大企業の自己免疫性疾患
免疫:体内に病原菌や毒素その他の異物が侵入しても、それに抵抗して打ち勝つ能力(Oxford Languages)
以前にヘッドハンターとディスカッションした時に、外部からスカウトされる社長やCEO(つまり、企業にとっての本当のトップ)が直面する問題のひとつが、大企業のインクルーシブネス(受け入れるマインド)の低さであるという話になりました。これもある意味ダイバーシティ&インクルージョン的課題です。
一括採用ののち、終身雇用的に働く人材が大勢を占める企業に入り、「お手並み拝見」の空気が横溢する中で、「スカウト社長」はリーダーシップを発揮しなければならないわけです。
トップといえども異分子には違いありません。そこに、既存社員総がかりの排除のメカニズムが働くわけです。しかも、明確に意図しているわけではなく、まさに「アンコンシャス」。
私はこれを、「大企業の自己免疫性疾患」と呼びます。
普通、免疫システムは自分の身を守ろうとして機能するものです。しかし自己免疫性疾患は、自らを守るべきシステムが、自身の一部を敵と間違えて攻撃する病気です。この場合、病気を起こす「悪者」は自分自身の一部、つまり既存の幹部や社員であり、攻撃される対象は「スカウト社長」です。
外部から社長がスカウトされる大企業は、多くの場合業績に相当な問題が生じていたり、成長性に限界が来ているなどの問題を抱えています。その原因は、以前の経営トップにあることは間違いないと思いますが、間違いなく幹部や社員の責任でもあります。
新しく就任する社長は、そんな会社を立て直そうとしたり、良くしようと考えてやってきたわけですが、それを攻撃し、排除しようとするのです。
そういう冷ややかさをねじ伏せられる「プロ経営者」は、カルロス・ゴーン氏や原田泳幸氏のような、短期で業績のV字回復を実現できる経営者になりがちです。
いろいろと革新的な施策を打っているように見せますが、根底は強烈なコストカッターというタイプ。
彼らが会社から去った後には、「ペンペン草も生えない。」状況が残されることも少なくありません。V字回復を実現したというよりも、実現できたように見せることができる、という方が正しいのかもしれません。結局のところ、社員側も不幸になるケースが少なくありません。
それ以外のタイプ、中長期的に会社を再建し、成長軌道に乗せようとする「プロ経営者=スカウト社長」が幹部や社員の受入マインドの低さのせいで力を発揮できなければ、幹部や社員は自分の首を絞めているに等しいと言えます。
異分子を受け入れられないメンタリティとして、「身内(ウチ)」と「外(ソト)」を分けるマインドが染みついてしまうと、異質の文化を持つ外部の人々や他社との間でオープン・イノベーションを生みだす能力の欠如にもつながります。自社の常識から抜け出せず、コラボレーションもうまくいきません。
この問題を解決する第一歩は、身内に対するオープンなマインドセットを持つこと、身内になろうとする者に対するインクルーシブネスなのです。
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