筋力増強のメカニズム:神経系の適応について
筋力増強には大きく
●筋肥大
●神経系の適応
の2つ要因が関係してきます。
本記事では神経系の適応について解説します。
【運動単位】
運動単位(Motor Unit):脊髄前角から出た1本のα運動ニューロンと、それに支配されている全ての筋線維群を運動単位といいます。(下記図)この運動単位は運動系の基本的機能単位と呼ばれます。
1本のα運動ニューロンが支配する筋線維の数を神経支配比と言い、手指や眼筋など精密な動作に関与する筋肉では低神経支配比となっています。
逆に、粗大な動作に関与する大腿部の筋肉は高神経支配比となります。
【運動単位の動員】
運動単位には、収縮が遅く疲労しにくい「S型運動単位」と収縮が速く直ぐに疲労する「FF型運動単位」がある。
同一の運動単位に属する筋線維は同じ組織化学的性質を示すため、S型筋線維では遅筋(赤筋またはType 1筋線維)、FF型筋線維は速筋(白筋またはType 2b筋線維)から構成される。
これは非常に重要な知見となりますので、おさえておく必要があります。
【神経の興奮閾値の違い】
S型運動単位とFF型運動単位は興奮の閾値が異なります。これも非常に重要です。α運動ニューロンは、一般的にS型運動単位で”興奮の閾値が低く”、FF型運動単位で”興奮の閾値が高い”という特徴があります。
【サイズの原理】
超重要なサイズの原理について説明します。
随意運動(意識的に筋肉を収縮させる)の際に、
▶「運動強度が低い(弱い)ときには興奮閾値の低いS型運動単位が動員」される。
▶「運動強度が高い(強い)時には興奮閾値の高いFF型運動単位が動員」される。
この様に、「サイズの小さな運動単位からサイズの大きな運動単位へと順次活動していくことをサイズの原理といいます。」
【全か無かの法則】
先ほど説明したサイズの原理
神経細胞を興奮させる刺激の強さのボーダーライン(閾値)を越えると興奮する、越えなければ興奮しないという現象があります。
つまり、神経細胞を興奮させる閾値を超える強度刺激があれば、該当閾値以下の全ての神経興奮が動員されるが、閾値以上の神経細胞は興奮しないという現象がおこります。
つまり、高閾値の神経細胞を興奮させるためには、かなり高強度(高い刺激)で神経細胞を興奮させる必要があります。
【全か無かの法則】
【サイズの原理】
この2つを簡易的に図示すると、以下のようになります。
これまでの説明からも分る通り、速筋線維や高閾値の運動単位を動員するためには高強度のトレーニングが必要であることは分かるかと思います。
また、高強度のトレーニングを実施することで、運動単位の同期化や発火頻度の増加、活動時間の延長が生じ、効率的に神経動員がなされることで筋力増強が得られます。
低強度では無く、高強度トレーニングで筋力増強が得られるメカニズムは簡単に記すと以上の様になります。
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