日記 2020/08/27 『重版出来』について

Amazon Prime Videoで『重版出来』のドラマにハマってしまい、その後TSUTAYAでレンタルで借りられる分だけの漫画を借りた。

ドラマだけでなく、漫画もとにかく面白く、漫画家がどういったテクニックを使っているのか、どんなことを考えているのか、またその周りの編集者たちがどのように漫画家を支えているのかなど胸熱になる話ばかりで、ドラマを観ていても漫画を読んでいても何度も泣きそうになった。

それ以外にも、漫画や活字本で使われるフォントの話だったり、校正の話だったりは、活字本が好きな僕にとっては一番興味が惹かれるところで、それこそ三輪社が出した『本を贈る』と通ずるところがあるように思う。
普段本を読んでいてほとんど意識することのないこういった話だけれど、一度知るとどんどん興味がわいてくる。特にフォントの話では、出版社によって使われているフォントが違うこと、要望に応じて一からフォントを作る職人さんがいることなど、初めて知ることがいろいろとあって面白かった。今まで気にすることもなかったが、改めていろんな本を見比べると本当にフォントが違っている。
これは既に知っていたことだが、一昨日の日記で紹介したODD ZINEでは、各エッセイごとに使われているフォントが違う。
普段フォントに意識することがないということは、フォントが邪魔になることがなく本を読み進めることができているということだが、ODD ZINEのようにページごとに違うフォントだと、どのページも読み始めに必ず違和感を覚え、それがなんというのか新しいエッセイを読むにあたっての意識付けのようなものになっている。書き手とともにフォントも変わるので、スイッチを切り替えるような明確な切り替えになり、視覚を通してまた新しいものを読むのだと意識せざるを得なくなる。
フォントは普段意識化にあるからこそ、読む際に与える影響が大きいということだ。フォントのことを知ることで、手元にある本にも別の楽しみ方が出てくる。

14巻では小さい本屋を作るという話があった。
ミシマ社の本や、辻山良雄の『本屋、はじめました: 新刊書店Title開業の記録』、大井実『ローカルブックストアである: 福岡 ブックスキューブリック』など、本屋を作った人の話が大好物である僕は、このエピソードを応援しながら読んだ。

本当に読みどころ満載の漫画である。

しかし漫画を読んで改めて思ったことが、ドラマ版の素晴らしさだ。何よりその配役のはまり具合がすごい。

漫画が原作なのだから、漫画よりドラマが先行しているはずはないのだが、五百旗頭とオダギリジョーの類似性たるや、ただ似ているなんてものではない。そのまんまである。オダギリジョーを漫画化した結果が五百旗頭なのではないかと思われるほどだ。でもさぁ、普通マンバンヘアにしてあんなにオシャレに、知的に、上品になります?(知的に、上品にってところが大事)

高畑役の滝藤賢一。漫画の高畑よりも滝藤賢一の方が男前ではあるが、ある点において滝藤と高畑は同じである。それは小尻であり美尻であること。ドラマで美尻が映るシーンがあって、あぁきれいなお尻だなぁとは思ったのだが、そのときなぜにケツを映す?とは思った。漫画を読むと高畑は美尻男性として描かれていて、この美尻を見せたいがために滝藤さんにしたのだと思うと納得した。滝藤さんはかなりの美尻である。そのことを知ってキャスティングしたのだろうか。美尻キャスティング。

最後に中田伯役の永山絢斗。ドラマを観たあとに漫画を読んだせいで、中田伯はもはや永山絢斗にしか見えない。
狂気と無器用さ。うつむきがちなところ、猫背、目力。漫画で中田伯が出てくると、完全に永山絢斗の顔と声が頭に浮かんでいる。

レンタルでは14巻までしか借りられなかったから、最新刊の15巻は電子書籍で購入した。15巻もとても面白かった。今後は電子書籍で買っていくし、これまでのも全て電子書籍で購入するか迷っている。

ところで、この日記を書きながら、『本を贈る』もドラマ化したらいかほど面白いだろうかと考えた。『本を贈る』で書かれているエピソードはどれもドラマティックである。今のご時世、本に関わること自体が挑戦になっているからだろう。

人々は本を読まなくなった。紙の本が売れなくなった。出版業界ではいろいろと言われているようだが、『本を贈る』や、辻山さん、大井実さん、ミシマ社などローカルの本屋、出版社で働いている人の生き方を知ると、僕たちが普段手にしている本に関わっている無数の人々の生き方は、とても挑戦的で生き生きとしていることがわかる。それは出版業界が不況だと言われているからこその、そこからどうにかしようとしてもがき、挑戦しては失敗し、でも確実に歩み続け、そこで様々な人々との関わりがあってと、常に状況が動き続けて、いや動かし続けているからだと思う。

重版出来を通して、改めて本の世界の奥深さを知った。

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