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厚生年金保険料率の推移と今後はどうなるのかを簡単解説します!

昭和17年に原型が作られた厚生年金は、何回も大きな見直しが行われています。

その中で厚生年金保険料率に関しては、平成15年度と平成16年度に大きな見直しが行われました。

この記事では、平成15年度と平成16年度の見直しの内容をご紹介した後に、厚生年金保険料率の推移と今後についてお伝えします。


平成15年度の厚生年金保険料率の見直し

現在の厚生年金保険料は「総報酬制」が導入されています。

元々、厚生年金は給与に対してだけ厚生年金保険料率を掛けて、厚生年金保険料を計算していました。

その後、給与だけでなく賞与に対しても厚生年金保険料率が掛けられるようになりましたが、その率は僅か1%。

給与を少なくして賞与を多くすれば、厚生年金保険料を少なくすることができるので、会社の経営者はこの方法をよく使ったと言われています。

しかし、そんな操作ができない一般従業員と比べると不公平になります。

そこで平成15年度より始まったのが総報酬制です。

総報酬が導入されて以降、給与も賞与も同じ厚生年金保険料率を使って、厚生年金保険料を計算するようになりました。

もっとも総報酬制を導入して、以前と同じ厚生年金保険料率を使うと、厚生年金保険料の総額が一気に増えてしまいます。

また、厚生年金保険料を多くすると、老後の年金額も大きく増えてしまいます。

総報酬制導入時には、厚生年金保険料の総額を維持し、老後の給付額も変わらないようにするため、厚生年金保険料率は低く設定されています。

当時と今では、厚生年金保険料率は変化していますが、総報酬制の考え方は今でも引き継がれています。

総報酬制導入に伴う新しい厚生年金保険料率の計算方法

  • 平成14年度の給与に対する厚生年金保険料率 ⇒ 17.35%

  • 平成14年度の賞与に対する厚生年金保険料率 ⇒ 1%

  • 年収のうち給与の割合 ⇒ 12月(1ヶ月を1として12月分)

  • 年収のうち賞与の割合 ⇒ 年間3.6月分

  • 給与と賞与の割合 12月:3.6月 ⇒ 1:0.3

平成15年度(総報酬制導入時)の厚生年金保険料率

  • 分子 ⇒ 17.35%×1  + 1%×0.3 = 17.65%

  • 分母 ⇒ 1 + 0.3 = 1.3

  • 分子 ÷ 分母 ⇒ 17.65% ÷ 1.3 = 13.58%

また、厚生年金保険料率を用いる給与を「標準報酬月額」、賞与を「標準賞与額」と言いますが、それぞれに上限額が設けられています。

標準報酬月額の上限は62万円、標準賞与額は150万円です。

これにより給与や賞与が高額な方も厚生年金保険料は上限額に抑えられ、老後に受け取る老齢厚生年金も飛びぬけて高くなることはなくなります。

※ 2020年9月1日以降、政令により標準報酬月額上限は62万円から65万円へ引き上げられています。

平成16年度の厚生年金保険料率の見直し

平成16年度には、いわゆる「年金法大改正」が行われています。

過去の大改正時にも様々な変更がありましたが、平成16年度は「給付水準維持方式から保険料水準固定方式へ」がキーワードになっています。

それまでの公的年金は、現役世代の収入の一定割合を老齢年金として支給するという考え方をとり、給付水準を維持する「給付水準維持方式」で年金額計算が行われてきました。

しかし、年金財政が厳しくなるに伴い「給付水準維持方式」を維持するためには、保険料を相当程度上げなければいけなくなります。

現役世代の保険料を際限なく上げることができないため、給付水準をある程度まで下げる代わりに、保険料の大幅な上昇を防ぐ「保険料水準固定方式」が採用されることになりました。

「保険料水準固定方式」導入に伴い、法律的には平成16年度から平成29年度までの保険料が決まっています。

年金保険料の引き上げは国民年金と厚生年金の両方に適用されましたが、引き上げ方には違いがあります。

この記事では、厚生年金保険料率の推移についてご紹介します。

平成14年度以降の厚生年金保険料率の推移

それでは、平成14年度以降の厚生年金保険料率について、表形式でご案内します。

繰り返しになりますが、平成14年度は総報酬制導入前、平成15年度は総報酬制導入後、平成16年度以降は保険料水準固定方式による厚生年金保険料率になります。

また、国民年金保険料は年度ごとの見直しになりますが、厚生年金保険料率が変更されるのは年度の途中です。

具体的に、平成16年度は平成16年10月に見直し、平成17年度以降は毎年9月に見直しが行われています。

なお、推移の表については「年度」の表記でご案内をします。

平成16年度に始まった保険料水準固定方式による厚生年金保険料率は、毎年度0.354%上昇し、平成29年度(平成29年度は0.118%の引き上げ)は18.300%になります。

また平成29年度以降の厚生年金保険料率は18.300%で固定され、保険料水準固定方式による厚生年金保険料率はその名前のとおり固定されます。

※ 厚生年金保険料率を乗じて算出される厚生年金保険料は労使折半になります。

まとめ 今後はどうなるの

この記事を書いているのは令和6年度です。

厚生年金保険料率は平成29年9月に引き上げが終了しているので、令和6年度の厚生年金保険料率も18.300%になります。

ところで、平成16年度の年金法大改正のキーワードは「給付水準維持方式から保険料水準固定方式へ」とご紹介しましたが、もう一つ語られた言葉があります。

それは年金制度の「100年安心設計」で、言い換えると公的年金の制度を100年間維持するために採用されたのが保険料水準固定方式です。

では、現在はどうでしょうか。

経済状況の変化などで年金財政も影響を受けているものの、現時点では100年安心設計を覆すほどの状況にはなっていないようです。

100年安心設計が維持されるのであれば、厚生年金保険料率18.300%も維持されます。

しかし、今後のことは誰にも分かりません。

厚生年金保険料率が下がる可能性はかなり低いとは思われますが、上がる可能性はあるようにも思えます。

何れにしても公的年金の制度変更は、私たちの生活に大きな影響を及ぼします。

特に老後を迎えるのまだまだ先の方は、公的年金の制度変更に注目していく必要がありそうです。

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