見出し画像

その橋を渡るとき

晩酌しながら寝落ちして、眠らないといけない時間に眠れなくなった日のこと。

実家が引っ越した夢を見た。事故物件らしい。オカルト系YouTubeばかり観ている私らしい夢だ。

ほとんどいまの実家と同じ間取りの新居で、家族が集まっている居間の写真を撮った。1枚目は普通に撮れたけど、2枚目はノイズだらけだった。

「この家やべー!!」と叫ぶ私。居間で多分、酔っ払っている次兄に「なんかあったらよろしく」と、伝えて私は寝ることにした。

私は予定外に生まれた末っ子なので、2人の兄には部屋があるけど、私にはない。長兄が出ていき、その部屋をもらうまで、居間の隣の部屋で親子川の字で寝ていた。

私から見て右側に父がいて、なにか挟んで亡くなったはずの母が左側にいる。窓側。母はどこかに行かなければいけないらしい。父が「タクシーを呼んであるから、1人で行くよ」と言う。母が1人で行くわけないじゃんと思っていたら、窓の向こうにタクシーが停まっていた。あ、行っちゃうんだ。

ひと眠りして目を開けると、上半身を起こして布団の中にいる母を見て「ほら、やっぱり」と思った。

母と私たちとを隔てているなにかに向かって目を凝らすと、私と母の間には空っぽの池のような溝があった。橋のようなものは壊れている。

おそるおそる、壊れている部分を直していった。溝を塞ぐように何本かの板を向こう岸に渡していく。

残り一本のところで、最後の一本はこっちでやりますよと、だれかに言われた。橋は完成しなかった。

すっと、目が醒めた。

あの橋が完成したら、父が母のいる側に行くのかもしれない。あの境界は生者と死者を分けていたのだろう。

次兄に「なんかあったらよろしく」と言える関係性や橋を直そうとしたことで、猶予をもらったような気がする。だれにかは知らないけど。

たまに、不思議な質感の夢を見る。

いいなと思ったら応援しよう!