私が1番好きなアニメ『Sonny boy』の話をしよう
『Sonny boy』は数あるアニメ作品の中でもかなりユニークだと思う。
一応分類としては「青春」「SF」「超能力」「異世界」あたりにカテゴライズされるのだが、これらの要素はあくまで舞台設定であり、本題と直接的に関わってくるわけではない。異世界転生した先で可愛い女子学生達に囲まれながら超能力に目覚めて無双する、みたいな展開とは程遠い作品である。
私は、思春期における「輝かしい青春と、成長していくにつれて直面する社会の不条理さに対する葛藤との二面性」を描いた作品だと思っている。
若い頃は自分自身に対して無限の可能性を見出すことができる。しかし、段々と「自分の力じゃどうにもならないこと」に気づいていく。現実を見る、と言い換えてしまうとあまりにも残酷だが、そういうことである。不条理な現実と何者かになりたい自分、それらの間で折り合いをつけていくことが大人になるということなのだ。
物語を通して、主人公が世界を劇的に変えるわけではない。寧ろ、「世界は変えられない」という現実がひたすらに強調される。だが、自分の選択次第で世界の見方は変えられるかもしれないという一抹の希望も与えられる。これはまさに大人になり、社会に出ても尚縋っていられる唯一且つ最大の希望なのではないだろうか。
学校という保護された安全地帯で、超能力を与えられた生徒たちそれぞれが成長という受け入れ難くも受け入れるしかないものと向き合う様子が、この作品が描く青春なのだと私は解釈する。
BGMはほぼ無く、シンプルな絵柄とベタ塗りの背景。設定が複雑な割にあまり説明はされない。難解に感じられるかもしれないが、思春期の頃の自分を振り返ってみてほしい。矛盾や葛藤といった複雑性を孕んだ不安定な心象がそのままに表されている。学生時代などのモラトリアム期に観て、それを脱してから再度観返すことでより味わい深くなりそうな作品だ。BGMは少ないのだが、挿入歌がとても良いのでそちらも是非。