【5分把握】「OUI.inc」例のデバイスの論文アブストをザックリ読んでいく!
大好評の論文ザックリ把握シリーズです!
今回はライフタイムベンチャーズの出資先でもあるOUI.incのSmart Eye Camera (SEC)の論文を紹介します!このデバイス本当にすごいんです!
ピッチイベントでよく聞く会社名だけど、どんなことしてるの?
このデバイスはどこがすごいの?
医師で起業して活躍している人は、どんな人ががいるのだろうか?
という方におすすめの記事です!
論文を読み進める前にOUI.incに関して少し説明をいたします。
(※論文のポイントのみを掻い摘んで記載おりますことをご理解ください。全文ご覧になりたい方は、以下のリンクより論文をお読みください。)
OUI Inc.(ウイインク:株式会社OUI)とは。
OUI Inc.(ウイインク:株式会社OUI)は、慶應大学の眼科医が起業した大学発のベンチャー企業です。“医療を成長させる”ことをミッションに、現役医師の知見や技術を全ての医療現場に還元することで、常に医療を成長させ続け、最高の医療サービスを創造します。
自ら発案し開発を行ったiPhoneのアタッチメントである医療機器、Smart Eye Camera (SEC)を国内外に広めることで、2025年までに世界の失明を50%減らすことを目指し活動しています。
Smart Eye Camera (SEC)について。
Smart Eye Camera (SEC)は、自社開発した iPhone に取り付けて眼科診察を可能にするアタッチメント型医療機器です。電気のない地域や被災地など場所を選ばず眼科診察が可能になります。
今回は数あるSECの論文の中から、2020年に投稿された「白内障」の診断に関する論文をザックリ見ていきたいと思います。それでは参りましょう!
(※原文をDeepLで翻訳したものを引用記載しています。)
Evaluation of Nuclear Cataract with Smartphone-Attachable Slit-Lamp Device
スマートフォンに装着可能なスリットランプ装置による核白内障の評価
Background
視覚障害や加齢に伴う眼の病気は、タイムリーに発見・治療する必要があります。しかし、適切な医療機器がないために、その妨げになることも少なくありません。私たちは、スマートフォンに装着可能で、記録が残せる携帯型のスリットランプ装置「スマートアイカメラ(SEC)」を発明しました。本研究の目的は、SECと従来のポータブルではない細隙灯顕微鏡との間で、核白内障(NUC)の評価を比較することでした。
失明者は世界的に増加しています。現在、3,600万人が失明しており、今後30年間で1億1,500万人に増加すると推定されています。失明の主な原因は白内障です。50歳以上の高齢者の失明の55%は白内障が原因です。
白内障は最も一般的な加齢性眼科疾患であり、診断にはスリットランプ顕微鏡からの細いスリット光が用いられます。
白内障による失明は、手術によって防ぐことができますが、発展途上国などでは、医療資源が不足しているため、適切な介入ができないことが多々あります。
白内障の診断に使われるスリットランプ顕微鏡は,携帯できないものが多く,患者は眼科に行って検査を受ける必要があります。そのため、寝たきりの患者や小児、高齢者、感染症患者など、眼科検査を受ける機会が少ない患者もいます。
携帯型の細隙灯顕微鏡もありますが、これらは記録機能がなく、前眼部の画像を記録するためには外付けのカメラが必要で、装置は大きく、重くなってしまいます。
この問題を解決するために,スマートフォンの光源を眼科診断に必要な光に変換する,携帯可能で記録可能な細隙灯デバイス「Smart Eye Camera」(SEC)を開発しました。
SECはスマートフォンのカメラを用いた録画機能を備えており,動物モデルで安全性と実現性が確認されています。また,直焦点照明法で白内障を診断するのに十分な細さのスリットビームを作るために、スリットライトコンバーターも搭載しています。
この研究では,白内障診断におけるSECと従来のスリットランプ顕微鏡の有効性と診断性能を評価・比較しています。
Methods/Material
日本人64名の128眼(平均年齢:73.95±9.28歳、範囲:51-92歳、女性:34名)が登録された。眼科医によるWHO分類に基づく核濁の標準写真3枚をもとに、NUCを4つのグレード(グレード0~3)に分類した。眼科医療助手(非眼科医)がSECによるビデオモードで眼球を撮影し、眼科医がNUCを採点した。グレードの相関性と評価者間の再現性を測定した。
従来の非携帯型スリットランプ顕微鏡として、眼疾患のスクリーニングや診断に広く使われている「SL130」と、携帯型のスリットランプ装置「SEC」を比較検証しました。
SECは、スマートフォンの光源とカメラレンズの上に装着するアタッチメントです。スマートフォン光源を細いスリットライトに変換し、水晶体に光を届けることができます。
フレームは、ポリアミド12を使用した3Dプリンターで制作し、カメラと光源としてiPhone 7を使用しています。
Results
2つのアプローチによるNUCのグレードは、有意に相関した(両眼:r = 0.871 [95%CI: 0.821 to 0.907; p < 0.001])。また、評価者間の一致度も高かった(加重κ=0.807[95%CI:0.798~0.816;p<0.001])。
SECによる測定の平均時間は2眼あたり30.38±6.27秒でした。
Discussion/Conclusions
本研究では,NUCのグレードにおいて,SECは従来の非携帯型スリットランプ顕微鏡と同等の信頼性があることが示唆された。
従来の細隙灯顕微鏡とSECのNUCグレードを比較したところ、両装置間に有意な差は認められなかったとされています。また、従来の細隙灯顕微鏡とSECによるNUCのグレードの間には、有意に強い相関が見られています。
さらに,両装置で得られた画像の再現性が高いことも示唆されています。
本研究の結果、従来の非携帯型のスリットランプ顕微鏡だけでなく、携帯型で記録可能なスリットランプでも、白内障の画像を適切に診断・記録できることが示唆されたと結論付けられています。
従来から同じような試みのデバイスは検討されてきていましたが、
・録画機能がある。
・携帯可能である。
・水晶体に確実に届くスリットライトを生成できる。
この3点を同時に解決したのもはSECが初めてで、従来のデバイスよりも優位性が高いとされています。細いスリットライトで明瞭な眼球写真を撮影できる携帯型の記録装置は他にはありません。
以下のような潜在的な利点があると考えられるとされています。
(1)他の眼科疾患、特に前眼部の疾患にも応用できる可能性がある。
(2) 眼科医院以外でも使える可能性がある。SECはスマートフォンのアタッチメントで動画撮影が可能なので,遠隔医療にも使得る可能性がある。
実際の臨床現場では、NUC(核白内障)だけでなく、混合型の症例が多いことも事実です。本研究のリミテーションは、NUCのみを対象とし、COR(皮質白内障)、ASC(前嚢下白内障)、PSC(後嚢下白内障)を対象としなかったことです。しかし、NUCが最も一般的なタイプであり、特に高齢者に多く見られるものです。故に今回はNUCが対象になっています。
他の白内障バリエーションも視力低下に関連している可能性があるため、今後は混合型の症例についても評価していく予定としています。
「今回の結果は、他のタイプの白内障を持つより多くの被験者を対象とした同様の試験の実施を正当化するものであり、間違いなく貴重な情報を提供してくれるだろう。」と、論文を締めくくっています。
【記事作成者の個人的感想】
・「白内障」以外の前眼部病変の論文も続々発表されており、従来の細隙灯を完全に置き換える医療機器になってしまうのでは感じています。逆に「従来の細隙灯」には敵わないポイントとか知りたいですね。
・3Dプリンターで作成ということですが、制作費はどれほどなのでしょうか?デバイス自体に電源もないので、電子機器の認証などを取らなくで良い作りなのは素晴らしい。創業1年半でこのデバイスを作り上げるとは、なんと恐ろしい会社なのでしょうか。
個人的に大好きなCEO清水さんのピッチです。初めて拝聴したときはその熱さに胸を打たれました。熱意と使命感が画面越しに伝わってきます。
ぜひ御覧ください!!(OUI.incのピッチは1:46:30〜です。)