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ヒストリー⑲その先へー・2008年7月

479ページの白書 1万部に


ライフリンクが、弁護士や経済学者、精神科医や自死遺族支援団体らとチームを組んで進めた「自殺実態1000人調査」は、自死遺族の方々から直接聞き取りをしていく未踏のものでした。

一人あたりの平均聞き取り時間は2時間30分に及びました。自殺で亡くなった305人についての聞き取りが終わった段階で整理・分析して「自殺実態白書2008」にまとめ、岸田文雄・内閣府特命担当大臣(自殺対策・当時)に提出しました。白書は大きな反響を呼び、自殺対策を大きく前進させていきます。

今回の聞き取り調査によって、自殺の理由は一つではなく、平均で四つの要因が連鎖していることが明らかにされました。
自殺に関連する「危機要因」は
①うつ病②家族の不和③負債④身体疾患⑤生活苦⑥職場の人間関係⑦職場環境の変化⑧失業⑨事業不振⓾過労ーーの順に多く、
上位10項目で全体の7割を占めていました。

それぞれの要因は互いにつながっており、「事業不振→生活苦→多重債務→うつ病」といった経路をたどっていたのです。
自殺が追い込まれた末の死であることをデータで明らかにしました。

さらに、調査は初めて全国の自治体の「自殺の地域特性」を浮かび上がらせました。
それぞれの自治体において、どういった年代・性別・職業等の人の自殺が多いのかを詳らかにしたのです。
具体的には、例えば東京都千代田区は40代の被雇用者の男性、大阪市西区は40代の自営業者の男性、熊本県合志市では40代の無職の男性がそれぞれ最も多くなっているなど自治体ごとの特徴を明示し、対策を迫りました。

自殺対策基本法ができても、現場の自治体からは「何から手をつけていいのかわからない」という戸惑いの声が多く出ていました。
全国の都道府県を回った「自死遺族支援全国キャラバン」に加え、この調査によって市町村は自殺の問題と具体的に向き合う手掛かりを得ることになりました。

479ページの白書の発行部数は1万部に上りました。 
                                                      =続く 次回は、⑳2009年3月編「行政をチェックする」です。


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