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ネットカフェの夜

違和感に気付いたのは、我が家の最寄駅に着いたとき。新潟日帰り仏壇参り旅は、防寒用のマフラーを入れるためにリュックを背負い、手提げに財布やスマホを入れていた。

冬は鍵類をコートのポケットに突っ込んでおくものだけど、着ていたコートのポケットが浅くて信用できず、手提げのポケットに入れたのが間違いだった。

何故だろう。その手提げのポケットには自転車の鍵しか入ってない。

記憶を巻き戻す。新潟では仏壇のある長兄の家に行く前に、初めていく神社に向かった。新潟駅からバス。

急なブレーキで、隣の座席に置いた手提げが宙を飛んだ。中身の本や缶コーヒーが踊るように飛び出る。漫画みたいな光景に「マジか!」と声が出た。

あれだ。割と旅の序盤から鍵を落としていたっぽい。そこになければ、もう心当たりがない。

たまに鍵をかけ忘れる。そんな自分に賭けてみた。ガチャッ…ドン! うん、ちゃんと閉まってるね!

我が家は東京の外れ。住宅街。ホテルは少ない。終電は終わっている。歩いていける範囲のホテルは2軒とも満室だった。早朝までやってるカラオケ屋さん。駅前のビルの4階でエレベーターに乗ってドアが開いたらシャッターが下りている。ネットの情報では営業中なのに。異世界に入ってしまったか…。途方に暮れる。

えーっとこういうときはなんだ?
ネットカフェ? スマホで検索したら、一駅向こうにチェーン店がある。

仕方ないのでタクシーに乗ってネットカフェに向かった。

ものすごい久しぶり。20代の頃はよく漫画を読みに行っていた気がする。あれからだいぶ生活様式が変わったのだと思う。漫画はあまり読まなくなったし、ネットもスマホさえあればどこでも情報収集できる。

受付が自動なことにまずビビる。会員登録をしなくてはいけない。アプリからやれば無料というので、まずそこから。深夜は2時近い。眠いし、疲れてるし、メンタルをメチャクチャ削られる。

やっと会員登録を終えて店員さんを呼ぶ。席のタイプを選べと言う。たくさんある。個室タイプとか、個室ならフラットタイプ(寝転がれる)とか、リクライニングチェア(多分、椅子の上で寝ろという感じ)の部屋とか、なんかいろいろ。

浦島太郎は混乱した。とりあえず寝転がろうと思って、フラットタイプを選んだ。レシートに印刷されたQRコードが鍵になるそうだ。

つづく

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