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LGBT問題に深く触れることになった、ある夜の話

今から18年も前、LGBTなんて言葉がなかった、僕が20歳頃の話。

たった一晩だったけど、ものすごーく濃い体験をしました。この経験があったから、LGBTだろうがセクシャルマイノリティだろうが偏見なくお付き合いができるようになったのだと思います。

大学の友人らと渋谷で遊んでいた時、待ち合わせに遅れてようやく到着した友人がいました。どうせナンパでもしてたんだろ、と言っていたらまさにドンピシャ。待ち合わせ場所に来るまでの道すがらナンパしていたら運悪く(?)女の子を捕まえてしまったらしい。

彼の隣には読モをしているという貧乳のギャルがいた。確かに可愛い子なんだけど、お姉様系が好きだった友人は合流した途端に放置。それならなぜ声などかけたのか。

かわいそうに思って気を使ってその子に話しかけていたら、どうやら帰る路線が同じ西武新宿線だったこともあって意気投合。連絡先を交換してその日は別れた。

後日、ギャルから「新宿で遊ぼ」と連絡が。普通に歌舞伎町にあるゲーセン行ってプリクラ撮ったりカラオケ行ったりしていたら、彼女がふと
「行きたいお店あるんだよね」
と言ってきた。

今だったら、何かぼったくりのお店に連れて行かれるのかと下種の勘繰りをしてしまうのだろうが、当時の僕はまだ世間知らずでピュアだったので
「いいよ、行こう」と答えた。

その時はすでに伊勢丹あたりまで移動していた時だった。明治通りを渡って、どんどん奥へ行く彼女。そこはもう僕のテリトリー外。知らない街並み。不安に感じながら歩いて着いた先は8席ほどのカウンターとテーブルが3つあるバーだった。


ようこそ、新宿2丁目へ

噂には聞いていました。でもその実態は何も知りませんでした。カウンターに座ると、チビTにティファニーのリターントゥオーバルを首から下げたサーファー系イケメンが接客してきました。褐色の肌に引き締まった体。男から見てもただのイケメンだ。

「あら、ようこそぉ」
クッソイケメンのおネエ言葉にちょっと面食らう。
「こういうとこ、初めて?」
「じゃあノンケってこと?」

彼には色々と基本知識と専門用語を教えていただいた。最初本当に会話についていけなかった。ただ、このお店のカラオケで聞いた合いの手だらけの中森明菜の「デザイア」は最高すぎて忘れられない。

奥のカウンターに座っていたゲイカップルとも話をした。ひとりは結婚もしていて、カミングアウトするとかしないとかで悩んでいるとのことだった。

さらに奥のソファ席に目をやると外人レズカップルが酒も飲まずにいつまでもキスをしていた。

この場の不思議な空気感になじみ始めた頃、不穏な存在に気がついた。彼は後ろのテーブル席にいた。


HG先生の二丁目ツアー

真っ黒な革のベストにピッチピチの革のホットパンツ。革の帽子までかぶっている。体型は長州小力だけど、ファッションはレイザーラモンHG

本当にそんなやつ実在するのかと思っていたけど、いましたここに。そんな彼の席にいたお連れの女性と連れの読モの彼女がいつの間にか仲良くなっている。流れで僕もその席に行くことになった。

彼のことは今後HGと呼ぶことにする。僕がよっぽど無知すぎて反応が面白かったのだろうか、HGは聞いてもいないのにハッテン場のことやゲイ同士の出会いの場のこと、自身の体験などを教えてくれた。

そして、
「あなた、2丁目初めてなんでしょ?案内してあげるわ」

と言って、頼んでもいないのに僕を店から連れ出した。

ええい、もうどうにでもなれと思って彼についていくと、いきなり2丁目の洗礼を浴びることになる。

通りすがりに、テラスになっているお店で飲んでいた、大柄でソバージュヘアーのジャマイカ人おかまにいきなり股間をぐわっとキャッチされたのだ。
「ぐわっ!」
ジャマイカ人は
「ロウブー、ロウブー」
と言っていたが、よく聞くと「love you」だった。

これが英語のなまりってやつか。僕が2丁目童貞だと察知しての狼藉だったとHGは言っていた。

彼はまず、やおい専門の本屋に案内してくれた。そのお店は見たこともない本に溢れていた。HGはその見たこともない雑誌の1つ1つの特徴を丁寧に説明してくれた。聞いてもいないのに彼の好みまで。

次に訪れたのは新宿公園。ここは出会いの場なんだとか。

「ノンケは間違ってもウロウロしちゃダメよ」

少々警戒してしまったけど、彼と一緒なら大丈夫か。謎の安心感で公園を横切る。お店に戻って飲み直す頃にはもう朝方になっていた。

読モは横で酔い潰れている。彼女を引きずって西武新宿線まで戻るのかと思うと頭が痛かった。


新しい刺激的な世界へようこそ

HGがゲイだとかなんだとか抜きにして、彼に連れて行ったもらったツアーは間違いなく、刺激的で楽しいアドベンチャーでした。

本当に未知の体験。初めて海外に行った時もそうだったのですが、新しい価値観や見たこともない世界に触れるってものすごく楽しい。ワクワクドキドキする。

正直僕は当事者ではないので、彼らがどんな生き方を選択しようが非難する資格も必要も全くなくて、それはただの異文化コミュニケーションなのだと思っています。

コミュニケーションとりたくないよって人は無理しなくていいし、文句言わないで関わらなければいい。僕は楽しいし興味あるからコミュニケーションとりたいなって思いますけど。

僕が出会ったHGもそうだし、その後の人生で出会ったたくさんのセクシャルマイノリティの人たちは、全然違うものの見方、見え方をしているので単純に面白いし勉強になる。未知なる世界を僕に教えてくれました。

世の中、なんでもそうだけど楽しんだもの勝ちだなって思いますよ。

ありがとうございます!これを励みに執筆活動頑張ります!