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ある日の行き帰り

「そんなに鼻をすすって〜ティッシュあげようか?」

通勤電車の昼下がり。乗り換え駅直前で左隣のご婦人がそのまた左隣の若い女性に声をかけていた。

「鼻すすって、指で拭いて、拭いた指で…」とスマホを触る動作をするご婦人。「ティッシュないならあげるわよ」。親切心というより、呆れているような声色。

若い女性は返事せず、駅にも着いたので席を立った。ご婦人も私も降りた。

確かに汚いんだけど、そんな大きな声でこと細かに動作を描写しなくても。若い女性の細い指がやけに印象に残っている。

自分の指も他人の指も、いつもキレイかどうかなんてわからない。私、さっきなに触ったっけ?

この日は早めに帰れた。その帰り道。帰りの電車が混んでないなんてことはほとんどない。

ギューっと押し込まれる。

この間まで高校生だったのだろうか。近くにいた若い男性が連れに向かって「あの日の…ゴール下を思い出します…」。ああ…バスケのゴール下ってことかな。リバウンドを制するものが試合を制するよね。

電車の中は一期一会。花粉症でマスクが手放せない間に、コロナも忘却の向こう側へ行ってしまったのだなあ。

そんな私の日常。

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