「ライフジャケット」について”流通量”の視点から考えてみる。
毎年、シーズンになると水辺の事故が報道されます。この水辺の事故を防ぐための手立てとして、効果的だということで、広がりを見せているのが「ライフジャケット」です。
水辺の事故が起こった時に、「なぜ『ライフジャケット』を着けていないのか?」とか「『ライフジャケット』を着けておくべきだった!」という声が挙がることがよくあります。確かにその通りなのです。今日はあえて”流通量”という視点から、「準備をすること」についてまとめてみたいと思います。
「子どもたちにライジャケを!」では、子どもたちの水辺の事故について、3つに分けて考えることにしています。
①子どもだけで水辺に遊びにいく時に起こる事故。
②家族で遊びに行っていて起こる事故。
③学校や園、子ども会などで水辺に遊びにいく時に起こる事故。
全員が準備できるとすれば、いくつの「ライフジャケット」が必要なのかをイメージしてみる。
今日は、「『ライフジャケット』を準備するべきだ!」という声がもしも叶って、小学生が「ライフジャケット」をしっかりと準備できたと仮定して考えてみたいと思います。全員が準備するためには、一体いくつの「ライフジャケット」が必要になるのでしょうか?
先ほど、3つに分けた事故の①と②は、準備するのは家庭の保護者ということになります。必要な数は子どもたち全員の数。2021年4月1日現在で、12歳未満の子どもの数は「1169万人」(総務省資料「我が国のこどもの数」より)。つまり、必要な数は「1169万個」です。
3つに分けた事故の③については、今回は学校と園に絞って考えてみます。準備するのは、学校や園の管理者です。令和2年5月1日現在で、小学校が約1万9500校、幼稚園が9700園、幼保連携型認定こども園が5800園。合わせて、約2万5000校(園)です。(文部科学省「文部科学統計要覧(令和3年版)」より)仮に、各学校(園)が100個ずつ購入するとしたら「約200万個」必要になります。
つまり、先に3つに分けた事故を想定し、「ライフジャケット」をつけるために準備をすると、1000万個以上の「ライフジャケット」が必要になる…ということです。予算はさておき、もしも夢が叶って、全ての「ライフジャケット」の準備が整う…ということになった時に、それだけの「ライフジャケット」を準備できるでしょうか?
おそらく、答えは「NO」でしょう。今年、いくつかのメーカーに生産量を尋ねてみたのですが、間違いなく、現在それだけの数の「ライフジャケット」は流通していません。「ライフジャケット」は必要だから来シーズンに向けてすぐ生産を!というのも、おそらく難しいでしょう。来シーズンの分の生産量は、もう今の段階ですでに決定しているはずです。つまり「来シーズンもそれだけの数は流通しない」ということです。
”流通量”が不足していると起こることは?
「ライフジャケット」が必要な人は、シーズンまでに購入することがオススメです。このことは、毎年シーズン前に言われます。理由は、この”流通量”です。つまり、シーズンが始まってしまうと、ほとんど売り切れてしまうので、なかなか手に入れることができないからです。
これまでは、それほど一般的ではなくて、水辺で遊んでいる人や水になじみがある人が着用するものだったこともあり、そんなにたくさんの数は必要なかったのですが、最近になってだんだんと広がってきていることも要因です。
この状態は、関心の高い人やよく知っている人が「ライフジャケット」を入手できて、あまり関心のない人やよく知らない人が「ライフジャケット」をなかなか手に入れることができない…といった構図が生まれてしまいます。そして、また「なぜ着けていないのか?」という議論が起こります。
着けていないのは、もしかしたら「『ライフジャケット』がない!」というのが理由なのかも知れません。おそらく、この”流通量”が十分にならなければ、「『ライフジャケット』を着けるべきだ!」ということは達成できないのではないかと思います。「ライフジャケット」のことが広がってきた今、このままいくと、関心のある人とそうでない人のギャップは広がっていき、さらに関心のある人がそうでない人に「なぜ?」を突きつけるという構図がなくなっていかないと思っています。
では、どうすれば、この”流通量”を増やしていくことができるのでしょうか?
”流通量”を増やすための方策のアイデアを考えてみる。
メーカーがしっかりと生産をするためには、「売れる」ことがはっきりしていることが必要になります。確かに、大量の在庫を抱えるリスクを負ってまで、なかなか生産を増やすことはできないでしょう。
この悩みは、これまであまりニーズがなかった「ライフジャケット」がだんだんと広がってきたからこその悩みだど思います。現段階では、来年度に一体どれだけ「売れる」のかがなかなかイメージできないのが現状なのです。これは、今後しばらくは続いていくことになると思います。
おそらく、確実に”流通量”を増やすためには、おそらくある程度のシステムが必要になると思っています。もう一度、先ほどの事故を3つに分けたものを示しますね。
①子どもだけで水辺に遊びにいく時に起こる事故。
②家族で遊びに行っていて起こる事故。
③学校や園、子ども会などで水辺に遊びにいく時に起こる事故。
この3つの中で、確実にできそうなのは、③だと思っています。学校や園、子ども会などで使える「ライフジャケット」を準備することです。各学校や園が準備するとなると、1000万個以上の「ライフジャケット」が必要になり、現実的ではありません。
そこで提案したいのが、自治体による「ライフジャケット・レンタルステーション」の設置です。自治体が、学校や園、子ども会などが使うときに「ライフジャケット」を借りることができるようにする方法です。この方法はすでに香川県、香川県坂出市、愛媛県西条市などで導入され、活用されています。
46都道府県に100個ずつ導入すれば、4600個。
約1700ある市町村に100個ずつ導入すれば、17万個です。
一気に導入するのは難しいと思うので、できるところから導入していけば、日本全体の「ライフジャケット」の”流通量”は増えていきます。香川県では、県内の企業からの寄贈によって100個の「ライフジャケット」をレンタルしていただいていますが、1つ5000円とすると50万円です。そんなに高いものではありません。香川県坂出市では、市内の企業や市民からの寄付で設置されています。こういった動きが広がっていけば、メーカーも、思い切って生産を増やすことができるのではないでしょうか?
今、各地で、お住まいの自治体に「ライフジャケット・レンタルステーション」を導入しようと動いてくださっている方がいます。もしよかったら、皆さんもぜひご協力をよろしくお願いします!興味ある方は、過去の記事をぜひ!
いろんなアイデアで、”流通量”を増やしていくことで、子どもたちの命を守る…”流通量”という視点でも、ぜひ「ライフジャケット」を広げていってみてはいかがでしょうか?他にも、こんな視点は?ってことがあれば、ぜひお知らせくださいね!お待ちしております!
思いはただ1つ…子どもたちの命を守ること。
「子どもたちにライジャケを!」
http://lifejacket-santa.com/