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私史上最悪のブラック会社の話

ひと口にブラック会社と言っても、さまざまなタイプのブラックさがあると思う。

10年以上前に、生まれ育った土地を離れて首都圏に引っ越した。当時の交際相手と一緒に暮らすためだ。転職先を決めてから、引っ越したわけだけど…。

当時の支社長がとにかく怒鳴る人だった。女性には怒鳴らないんだけど、営業の男性に怒鳴る怒鳴る。

同僚のなかに、元カレからDV被害を受けたことのある女性がいて、トラウマがフラッシュバックすると限界が来た。直属の女性上司が味方について、話し合って改善されることになった。

私は頭の芯が冷えているのか、女性には怒鳴らないのもある種の差別なんじゃないかとか真面目に考えていた。女にはやっちゃいけないことは、男にもやっちゃダメだろ。とか思っていたら、いつのまにか「パワハラ」「モラハラ」という性差関係ないハラスメント用語が生まれていたけど、当時にはまだなかった。

女性上司も怒鳴り声に過呼吸を起こしたことがあるとか言っていた気がする。そんな2人の絆が深まるのを見つつ、疎外感を持っていた。

私がいないところで、支社長が私を侮辱するようなことを言っていたと聞いて、当時の私はまだ血気盛んだったので、言いたいことがあるなら面の向かって言えと丁寧に話したら「共産主義的な考え方をしてる」と言われて、この世の中にはめちゃくちゃ明後日な価値観で生きている人間がいるのかと衝撃的だった。

私の「言いたいことがあるなら面と向かって言え」は「男のくせに何してんだよ」という意味もあったのだが。

支社長という人の継父は、共産主義者で何か色々あってアルコール依存症で亡くなっているらしい。社長が実の兄で、そんな話をしてくれた。私に継父を見たのかしら?

不思議な兄弟で、元々は西のほうで一緒に起業して、喧嘩別れして弟のほうが東へ。弟には経営能力が乏しかったのか、運が悪かったのか借金だらけになって、兄に助けてもらって会社合併。それで支社長という肩書きになった。

いろんな事件があった。営業トップとその腰巾着が「いっせーのせ!」で辞めて大混乱事件とか。それでもなんとかなったので、「突然辞めることで会社に一矢」と考えている人はやめたほうがいい。1、2人辞めたところで会社の混乱は一瞬で、すぐに忘れ去られる。

もう絶対辞めると決めた大事件は、無料サービスと私たちには言っていた仕事が、古参の社員と結託し、実は請求していて支社長が潰した会社の借金返済に使われていたこと。なにか段取りを間違えたのか、お客さまから私がお金を受け取ることになってしまった。「なんで?」

経緯は古参社員から聞いた。古参社員も腐れ縁を切りたかったのかもしれない。

領収書をコピーして、辞めるときに社長に送りつけようかと思ったけど、面倒臭くなって退職日にシュレッダーにかけた。もらった花束や贈り物は、最寄駅のトイレで忘れたふりをした。3年がんばった結果がこれだった。

話は少し遡り、引き継ぎした新入社員の女性は、真夏に長袖スーツを着ていた。一緒に外回りに出てお昼で一緒にランチした。彼女が上着を脱ぐと、左腕に無数の傷があった。DVが原因で離婚していて、元夫はストーカーになっているというような話をしていた記憶がある。

なぜこの会社は心になにかしらの傷を負った女性ばかり集めているのだと思ったけど、辞める会社だと思って忘れることにした。

無意識なのか意識的なものなのかわからないけど、支社長が共依存にしやすそうな人を選んでいたのかもしれない。件の古参の社員を愛人と噂する人が何人かいた。その人もシングルマザーで2人子育てしていて、ご近所から児相に通報されたとか香ばしい話をする人だった。ある日、パソコンを借りたら検索履歴に「境界性人格障害」というワードを見てそっと閉じた。自分のことか支社長のことか。

もっとサラリと書くつもりだったのに、気付いたら高カロリーになってしまった…。

私はこの会社でブログを書いていた。いまでも読める。辞めてから10年経った。ふと気になって会社のHPを見てみた。

会社の総会だろうか。集合写真を見つけた。社長、支社長。当時の同僚の姿が見えない。昔はそんな大規模な総会はやっていなかった。遡ってもいない。支社長だけ変わらず社長の傍らにいる。

私やあのときあの会社にいたあの人たちは、あの会社が正常経営になるまでの捨て駒だったのかもしれない。ふざけた話だ。

いま勤めている会社も大概ふざけているんだけど、あの会社のおかげで心のバランスを取ることに重きを置いて何とかしている。

「多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ」という書店で見かけた本のタイトルは、とてもいいタイトルだと思う。中身は読んでないけど。私がこんなnoteを書いても「爆弾を渡されて、どこかに1回落としていいよと言われたら××(あの会社があったエリア)に落とします」なんて言っていても、あの会社にはなんの損害も与えることはできない。

なので私も、他人からもたらされるイライラは、好きなもの食べて飲んで、忘れるのが一番だと思っている。

この会社での後遺症は、支社長が堺雅人に似ていたので、堺雅人主演のドラマや映画を観る気にならないことだ。堺雅人に罪はないけど「リーガル・ハイ」の再放送を見た日に夢に出た。私にはきっと、「半沢直樹」を観る日は来ない。

分割しようと思ったけど、こんな話のために分割してたまるか!という気持ちになったので、このまま。

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