「新しい家族を創る」覚悟をした日
なんだか大層なタイトルになりました。
皆さんの、結婚前夜はどのように過ごしましたか?
32年前の5月に夫と結婚式をあげました。
私の、忘れもしない結婚前夜の出来事です。
「絶対に、この家には戻らない」と新しい出発をする覚悟ができた夜でした。
「お前、いつになったら帰ってくるんだ!」
と父が電話で叫んだのが、発端でした。
その前から、父の機嫌がなんとなく悪いなとは思っていたのですが、母の勤務先にかけた電話で、それがあらわになりました。
母は明日の、私の結婚式で欠勤するための段取りや依頼もあって、通常より帰宅が遅くなったんですね。
しかし、父にとっては「ありえない!」ことだった
とこの時気づきました。
父は、私が嫁ぐ前夜には、近くの寿司屋にでも行って「仲の良いフツーの家族らしい」楽しいひとときを過ごそうと考えていたのでしょう。
それが、母の残業で叶わなくなって、怒鳴り声。
そして、母が帰ってきてからは暴力になりました。
まあ、私もその前まで仕事をしていたので、その日もバタバタ。
そんな落ち着かない「結婚前夜」が、父のイメージと違ったのでしょう。
とにかく、怒りだすと手がつけられないのは、いつものことです。
それも、もう二度とこない「結婚前夜」だからなおさら。
自分の思い通りにいかない苛立ちと、娘が嫁ぐ若干の寂しさもあったのか、明日の式への緊張か、全部ないまぜになって、猛烈な暴力と破壊になりました。
「ごめんなさい」と母は謝りながら、私もいつになく謝りながら、父をなだめました。
「あ~、やっぱり、最後の最後まで、こんなことだ。この家は」
ふともらした私の一言。
父は一瞬手を挙げそうになりましたが、ふっと目の色が落ち着き、静かになっていきました。
父がふて寝をした後に、割られたお皿や投げつけらたあれこれ、棚から落とされたものを、母と一緒に涙を流しながら片づけました。
どうしても、どうしても涙が溢れ出てきた。
最後の最後まで、どうして、こんなことなのだろう。
悲しさか、腹立たしさか、よく分からないのですが、とにかく母も私も涙しながら片づけました。
「まゆみ、やっぱりこの家にいたらいかんね。谷脇さんと幸せになってね」
母の心の底から絞りだすような力のある声でした。
実は母は、夫との結婚に反対でした。反対とは口には言いませんでしたが、最後までいい顔をしなかったのは、母です。
その母からの、最高のはなむけの言葉でした。
「もう、この家には戻らない。絶対に」
(一時的に里帰りはするとしても、この家に帰属することはしない、という意味です)
夫とともに、しあわせな家庭を創る。
たぶん苦難もあるだろうが、この家に戻るよりはずっと良い。
実は、ちょっと実家に抱いていたノスタルジックな気持ちもふっとびました。母の私への執着も、断ち切りました。
幸せへの覚悟は、
ワクワクでも、ハッピーでもなく、ただ「決してここにはもどらない」という「不退転の覚悟」(苦笑)をした結婚前夜でした。