味噌汁の思い出
大学時代のこと、学期末に数多のレポートやテストに追われて徹夜で仕上げるという経験をした人は少なくないだろう。例に漏れず私にもある。
選択必修か何かの科目でレポート課題が出た。ちょっと専攻からは外れるため、なかなか苦労した記憶がある。文献を読み、ああでもないこうでもないと文章をこねくり回し、気づけば心なしか外が明るい。夜は更け、いつの間にか明けた。
授業もあるし、今から2時間くらいは寝ておこうか。いや一度寝てしまったら寝過ごしてしまうかもしれない。それは避けたい。だが脳内は煮詰まりすぎて水分の飛んだドロドロのカレーのよう。未だ着地点の定まらないレポート。書かねば……。
ふと気分転換に何か食べようと思い立った。料理を作る気力はあまりない。たぶん胃腸にも消化する元気はない。そんなときにキッチンで見つけたのがインスタントの味噌汁だった。
お湯を沸かすという作業だけで、あんなにホッとするものを摂取できるのだから、インスタント食品というのは大革命である。デスクから離れて数分、ほかほかと湯気が立ち上る味噌汁ができあがった。
ひとくち飲んだとき、あの瞬間ほど心底ホッとしたことは後にも先にもないだろう。温かいものというのはここまで偉大なのかと少し驚きもした。沁み渡るとはこういうことなのだなと思った。1杯の味噌汁の力はすごい。味噌汁というものがある日本に生まれてよかったなと、しみじみと思ったものである。
たぶん私はこの地球上どこにいても、ふとした瞬間にこのことを思い出すだろう。自分は自分が思っている以上に、日本人なのだ。
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