセスも決して不便ではないです。
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なぜ移住しようと考えたのか
新型コロナウィルスによる影響を受け、考えていた事業がうまくいかなくなりました。立ち上げた室内園芸ブランドで企業コラボレーションや出店イベントがなくなりお金を稼ぐ厳しさをあらためて気づかされました。個人事業主として独立したばかりだったので、4月から徐々に消えていく予定表を見てゾッとしました。時間ができたので前から興味のあった介護の仕事にも挑戦しました。大変な仕事ですが勉強することが多かったです。百貨店などで接客の仕事をしましたが、介護ほど接客力を求められる仕事はないと感じました。長瀞町での活動開始が10月からだったので4ヶ月ほどでしたがまた機会があれば関わりたい業種です。やりたかった事業がうまくいかない毎日に、辛いとか惨めだなと感じることも多かったです。なので移住は新しい挑戦がスタートできるという希望でもありました。
移住後のライフスタイル
基本的に決まったサイクルはなく自由に生活をしています。地域おこし協力隊として活動するのは平日の9時〜17時がメインになります。役場に毎日行くという決まりはなく、自分のペースで好きな場所で仕事をさせていただいてます。リモートワークが普及したタイミングだったので、これまでの仕事をそのまま長瀞ですることができています。最初の頃は朝早く起きて近くの山に登り、山頂からの景色を楽しみながら仕事をしました。すごく気分も良くコーヒーも数倍美味しく感じます。常に「自然の贅沢」をさせていただいてます。大きく変えたいと考えていたのが、仕事のやり方でした。地域おこし協力隊の活動では、パソコンをできるだけ使わずにスマートフォンを使うようにしています。どうしてもパソコンを使わないとできないことはありますが、記事やサイトの作成、SNSの更新、動画編集など全てスマートフォンでしています。場所を選ばずに町おこしの活動ができています。
写真:宝登山の登山道
写真:宝登山山頂からの眺める長瀞町の風景
移住してわかった地方暮らしの魅力
都会とは流れる時間の感覚が違います。仕事の考え方も少しですが変わってきました。前はスピードが大事と思っていましたが、今は時間をかけて企画を考えるようになりました。「あっ自分が考えてること、すでにやってる人いるな」と冷静に世の中を見ることができています。町には風や虫の音など自然の音があるので、好きな音楽を聴く回数も減りました。仲良くなったおばあちゃんがいるんですけど、おでんや炊き込みご飯を頂いたりします。人とのふれあいも増えました。地方暮らしの魅力が何か言語化するのは難しいですが、都会にはない魅力(体験)が多くあります。最近はそれをどう感じるか、毎日の暮らしを豊かにできるかは自分次第なのかなと感じます。
移住先での住まいについて
長瀞町は物件が少なく、インターネットで調べても物件は出てきません。役場の移住担当の方に調べていただき住居の候補をいただきました。仕事の関係でゆっくり内見したりできませんでした。物件はメールで決めさせていただきました。現在ひとり暮らしですが、2LDKの物件に住まわせていただいてます。家賃は¥57,000(共益費、駐車場含む)です。1990年に建てられたアパートで、私が住んでいる部屋はもともとコンビニだったそうです。リフォームされていて広く綺麗です。畳の部屋もあるのでお金に余裕ができたら、盆栽や和のインテリアを購入し楽しみたいと考えています。
移住先でのお金事情について
地域おこし協力隊の業務委託費は¥200,000です。家賃を含む活動費は別で使うことができます。移住前に比べると給料はかなり下がりましたが、贅沢しなければ生活に困ることはないと考えています。長瀞町は観光地のため、飲食店の値段設定は高いです。そのため食事は基本自炊になりました。大手飲食チェーンの店舗もないため、マクドナルドやスターバックスなどのスマホアプリを使うこともなくなりました。コンビニでご飯を買うことも無くなりました。
移住先の暮らしで困ったこと
移住してちょうど1ヶ月が経ちました。基本的に今までの暮らしと変わらず快適に暮らせています。
地域おこし協力隊に応募した理由
以前から町おこしに対する興味がありました。正直なところ「大好きな長瀞町を盛り上げたい!」など、特別な熱い想いをもって応募したわけではないです。今自分が描いているライフヴィジョンの中に、マルチヴィジョンブランドを展開するという目標があります。そのブランドが掲げるヴィジョンの中に、町おこしが入っています。町おこしからブランドを作り、誰も知らない何もないところからブランドを構築していき、地方の魅力も世界へ発信していきます。そんな挑戦をしてみたいです。この町に対して自分は何ができるのか?2つのプロジェクトを提案し採用していただきました。
地域おこし協力隊になるまでにやったこと
大変だったのが新型コロナウィルスの流行で、長瀞町に訪れることができませんでした。観光で2回しか行ったことがなく、町の詳細が分からずに町おこしの企画書を作らなければいけませんでした。まず長瀞町がどんなところなのか?インターネットやSNSでの情報を頼りにリサーチしていきました。しかしネットの情報も多くなく、町の情報収集には苦労しました。この町に必要なものは何か?何を考えれば町に求められる存在になれるかを考えました。書き出した可能性を整理し、一つの企画書を完成させました。
地域おこし協力隊の活動内容
私は自由提案部門として長瀞町の地域おこし協力隊に採用されました。2つのプロジェクトを企画し活動をスタートしました。このプロジェクトはどちらもミレニアル世代やZ世代をターゲットに設定しています。
【ウラ長瀞】
長瀞町を形成する「人」や「歴史」にフォーカスした情報を発信します。この場所で生きる人のストーリー、町の歴史など観光では知ることができない長瀞町の新しい魅力を発見し共有します。
例えば長瀞町をSNSで調べると、岩畳や紅葉など自然の写真が出てきます。長瀞には自然という癒しを求めて多くの人が来ている事がわかります。長瀞のオモテの魅力が観光や自然であるのなら、ウラの魅力はそこで生きてる人だと考えました。町の魅力に「人」を追加したいと考えたのがこの企画です。実際に素敵な方が多く、いろんな想いをもって生きる人がいます。長瀞で生きる人の魅力を追求する企画です。第一弾で「66年間、山頂から長瀞を見守るおばぁちゃん」と言う記事をUPしました。早速SNSで、「会ってみたい!」とメッセージをいただいてます。今後も長瀞の面白い人を紹介していきます。最終的には「ウラ長瀞」をブランド化し、ブランドブックを作り新しい町の魅力を残せたら面白いと考えています。
「ウラ長瀞」Web メディア
https://uranagatoro.themedia.jp
写真:第一弾の記事ヴィジュアル
写真:特集したおばあちゃん(坂本寿美子さん88歳と娘さんの妃史さんと看板犬イヴちゃん。宝登山神社奥宮近くの売店をしています)
【WITH RIVER】
長瀞町は川の恩恵により観光地へ発展し、 多くの人を日常生活から解放する癒しの場所になりました。ずっと注目されてきた環境問題。自然環境に恵まれ観光地、年間300万人の人を迎える町としての責任。自然豊かな長瀞町から、地球が直面する、環境問題を学び伝えていきます。
環境問題に対してこれまでも仕事で取り組んできました。しかし今まではビジネスが絡んでいました。売上を意識しないといけないこと、矛盾する事も多く限界を感じていました。そして結局何の意味もないのでは?心の中ではそう思っていました。ビジネスではなく純粋に環境問題について考えてみたい。そんな想いをもって「With River」プロジェクトを企画しました。映画や本にあるような難しい言葉や考えを共有するのではなく、地域おこし協力隊としてできる事は何か?自然豊かな美しい町の発展に貢献していきます。
具体的な活動は、川沿いや町内のゴミ拾い活動を週2回続けています。観光スポットはゴミもなく綺麗なのですが、少し離れるとペットボトルやカンなど多くのゴミが道に散乱しています。また普段の生活で環境問題に取り組めることはないか?それをする事で具体的にこの問題の解決や認知に繋がるなど情報の発信をしていきます。このような活動を続け、長瀞町に訪れる年間300万人の観光客に対して地域おこし協力隊としてメッセージを発信していきたいです。この環境問題に対する取組を自己満足で終わらすのではなく、長瀞の小学生や中学生に対して伝えていきます。長瀞だけでなく日本の未来を創る世代へ自分の活動で
良い影響を与えれることができれば本当に嬉しいです。
「With River」Web メディア
https://withriver.themedia.jp
写真:「WITH RIVER」プロジェクトヴィジュアル
写真:荒川の様子
写真:ゴミ拾い活動の写真
地域おこし協力隊の受け入れ体制や関係する人々
長瀞町は2019年から地域おこし協力隊の活動が始めました。2019年から活動されている方のおかげで役場の受け入れ体制は整っていました。町の観光協会や商工会なども挨拶させて頂ける機会もいただけました。担当して頂いてる役場の方が、いろんなサポートをしてくれます。「困ったことはないですか?」としっかりコミュニケーションを取ってくれるので助かっています。
地域の人との関係構築
地域の人との関係を作るのは非常に難しいです。しかし一歩目の地域の人と出会うことができれば、あとは時間の問題なのかなと思います。地域おこし協力隊で来させて頂いた事を伝えると、様々なお話を聞く事ができます。私の場合はお酒の場が好きで居酒屋に一人でいきます。そこで地元の方と仲良くなり、連絡先を交換させて頂きます。最近はラフティング会社の方と仲良くなり、居酒屋で会った次の日にラフティング体験をさせて頂きました。新型コロナウィルスの感染予防など人と関わるには細心の注意を心がけてます。何より人の話を礼儀よく聞くこと、自分を大きくみせるのではなく等身大でいること。このあたりを心掛けて地域の方と関係を築かせて頂いている最中です。観光協会グループで開催される草刈りなどの行事にも積極的に参加しています。
地域おこし協力隊の3年計画
【1 YEAR】
・町のことを知る
・2つのプロジェクトの基盤を確立する。
【2 YEAR】
・2つのプロジェクト認知を高める。
・起業に向けた準備を開始する。
【3 YEAR】
・2つのプロジェクトのマネタイズ化
・起業に向けた具体的なアクションを行う。
地域おこし協力隊卒業後にやりたいこと
今個人でブランドを作っています。アップサイクルをベースにしたアパレルブランドです。全国のお直し職人と一緒にモノづくりをしたいと考えています。日本の技術や文化を海外で継承する計画などやりたい事はたくさんあります。そのブランドのベースを長瀞町で展開できたらと考えています。
地域おこし協力隊の魅力
3年間、純粋に自分がしたい事に向き合えます。贅沢しなければ生活に困る事はないため、気持ちにも余裕が生まれます。新しい土地で新しい人生を始める、そんな新鮮な気持ちで毎日を楽しむ事ができています。
結局のところ、地域おこし協力隊として、できる事は限られているのかなと感じます。自分がどこまでてきるのか?自分の現在地の再確認もできます。まだまだ続いていく人生の中で、この3年間でどれだけ新しい発見や挑戦ができるのかワクワクしてます。そして全てが自分の責任になります。だから本当は何をしたいのか?考え直すこともできます。地方は人がいない事が問題と考えていますが、本質は違うところにあると思います。都会から地方に出て何ができるのか?というのが問題の本質になると考えています。地域おこし協力隊がその場所を好きになり、本当にしたい事をその場所でする。その幸せを掴むチャンスが地域おこし協力隊という制度なのかなと思います。私は貯金もなく「0円」で来ました。なんとか生きれています。こんな私でも挑戦できるので、興味がある方は迷わずに応募するべきと思います。
地域おこし協力隊の大変なところ
3年という期間限定で、町のことを理解し町の人と関係をつくらないといけないことです。やはり地域おこし協力隊として来させて頂いて、自分の活動費は国から出てることも意識しました。そしてこの町を盛り上げようと熱い想いをもって、活動されている方はいっぱいいます。町で商売されてる方もいます。そういった人たちと一緒に活動することになります。今までの経験を活かす!という強い想いをもって活動をはじめると思います。しかし自分の実力を勘違いしてはいけないです。移住するとどうしても今までの事が凄かったと、比べたり錯覚してしまう事があると思います。謙虚に自分ができることは何か、そこで住む人たちとどうやってまざりあう事ができるか。背伸びせずに当たり前の事をしていくことが大変なのかなと感じています。
移住検討している方へメッセージ
移住する事に対して1番心配なのは仕事やお金になると思います。私の場合は地域おこし協力隊という安定した収入が得れるため、迷う事なく田舎へ移住できました。しかし私が移住したのは、自分がしたい事をするためです。そこが1番大事だと思います。移住する前に何をしたいのか?それが見えないのであれば、都会の方が仕事もあるし動かない方がいいと思います。自分がしたい事があって、場所を変えないといけないのであれば迷わずやってみるべきと思います。今までやらずに後悔した事があります。結局は大したことはないのに何かを恐れていました。何かを変える事に対して恐れる人が多いと思います。やりたい事があって移住したほうが可能性が広がるのであれば、迷う事なく挑戦するべきだと思います。そしてシンプルに生きる事を楽しめば、何があっても「良かった」という結果になると思います。
(終わり) 執筆時期:2020年11月
LIFULL 地方創生からお知らせ
地方移住マッチングサービス「LOCAL MATCH」のティザーページ公開
【未来が描ける移住はじめませんか】
地方移住マッチングサービス「LOCAL MATCH」2021年5月サービス開始
LOCAL MATCH は、未来の「仕事」「暮らし」「将来設計」を事前に描ける移住プラットフォームです。
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