畳んだカレンダーの上で
久々に新潟に帰って、次兄の持ち家になった実家に泊まった。次兄は長期出張が多い人なので、タイミングが合わないと、新潟に帰ってもなかなか顔を見ることがない。
話したいことも特になくて、お墓参りは行った?と聞いた。私はお盆もお彼岸もスルーしてしまった。
お盆は行ったよーという次兄。不思議なことがあったと言う。ほほう、なになに?
長期出張から帰って、放置していたカレンダーを破いて畳んで、適当に畳の上に投げていた。
居間のテーブルでテレビを観ていたら、ゆっくりとゴキブリが歩いてきた。
!!
最初は隅っこにいたけど、気付いたらその畳んだカレンダーの上に移動していた。
兄上よ…私のところにもちょいちょいゆっくり歩くゴキブリ出てくるのよ…。昔から、母上の命日とか。最近もお盆かな、お彼岸だったかにも。驚く次兄。
優しい次兄は、長期出張が多いから食べ物があるわけでもないこの家にうっかり入り込んだものなんだろうと、そのまま放置していたらしい。
カレンダーの座布団の上で、次兄を見上げるゴキブリの背には、父と母の魂が乗っかっていたのか。2人分ならさぞかし重かったことだろう。
いつも冗談で母上かな?ゴキブリやめて?と語りかけていたけど、次兄のところにまで出て来るとは思わなかった。
私は絶対駆除してしまうけど、次兄の優しさを知ってるから、そんな至近距離にいられるのね。
実家は不思議なところで、汚家で年中生ゴミ臭かったのに、ゴキブリを見たことがない。カマドウマのほうが優勢だったらしい。だから本当に珍しいことなのだ。
心優しきコワモテの次兄が、ゴキブリと一緒にテレビ見ている光景は、かなり笑える。今後、私はゆっくり歩くゴキブリを見ても駆除しな…無理だな。やっぱ、ゴキブリを乗り物にするのやめてよ、父上母上。