革のおはなし-7
革を製造している事業者のことをタンナーと呼ぶけれど、日本のタンナーの所在地は、かつて狩猟が行われていた地域と関係が深い。
姫路、奈良、和歌山、豊岡、岐阜、栃木etc.
大抵が険しい山岳地帯を伴う農業や工業が発展しにくい地理。産業の主体は狩猟で、肉や皮を加工して他の集落で販売したり物々交換をして生計を立てていた地域が多い。
日本の革は主に「鹿革」や「猪革」などの野生動物の革が多い。毛皮をそのまま加工して販売する産業が多かったのも特徴。
それに比べて欧米の革は「牛革」「馬革」が多く、家畜類の革が多く使用されている。これは欧米では牧畜が盛んで、地域の住民が家畜の資源を余すことなく使い切っていたことが窺い知れる。
いわゆる生き物の「皮」を丈夫で耐久性のある「革」に加工することを「鞣《なめ》す」というけれど、動物から剥いだ皮はそのまま放置すれば腐って使い物にならなくなる。だからこの「皮」を防腐効果のある液体に浸したりして腐らないように加工する必要がある。何度も液を浸潤させ、余分な脂肪などの成分を抜いてある程度水分を抜いて柔軟性を残したものが「革」と呼ばれる。
元の性質を変化させて別の性質のものに変化させることを「革」→かわ(カク)と呼ぶようになる。これが「革」の語源。
現在は人工的に作った防腐性の強い溶液を使っているけれど、元々は植物に多く含まれている「タンニン」という成分を使って鞣していた。皆さんがご存知なのは「茶渋」とか「柿渋」と呼んでいる中にも大量に含有している成分。だからお茶には殺菌効果がある、とか、柿渋で染めると丈夫で長持ちするというのは「タンニン」の防腐作用を知っていた先人の知恵と言える。
この自然界に存在する「タンニン」で鞣した革のことをいわゆる「ヌメ革」と呼んでいる。
これに対して人工的な防腐液の代表的な「クロム液」を使って鞣した革を一般的に「クロム革」と呼んでいる。
最近ではこの二つの鞣し方を組み合わせた革も多数存在している。
「ヌメ革」の特徴としては何度もタンニン液を浸潤させる必要があるので鞣すのに時間がかかり、結果価格は高価になること。やや硬めに仕上がり丈夫な革になるけれど、その硬さゆえに加工には特殊な技術が必要な場合が多いこと。いわゆる「経年変化」といわれる変化をし、色が濃くなり、使い込めば艶が生じ、味のある質感に変化してゆくこと。硬さを生かすためにやや厚めで使用することが多い。質はどちらかというと「木質」に近い。
「クロム革」の特徴は「クロム液」の効果が早く鞣すのに時間を必要としないので価格はやや安価になること。柔らかくある程度伸びが生じるので、台上で立体的なものを縫製するミシン縫いに適していること。ヌメ革のような経年変化はほとんどなく、品質が長期間安定していること。質はどちらかというと「布質」に近い。
作ろうとするものの構造や特徴に合わせて革質を選ぶ必要があるので、本来は「何を作るか?」「どんな加工技術を使用するか?」が先で、それに合わせてどんな革を購入するかを決めないと思ったような作品は出来ない。
ここまで主に動物の革のことを言ってきたけれど、革に加工できる生き物は動物だけでなく、「鳥」や「魚」「爬虫類」の革も鞣すことはできる。
オーストリッチ、スティングレイ、クロコダイルなど興味があれば検索してみてください。
さて、革縫い教室で最初に縫うのはビジネス用のキャリーケース。技法は外縫い。まずは革の仲卸店を師匠に紹介していただき、その場所へと足を運んだ。
それはどんな場所で、どんな革と出会えるのだろう?