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思いわずらうことなく 愉しく生きよ

何冊目だろう、江國香織さんの本を読むのは。
彼女の描く、文章が好きだ。
彼女の選ぶ、言葉たちが好きだ。
彼女の本は、何度だって読みかえしてしまう。

この本は、犬山家の三姉妹の日常を描いた、長編小説だ。
他の江國さんの本同様、この本の主人公たちは
「恋」をしたり「愛」したりしている。
長女麻子のDV問題や
次女治子と熊ちゃんの恋や
三女育子の愛への憧れ。

治子と一緒だ。
私も三姉妹の次女として生まれた。
女たちの中で育った私は、彼女たちの世界を理解できる気がする。

私が一番類似していると思うキャラクターも
やっぱり治子かもしれない。
恋もしているが、自分の成長に重きを置いており、
あとは海外も好きで、留学もしていたことがある。
専ら英語だけであるが、語学にも興味がある。
私はそんなきらきらした仕事にはつけなかったし、
ばりばりのキャリアウーマンにもなれなかったが、
治子はかっこいい。
少し身勝手で、怒りっぽく、でもいつも真っすぐだ。

姉は朝子に似ている。
勿論DVなんかとは無縁な生活だし、結婚もしていないが、
恋多き人生を送っている。
恋をすると、相手に染まり、服装の趣味なんかも全く変わってしまう。

妹は育子に似ている。
序盤では思わなかったが、
読み進めるにつれて、どんどんと育子の良いところが見えてくる。
彼女は「恋」ではなく「家庭」に憧れているのだ。
自分が生まれ育ったような、温かい「家庭」に。
育子は三姉妹の中で一番優しい。
周りを気にかけ、いつも寄り添う。
多くの肉体関係を持っている訳ではないが、
私の妹も、育子と同じように「家庭」に憧れる
優しい子だ。

姉妹なのに性格の全然違う三人。
互いに理解できない部分もあるが、
自分のことのように思いあっているのだ。
まるで三人で一人のように。
それは、きっと、周りには理解できないことなのだ。

この本を読んで、私は旦那ではなく、
母や父でもなく、
姉妹に会いたくなった。
一緒にワインでも飲みながら、近況を聞きたい。

妹は時間通りに来て、姉は遅れてくるだろう。


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