やきとり
焼き鳥は塩派だ。子供のころに母が買ってくるスーパーの焼き鳥はタレが美味しくなかったのが影響していると思う。ていうか、大人になったいまも、どこのスーパーでも焼き鳥を美味しいと思ったことがない。
考えてみたら、昔から一緒にお酒を飲むような人たちも塩派ばかりだった。
この世界には、タレを注ぎ足し注ぎ足し伝統の味を守っているという焼き鳥屋さんが存在していることは知っている。
でも私の中では、空想上の食べ物だった。
この間、亀有にいった。こち亀で有名な亀有。落語を聴きに亀有へ。
でも亀有ってこち亀以外に何があるんだろう? なにか美味しいものを食べられるかなとネット検索してみた。
「江戸っ子」という、焼き鳥屋さんを見つけた。「亀有の関所」らしい。
タレ、おいしかった。
空想の中の注ぎ足し注ぎ足し伝統のタレというものに出会ってしまった。肉も柔らかい。
そんなわけであの日以来、また味わいたいと次の機会を空想している。
それどころか、近所にもないかと調べてみた。
調べてみると、「タレは頼んじゃダメ」というワードもちらほら見つける。衛生観念の薄いお店では、甕に蓋をしないでいるから、虫や汗が混じっている可能性があると。
近所でよくお世話になっている、持ち帰り用の焼き鳥屋さんでは「塩がオススメ」と、大きく掲示されている。
思考を江戸っ子の焼き鳥に支配されてしまった私は、つい近所の焼き鳥屋さんに向かった。塩がオススメということは、選択肢があるということだ。タレがあるならタレを…。
近所の焼鳥屋さんは、お世辞にもキレイとは言えない。厨房は真っ暗&真っ黒。でも、割とすぐ売り切れる。
愛想の悪い店主に注文しながら、焼き機の脇に鎮座している甕に注目した。なみなみ入っている。表面が光っている。
真っ暗&真っ黒の厨房を背景に光るタレが入る甕。とても注文する気にはなれなかった。15時スタートのお店、いま18時前。オープンから3時間経っているのに、品切れしてる商品もあるのに、タレはなみなみ。
むしろ正直でいいなと思った。タレは勧められないから、「塩がオススメ」。間違いない。
確かに美味しいんだけどね。ここの焼き鳥を食べながら、大相撲中継を観るのが好きだ。気付いたらもう11月だ。また、大相撲が始まる。
江戸っ子の特製ハイボールも美味しかったなあ…。
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