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きょう心にしみた言葉・2023年12月4日

「『人に迷惑をかけるな』という社会が一番疑わないルールが君たちを縛っている。君たちは、普通の人が守っているルールは、自分たちも守るというかもしれない。しかし、私はそうじゃないと思う。君たちが、街へ出て、電車に乗ったり、階段を上がったり、映画館へ入ったり、そんなことを自由に出来ないルールはおかしいんだ。いちいち後ろめたい気持ちになったりするのはおかしい。私はむしろ堂々と、胸を張って、迷惑をかける決心をすべきだと思った

NHKドラマの「男たちの旅路」シリーズの『車輪の一歩』から

2023年11月29日、脚本家の山田太一さんが亡くなりました。数々の傑作ドラマを生み出した山田太一さんですが、昭和51年(1976年)から放送が始まったNHKの土曜ドラマ「男たちの旅路」は、今なおドラマの中の珠玉の言葉が語り継がれています。「男たちの旅路」は、警備会社を舞台に、鶴田浩二さん演じる特攻隊の生き残りでのガードマンを主人公の物語です。

冒頭の言葉は、今ほどバリアフリーが進んでいなかった昭和54年(1979年)に放送された『車輪の一歩』の中のセリフです。1人では電車やバスに乗れず、タクシーには乗車拒否され、アパートも貸してもらえない車いすの人の悩み。その現実を目のあたりにした鶴田浩二さんは青年たちを手助けするようになります。そして、どう生きるべきか悩む車いすの青年に優しく諭します。

「人に迷惑をかけることを怖れるな」と。

ドラマのラストシーンは、今のようにエレベーターやスロープもない駅の階段が舞台です。障害があることで引きこもりがちだった車いすの女の子が、周りの人たちに対して、勇気を振り絞って、「どなたか…私を上まで上げてもらえませんか」と、大きな声で叫びます。そして、それを聞いた大人たちが車いすを担いで階段を上がるところで、エンディングを迎えます。

「人に迷惑をかけることを怖れるな」。この言葉が、駅のバリアフリー化を進める大きなきっかけにもなったと伝えられています。ドラマのセリフも、社会を動かします。言葉の力です。



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