国民年金保険料の免除にはデメリットもある!
会社員の方などが入る厚生年金は、会社が厚生年金保険料を納付します。
一方、自営業の方などが入る国民年金は、自分で国民年金保険料を支払わなければいけません。
また、国民年金保険料は所得が多い方も少ない方も同額を支払うという特徴があり、その金額は1年間で約20万円にもなります。
自分で支払わなくてはいけない、支払額も決して安くはない。
所得の少ない方にとって国民年金保険料負担は重くのしかかってくるため、どうしても未納が発生します。
そこで登場するのが免除制度です。
国民年金保険料の免除はメリットが多いので、保険料の支払いが厳しい場合はぜひとも使いたい制度です。
ただ、国民年金保険料の免除制度にはわずかながらですがデメリットもあります。
この記事では、あえて国民年金保険料免除のデメリットについてお伝えします。
なお、免除には生活保護や障害年金2級以上を受給している方が受けられる「法定免除」と、原則として所得で審査が行われる「申請免除」の2種類があります。
この記事では、申請免除を中心に記事を書き進めていきます。
国民年金保険料の免除区分
国民年金保険料の免除には4つの区分があります。まずは、この区分についてお伝えします。
免除の区分
全額免除 ⇒ 国民年金保険料の支払いが全額免除される
4分の3免除 ⇒ 国民年金保険料のうち4分の3が免除される
半額免除 ⇒ 国民年金保険料のうち4分の2が免除される
4分の1免除 ⇒ 国民年金保険料のうち4分の1が免除される
全額免除は一定期間、国民年金保険料の支払いが全額免除されるものです。
一方、4分の3免除・半額免除・4分の1免除は、一部とはいえ国民年金保険料の納付義務が残っています。
4分の3免除・半額免除・4分の1免除は、一部の国民年金保険料を納付することで、初めて残りの部分の免除が認められる仕組みです。
仮に一部の国民年金保険料を定められた期間内に納付しないと、それ以外の免除を受けた部分も取り消されて全部が未納となってしまいます。
4分の3免除・半額免除・4分の1免除は「一部免除」と総称されていますが、実態は「一部納付」制度と考えるのが無難です。
国民年金保険料免除のデメリット1 老齢基礎年金が減額される
免除は一定期間、国民年金保険料の支払いをしなくても良いという制度です。
承認を受けているという点で「未納」とは全く異なるので、免除を受けた期間も老齢基礎年金の計算対象になります。
もっとも、国民年金保険料を支払った方と同じ計算では不公平になります。
老齢基礎年金は免除を受けた期間、その分が減額計算されます。
これを表にすると次の通りになります。
メモ 平成21年3月以前と平成21年4月以降の割合
国民年金保険料の免除制度を利用すると、納付をした方よりも少なくなるものの年金額計算が行われます。
なお、平成21年3月以前と平成21年4月以降では割合が異なっています。
その理由は、老齢基礎年金には国庫負担が含まれているためで、国庫負担の割合は、平成21年3月以前は2/6(1/3)、平成21年4月以降は4/8(1/2)です。
免除は承認されて支払わなくても良いという制度なので、国庫負担分だけは老齢基礎年金の計算対象になります。
なお、具体的な計算事例は下記でお伝えします。(事例は、免除を受けた時期を平成21年4月以降としています。)
老齢基礎年金計算の事例紹介
国民年金の強制加入期間は、20歳から60歳になるまでの40年間(480月)です。
老齢基礎年金には「満額」という考えがありますが、20歳から60歳になるまですべて国民年金保険料を納付すると、65歳から満額の老齢基礎年金を終身で受け取ることができます。
それでは、平成21年4月以降の割合を使って、老齢基礎年金の計算事例を3つご紹介します。
なお、老齢基礎年金の満額は毎年度見直しされますが、ここでは2024年度の満額816,000円を用いて計算をしています。
前提条件
老齢基礎年金(満額) ⇒ 816,000円
生年月日 ⇒ 昭和29年4月2日
60歳到達日 ⇒ 平成26年4月1日(60歳誕生日の1日前)
65歳到達日 ⇒ 平成31年4月1日(65歳誕生日の1日前)
事例1 20歳から59歳まで国民年金保険料を全額納付
816,000円 × 納付月数480月 / 加入可能月数480月 = 816,000円(満額)
事例2 20歳~55歳(36年)は全額納付、56歳~57歳(2年)は全額免除、58歳~59歳は半額免除
816,000円 × (納付月数432月+全額免除24月×4/8+半額免除24月×6/8) / 480月 = 785,400円
事例3 20歳~55歳(36年)は全額納付、56歳~59歳(4年)は全額免除
816,000円 × (納付月数432月+全額免除48月×4/8) / 480月 = 775,200円
事例計算のまとめ
国民年金加入者の方が最も注意したいのが未納です。
未納は受給資格期間にも入らないし、年金額計算の対象にもなりません。未納にするよりも免除を受ける方が望ましいことは言うまでもありません。
ただ免除を受けると、その分、老齢基礎年金は減額計算されます。
老齢基礎年金は65歳から一生涯で支給されます。
老後の期間が長ければ長いほど減額分の影響が大きくなるので、この点を国民年金保険料免除のデメリットとしてご紹介しました。
なお、免除を受けても10年以内であれば後から納付する「追納」という仕組みがあります。
この追納ににもいくつかのルールがあります。納付が可能であれば、ルールを確認したうえで利用されることをおすすめします。
国民年金保険料免除のデメリット2 上乗せの制度が利用できない
老齢基礎年金は65歳から終身で支給されるとはいえ年額で約80万円。
これで老後を過ごすのは難しいということで、いくつかの上乗せの仕組みがあります。
具体的には次の3つです。
国民年金(老齢基礎年金)の上乗せ制度
付加年金
国民年金基金
確定拠出年金個人型(iDeCo)
国民年金の上乗せ制度は、その前提として国民年金保険料を支払っているという要件があります。
免除制度は本体の国民年金保険料の全部または一部を支払わないということなので、免除を受けると上乗せの利用もできなくなります。
元々、上乗せ制度を利用していない方は、この点について考慮する必要はありません。
しかし、付加年金・国民年金基金・確定拠出年金個人型(iDeCo)に加入している方は注意が必要です。
もちろん免除を受けなければ生活が厳しくなるような場合は、免除制度を使うべきだと思います。
でも何となく使おうという方も中にはいます。このような方は、免除を受ける前に一度立ち止まって検討されることをおすすめします。
さいごに
国民年金保険料は所得の多寡にかかわらず一定なので、支払いが厳しいという方もいます。
そのような場合は未納にするのではなく、免除制度を利用することを積極的に検討するのがおすすめです。
国民年金保険料免除にはデメリットがあるのは確かですが、やはりメリットの方がずっと大きいのではないでしょうか。
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