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初めてのカッピング・下

つづき。軽い気持ちで予約したカッピングを施してくれるサロンは片言のアジア系の女性が担当してくれた。

問診票みたいなものを書き終えて、質問に答えると、奥の施術室に通された。裸になって紙パンツを履けという。おお、これも初体験。言われた通りに着替えて、うつ伏せに寝転ぶ。

まずは背中。コップのようなガラス製の用具で、痛いか聞かれながら背中を擦られる。しゅっぼっと火をつけるような音、ふっと吹き消すような音を聞きながら、コップが肌を吸っていくのを感じる。

たまに痛い。我慢できそう。いや無理かも…と逡巡している間に、後戻りできないところまで背中にコップが張り付いている。最初は張り付いているひとつひとつのコップの感覚があるんだけど、時間を置くとわからなくなってくる。境目が曖昧になって、甲羅を背負っているような気分。

15分後に全部外すと、次は下半身。

こちらも痛い、いやまだなんとかなる? コップが肌を引っ張るので、腰がつりそうだなあとバランスを取りつつ、15分。下半身は裏から表へ。張り付けられるコップが増えるにつれて身動きが取れなくなっていく。結構な拷問を受けているような気分になるけど、なんとなく、背中は軽く感じ始めていた。

すべて終えて、服を着るときに鏡を見た。肩と背中は赤紫の丸いアザだらけ。どひゃー! キリンといえばかわいいかもしれないけど、なんだかカッパみたい。大昔に草間彌生が着ていた水玉の全身タイツを思い出す。

膝下は不思議なことに、ほとんど跡がない。

背中も脚も軽い。ピッタリしているジーンズを履いてきたけど、少し余裕が出ていた。

アザは2週間ほどで消えるという話だった。不思議だったので、カッピングの根拠をネットで調べた。

かいつまんで説明すると、まず医療行為では無い。肌を吸い上げることで、肌表面に血を集め血行を促進するという理屈のようだ。どういう成分の血液なのかわからないけれど、「於血」と呼び、それが多い人ほど赤紫色のアザが出現するし、カッピングを繰り返せば薄いピンクに変わっていくらしい。

私の背中は血液が滞留しているということ?と理解した。血の巡りが悪いというやつなのかな。

担当してくれた女性が気になる言い方をした。「ハッキリ言うね。ストレス溜まってるね」どんな人にもストレスはあるでしょうと思って聞き流したけど、ストレスは放置すればメンタルに影響を与える。

ストレスというのは、血行が悪いということなのか。ストレスも心の病も、目には見えないものだから、解決策を気の持ちようとか根性論に持っていきがちだけど、現実には身体の中でなにかバグが起きている。

血行を良くするというのも、メンタルを守るためには有効の一手なのかもしれない。

少し身体が軽くなった私はそんなことを考えていた。そして次の日からもっと驚くことになる。

1日目はぐっすり眠れた。2日目は目覚ましが鳴る1時間前に目が覚めて、眠いだるいということもなく起きれた。3日目は早起きする用事があって、起きれるか不安だったけど、しっかり起きれた。

なんだこれ。朝の気だるさがない。

カッピングについては、科学的根拠があまりないというのだけど、こんなに寝起きが変わるなら、また行きたいと思う。

ただ…まだ赤紫な斑点が無数に残っているので、いつ消えるのか途方に暮れている。

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