勝又康仁 人事と組織開発 HR&OD

“だれもが自己実現できる社会をつくる”。 エン・ジャパンで評価・教育サービス責任者。専門は、組織、人材開発。2022年春、茅ヶ崎移住。Ua値0.29、C値0.2の家。ここでの発言は個人の見解であり所属組織とは関係ありません。

勝又康仁 人事と組織開発 HR&OD

“だれもが自己実現できる社会をつくる”。 エン・ジャパンで評価・教育サービス責任者。専門は、組織、人材開発。2022年春、茅ヶ崎移住。Ua値0.29、C値0.2の家。ここでの発言は個人の見解であり所属組織とは関係ありません。

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組織開発のレベルを高めるためにぼくが実践してきたこと

組織開発はアートである。このことは、以前にnoteに書いたことがある。 組織開発は多様な課題を対象としており、多様なアプローチをとるものだからこそ、その実践の輪郭はぼんやりとしており、曖昧である。妥当性が高いと思われたソリューションは想定した成果を出せず、むしろ、思いがけない副産物が生まれたり、あるいは、思いがけないアイデアが想像以上の成果を生むこともある。まったく思い通りにいかない。そういう意味で、ぼくは組織開発をアートという言葉で表した。 そして、このことが組織開発の

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    • 知らないことは実践できないという当たり前の話

      人的資本トレンド、人手不足といった状況から、人材投資はこの2年ほどで大きく高まっているように思える。おかげさまで、組織開発、人材開発のコンサル仕事は着実に増えている。コンサル商売は労働集約なので、人を採用して育てないと売上はあがらない。売上は120%成長だったとしても、実際の生産性は人材育成の時間を含めて140%とか、150%挙げねば達成できない成長率である。 そういう商売をしていることもあって、人の成長は欠かせない事業成長のピースである。一方で、びっくり仰天するニュースが

      • ほとんどのコンサルやコーチはプロじゃないって話

        最近、プロとは何かについて考えている。年齢、経験的にも十分なキャリアを歩んでいるはずなのにプロフェッショナルとしては程遠い。そう思う機会が多いのである。 「プロ」ってなんだろう。GPTさんに聞いてみた。「プロフェッショナル(professional)」という言葉はラテン語の”professio”から派生し、「公に宣言する」や「特定の技術や学問に従事する」という意味を持っていたらしい。現在、ビジネスシーンで使われる「プロ」は後者の意味に近く、その道のことは何でも知っている「専

        • 上司の期待に応えるという病

          期待という言葉は日常だけでなく、ビジネスシーンでもよく聞かれる。上司として期待を部下に伝える。上司からの期待に応える。といった具合に。ぼくも、部下に期待を伝えることは度々だ。こうなってほしい、ああしてほしい。といった具合に。 社長以外の全員が上司という存在と対峙する。そして、経営には方針があるという点で、その方針に則った上司からの期待に応えることは、働く人にとって重要事項である。上司からの期待に忠実で、その期待に応える人物が会社で評価される。ましてや、上司の期待に背くという

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        • これからの人材・組織開発の話をしよう。
          45本
        • 時の流れに漂うエッセイ
          31本
        • Pick Up notes
          73本
        • この世界から“生きづらさ”をなくす
          18本
        • はたらく人の心の省エネマガジン
          7本
        • 茅ヶ崎移住記
          4本

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          フィードバックが生み出す無能感

          人の成長にはフィードバックが重要であると言われる。フィードバックは当人の立ち位置を知らせ、その立ち位置から今後向かうべき方向性や改善を促す情報元になる。ビジネスパーソンはつねに成長を求められる。成長に向けた情報源としてフィードバックは貴重なものだ。フィードバックは栄養であり、成長に向けた材料になりうるものだ。 でも、ほとんど場合、そううまくいはいかない。どううまくいかないのか。フィードバックが成長への情報源にはならず、むしろ、当人の無能感を深めてしまうという問題だ。フィード

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          なぜか世界が味方をしてくれない、そんなときは

          成功しようともがいて、頑張っている人が、なかなかその果実を得られない。なぜか、掴みたいものが掴めない。自分の人生はなぜこうもうまくいかないのか。なぜ、世界は味方をしてくれないのか。日々、たくさんの人と関わる中でときどき見かける光景だ。 ほしいと思っているうちは、永遠に手に入らない、心理学においても言われることである。成功したい、成功したいと思っているうちは、「成功した!」とは思えない。相手から愛されたい、愛されたいと思っているうちは、「自分は愛されている」とは思えない。願望

          なぜか世界が味方をしてくれない、そんなときは

          子どもの成長とダイナミックスキル理論、あるいは対人支援者に必要なマインドセット

          毎週土曜日は長男の体操クラブの見学が習慣である。長男の頑張りや成長を見るにつけ、親としては単純に嬉しいものである。 とはいえ、その成長は一直線に進むかといえばそうでなはない。上手に体技がうまくいくこともうればいかないこともある。選手ができたことが今週はできなくなったり、ずっとできなかったことが一気にできるようになったりする。成長したり、ときに停滞、沈滞し、急激な成長を見せたりする。人の成長とは直線的なものではないのだ。 このことを理論化したのがカート・フィッシャーだ。氏が

          子どもの成長とダイナミックスキル理論、あるいは対人支援者に必要なマインドセット

          心的外傷を乗り越えられる社会づくりを

          心的外傷後成長(Posttraumatic Growth、PTG)という概念がある。心的外傷後成長とは、困難な経験や危機的な出来事からポジティブな心理的変化を遂げることを指す。米国心理学者であるリチャード・テデスキ氏とローレンス・カルホーン氏によって提唱された。 心的外傷後成長を遂げると、次のような変化があるという。 人生への感謝 内面的な強さ 他者との関係の深まり 新たな可能性の発見 人生や仕事の優先順位の変化 自分の人生に新たな意味や目的を見つける ぼくは

          心的外傷を乗り越えられる社会づくりを

          人間関係の悩みはコミュニケーションスキルだけではどうにもならない問題

          人の悩みのほとんどは人間関係にまつわるものだ、偉大な心理学者はかつてそういった。組織開発に携わっているぼくとしても、社内の関係性にまつわるクライアントの悩みは深く首肯するところだ。そのため、コミュニケーションスキル向上をテーマとしたワークショップは枚挙にいとまがない。 その一方で、コミュニケーションスキルがほんとうに関係性の悩みを解決につながるのかについては、よくよく緻密に検討する必要したほうがよいと思っている。ほんとうにスキルだけで関係性の課題を解決できるのだろうか。

          人間関係の悩みはコミュニケーションスキルだけではどうにもならない問題

          唯識と成人の発達理論

          2024年下半期以降、三島由紀夫の小説をひたすら読んできた。『仮面の告白』、『金閣寺』といった有名どころはもちろんのこと、『英霊の声』、『鏡子の家』、『豊饒の海』全4巻などである。それ以外にも積読にはなっているが『太陽と鉄』、『美と共同体と東大闘争』など読み進めているものはまだあるのだが、平野啓一郎の『三島由紀夫論』を最後には読み切っていったんの区切りをつけるつもりだ。 ぼくが三島由紀夫を知ったのは、宮台真司の対談番組を見たのがきっかけだ。「からっぽ」をキーワードに宮台が三

          頑張らなければ生きれない社会とHRtech

          41歳の誕生日を迎えた。ぼくは誕生日というものに特別な意味を見出したり、プレゼントをねだったり、そういう性質ではないのだが、これまで生きれたことに、または、奥さん、子宝に恵まれたことに、当日の朝、しみじみと思いを馳せてみた。特に、ふたりの子どもは間違いなく、ぼくにとっての大きな生きがいだ。ふたりの横顔を見ながら、頑張ろう、と思えた。 頑張ろう、というのは不思議である。頑張って生きること。頑張らなければ生きられないこと。頑張らなくてもよい社会は構築可能か。あるいは、頑張らない

          頑張らなければ生きれない社会とHRtech

          結局、組織はトップ次第であるという言説と品性(インテグリティ)について

          結局のところ、組織はトップ次第である。組織のビジョン実現を妨げているのは、ビジョンを掲げている当の本人、組織のトップであることは少なくない(ように思われる)。つい、先日も同僚と、「なんとなくあの組織のトップは信用できない。組織の求心力を弱めているのは、当の本人ではないか」、そんな話になった。こうした話は、特別、ぼくのような人材・組織開発コンサルまわりだけのものではなく、みな働いていれば、実感のもてる話ではないだろうか。 組織のトップはもっともパワー(権限、影響力)をもってい

          結局、組織はトップ次第であるという言説と品性(インテグリティ)について

          【日本的組織開発論】『失敗の本質』に見る日本軍の集団主義的傾向と河合隼雄の「場の論理」

          『失敗の本質』を再読した。先日のnoteで触れた河合隼雄「場の論理」に関連して、さらに思考を深めるために、何かヒントが得られるのではないか、と思ってのことだ。 河合の「場の論理」とは、「与えられた「場」の平衡状態の維持にもっとも高い倫理性を与えるもの」であった。「場の中に「いれてもらっている」かぎり、善悪の判断を超えてまで救済の手が差しのべられるが、場の外にいるものは「赤の他人」であり、それに対しては何をしても構わない」という。 では、『失敗の本質』ではどのようなことが述

          【日本的組織開発論】『失敗の本質』に見る日本軍の集団主義的傾向と河合隼雄の「場の論理」

          組織はメンタルモデルで動いている

          個々人の異なるメンタルモデルが組織開発の障害になる。最近、そう思うことが増えた。特に、組織間の利害を調整しつつ、組織として一貫した戦略をもち、もっとも組織のパフォーマンスを最大化する。組織開発をそう定義した場合、上記の仮説が立ち現れる。 組織間の利害を調整するとはどういうことだろうか。たとえば、よくあるのは営業と製造現場でのやりとりである。営業は製造された商品が売れない、と主張し、反対に製造部は営業力がないから売れないと主張する。営業は製品に対する顧客からの細かい要望に丁寧

          組織はメンタルモデルで動いている

          なぜ、組織開発はうまくいかないのか~レヴィンの場の理論と河合隼雄の場の論理から考える~

          組織開発にすこしでも関心がある方は、クルト・レヴィン(Kurt Lewin)の場の理論(Field Theory)を知っている読者も多いかもしれない。レヴィンは、社会心理学者であり、グループダイナミクスや組織変革の研究で知られている。彼の場の理論は、主に個々の行動やグループの行動を特定の社会的な状況や「場」の中で理解しようとするものだ。 レヴィンの場の理論は、**B = f(P, E)**の式で表される。「B」は行動(Behavior)を指し、「P」は個人の性格や特性(Pe

          なぜ、組織開発はうまくいかないのか~レヴィンの場の理論と河合隼雄の場の論理から考える~

          組織開発はなぜ難しいのか

          20年と組織開発に携わってきたが、つくづく難しいなあ、と思う。どうすれば、組織は変わっていくのか、機能するのか、どの手法が最善なのか、と頭を悩ませ続ける日々を送っている。が、今だ明瞭な答えは見いだせない。あまりにも難しいせいで、そもそも組織に対して、少なくとも外部のコンサルタントという立場では、変化を起こせないのではないかとも思う。2020年にぼくたちの働き方を変えたのは、組織開発ではなく、新型コロナウイルスだった。あのときほど、無力を感じたことはない。ぼくはなぜ外部コンサル

          組織開発はなぜ難しいのか