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魔女の宅急便

世の中の人は(というと少し言い過ぎかもしれないが)、ジブリ育ちかディズニー育ちかに分けられると勝手に思っている。映画やアニメをあまり観ない人であっても、ジブリやディズニーの作品は観たことがあったり、その中で一番好きなものがあったりする。それくらい老若男女に親しまれている。

私はどちらかといえばジブリ育ちで、幼い頃からよく観ていた。中でも一番好きなのは『魔女の宅急便』である。それが映画のまち調布シネマフェスティバルにて上映されると聞き、これは行かなくてはとチケットをとった。

金曜ロードショーでも何度も放送され、DVDも買ってはセリフを覚えるほどよく観ている作品。何度観ていたって、やっぱり劇場で観られるとなればこの機会は逃したくない。

初めて劇場で観る魔女宅は、たとえストーリーは知っていても全く別物のようだった。大きなスクリーンに家のテレビとは比べものにならない音響設備。今まで聴いたことのない音が聴こえたり、このBGMはもうここから流れていたのかと新たな気づきを得たりもした。小さなジジの動きだって改めてよく注目してみるとかなり猫らしく、制作陣が猫の動きをかなり研究したことがうかがえた。そんなこんなで、「ルージュの伝言」が流れるあの有名なタイトルロールが出る前にすでに両頬はびしょびしょだった。

新しい発見もたくさんあったが、特に私が感動したことについて2つほど書き留めておこうと思う。

1. 新しい魔女宅の楽しみ方:ジジに注目!

劇場で大きいスクリーンで観たからこそ、テレビではなんとなくしか意識していなかった細かいところまで見えるようになる。私が最も衝撃だったのが黒猫のジジだ。

作中初期のキキの少々乱暴な飛行でも、振り落とされることなくしがみついているジジ、猫の腕力ではない。いや脚力というべきか。貨物列車から飛び立ち「ジジ、くっついてるー?」とキキが問うシーンは文字通りくっついている。これまでの飛行練習で何度振り落とされてきたのだろうかと、少々同情してしまう。

そして街中を優雅に飛ぶシーン。キキの「第一印象が大事。笑顔よ」というところで私は今までキキしか見ていなかったのだが、なんとジジもしっかり笑顔になっていた。キキが笑顔をつくるのに合わせて、ニッという擬音語がぴったりな、『不思議の国のアリス』のチェシャ猫を思わせるような笑顔をつくっている。いやー、可愛い。

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2. 無音を楽しむ

これまでの私は、音響のいい映画館で観るならミュージカル映画に限ると思っていた。音楽が売りの映画だし、こういうものこそ、すごい音響設備のところで観たら感動が倍増するものだと思い込んでいた。

しかし、私は今回気づいた。音響設備にこだわったシアターで観るべきは「静寂」のある映画だと。

トンボを助けるべくキキがデッキブラシにまたがるシーン。力を込めるキキを何事かと周囲がざわつくが、その話し声がパッとなくなる。周囲の音も聞こえなくなるほど集中しているキキと、観客がシンクロする瞬間だ。見慣れたシーンのはずなのに鳥肌が立った。

家のテレビで観ているときには外の音や生活音などがあり、全く無音の空間はどうしてもつくれない。しかし映画館ならできる。観客一体となって誰もが映画に集中し、息をするのすら忘れてしまう瞬間、無音の空間が生まれる。たまにポップコーンを食べる音がしたりもするけれど。

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音響設備にこだわった劇場で、ミュージカル映画や音楽がメインの映画を観てライブのような臨場感を味わうのも良い。一方で、少し前に観た『ブラックボックス』のように音の演出にこだわった作品や、無音や静寂を楽しみたい作品を観るのも聴覚が研ぎ澄まされて良い。

見慣れた作品でも、改めて劇場で鑑賞することでさらなる魅力に気づいたり、新しい楽しみ方を見つけられたりする。本当に映画というものは沼である。

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