波乱万丈な僕がタルト専門店の店主になって再びクリエイターを目指す理由-21
「駅ナカ初日は修羅場」
駅ナカの催事出店は1週間にわたる場合と2週間にわたる場合がある。今回の出店は1週間。駅ナカで出店をするということは「菓子店」などにとってはメジャーデビューの登竜門にあたる。まず多くのお客様の目に止まることで認知度を上げることができる。そして鉄道の沿線は広範囲にわたり認知は広範囲に波及する。またその沿線で出店できること自体が信用度に繋がる。
ただし催事出店の準備には商品があれば良いというわけではなく、告知チラシへの掲載や店頭POP類の製作、事前のSNSやネット媒体での告知が必要になる。そして僕たちはGoogle Mapで出店駅の周辺の商圏を調べて、僕たちのメインターゲット層である30〜40歳の主婦が多く住む新興住宅地を中心に500枚のショップカードをポスティングした。商品の仕込みを終え、在庫分を配送した。催事出店初日前日の夜に一部の商品を手持ちで持ち込んで出店に際しての注意事項を担当者からレクチャーを受けるため出店スペースに出向いた。商品を保管するバックヤードのこと、コロナ感染症への対応のための衛生管理のこと、そして思った以上に大変だったのは顧客の方が支払うときに使われる方法が千差万別であるということだった。キャッシュレスが進み、交通系プリペイドカードやクレジットはもちろん、あらゆるカードに対応しなくてはならなかった。そして、「現金で払ってポイントのみカードに加算」する場合や海外で使われているカードへの対応、そしてそれら全てを含めてその日の売り上げをクライアントに報告しなければならなかった。
初日の営業時間より1時間も早く現地入りをした。現地で朝食を取ってから、まずはバックヤードへ必要な商品を持ってきて、ショーケースに入れ始めた。なにしろ初めてのことなので、どこにどの商品を配置するか?お客様の導線を考え、売れ筋商品を見やすく置く必要があった。また時間帯によっても客層が変わり、曜日によって客数が増減する。この駅は市街地に向けての路線がいくつも分岐していた。また観光地も近いので平日は市街地に通勤する客が朝と夕方に集中する。土日、祝日は観光地に向かう客が通過する。通勤客は滞留時間が短い。その短い時間で購買を促さなくてはならなかった。
この時の催事出店は週半ばから始まった。朝の通勤時間から夜の帰宅客が引けるまで長丁場だった。担当者から聞いていた通り夕方16時過ぎから客数が増え始め、18時〜19時にピークを迎えた。遅い時間には詰め合わせのBOXを買う客が増えた。贈答用のBOXは包装に手間がかかる。対応が追いつかなくなってきた。ピーク時には店員を3名に増やしていたが、まだ現場に慣れずギクシャクしていた。18時をまわるとようやく客足が落ちて家内と僕だけでなんとかこなせるようになった。僕は初日朝から入っていたがレジ周りは任せて客の呼び込みに集中した。
1日目の販売が終了してからが最大の難関だった。それは1日の売り上げの集計。いろんなカードで精算された金額を全て集計して販売した商品と照らし合わせる。慣れない作業に家内は苦戦していた。結局11時までかかって預け入れを終了した。二人ともヘトヘトになって帰路についた。果たしてこんなことを7日間続けられるのだろうか?それでも僕たちはお店で翌日の準備をしてから就寝した。
事件は催事出店2日目に起こった。
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