赤い万願寺唐辛子の味
食べたことがないものを食べるのが好きだ。
先日、スマイル阪神で買ってきたのは、真っ赤になった万願寺唐辛子だ。ラベルには、「完熟、甘い!」と書いてあった。完熟ということはつまり、種ができあがるということだ。完熟のピーマンや甘唐の、あの種が口の中で主張しまくる感触を思い出して、一瞬躊躇したけれど、真っ赤な万願寺唐辛子を食べてみたい、という欲求が優った。
初めて食べるものは、できるだけそのものの味がわかるように料理する。唐辛子系といえば、フライパンでの蒸し焼きだ。オリーブオイルを入れて、万願寺唐辛子を入れて、フォークで穴をあけつつ転がして、大粒の塩をぱらりと振って、蓋をする。少し焦げ目がつくくらいがいい。ほんとうはそのまま塩だけで行きたいところだけど、恋人の好物のンドゥイヤ(辛い塩豚のペースト)の切れ端と、トマトペーストを少しだけ入れて、からめて仕上げて、冷蔵庫で冷やす。
初めて食べた真っ赤な万願寺唐辛子は、確かに甘かった。ンドゥイヤとトマトペーストで底上げされているとはいえ、旨みも強いと思う。恋人はどうしてこんなに美味しいのかわからないくらい美味しい、と意味不明な感想を言いながら、ノンストップで食べ続けてあっと言う間になくなった。種はそこそこ存在感があるけれど、でも、この甘みと旨みと引き換えならばいいかなと思える。
畑ではどれくらいの万願寺唐辛子が真っ赤になっているんだろう。私は今回初めてみたから、普通は流通させないんだろう。というか、赤くなるまで収穫できなかったのは、農家さんとしては失敗ということなのか。それとも、今回の真っ赤な万願寺唐辛子の出荷は、農家さんのある種の提案なのだろうか。赤くなったらもう規格外と思われるでしょうけど、完熟させたのも結構美味しいんですよ、と。せっかくの直売所だから、これからも規格外の美味しさにもっともっと出会いたい。