帰国子女の気持ち
帰国子女羨ましいという人によく会う。
言いたいことは分かる。言語ができる。外国で育ったの格好良い。
そういうイメージだよね。きっと。
けど、そういうふうに発言する前に一度考えて欲しい。
帰国子女って本当にそんな良いもの?
私はドイツで生まれ育った帰国子女。
中学二年までずっとドイツの現地校に通っていた。
そしてイギリスにある日本人学校に編入した。
当初は周りの子が使っている日本語は半分くらいしか理解できなかった。
苦労しながら日本語を身につけた。
そして大学で初めて日本に住むことに。
私は自分の背景で数えきれないほど泣いてきたし、鬱にもなった。
別に環境は悪かった訳でもないし、馴染めていなかった訳でもない。
親も浮かないように常に最善を尽くしてくれていた。
一番良い教育の場をくれた。
母はドイツ語を勉強して、幼稚園時代、親子の集まりに参加していた。
きっと簡単じゃなかったと思う。
そして、好きよって寄り添ってくれるドイツ人の友達もたくさんいた。
それでも日常的に私は苦しんでいた。
みんなは小さい頃、知らない通りすがりの人に差別を受けたことある?
世間知らずなのにクラスメイトから日本の悪い部分を責められた事ある?
日本を知らない女の子が日本の罪を責められるなんて。
けど仕方ないよね。みんなにとっては私が日本代表だから。
その重荷分かる?私は日本嫌いになったよ。
誰よりも私はドイツ人になりたかった。
集合写真では自分だけ肌色が違う事気になった事ある?
「里紗はドイツ人だよ。仲間だよ。」
この言葉が大好きで、同時にじわじわと凄く辛かった。
日本なんて遠い知らない国。一年に一回、親戚に会いに行く国。
私は毎週土曜日、日本語補修校に通わないといけなかった。
周りのインター通いの子達とは馴染めない。そして宿題が凄く多い。
もちろん、当時、日本語の勉強をしていたから、今の自分がいる。
その代わり土曜日に仲良く遊んでいるドイツ人の友達の輪に入れなかった。
できれば普通のドイツ人の家族に生まれて、ドイツで育ちたかった。
それくらいドイツが好きだった。
けどその想いは、最善を尽くしてくれている親を裏切る想い。
私は日本人。親も日本人。それは変えられない。
どれだけ泣いても、叫んでも、私の気持ちは親を悲しめるだけ。
こんなにも私を苦しめる日本という存在が大嫌いだった。
そしてそんな自分も大嫌いだった。
今もドイツに帰りたくても、私は日本のパスポート所持者。
ドイツのビザはイギリスで教育受けている間に貰えなくなった。
大好きなドイツ。故郷。私の部屋。
国籍が違うから私は合法に長期滞在ができない。
今も私は国境を越えられないから親元に帰れない。
その悲しさ分かる?
日本に初めて住んだ大学一年生の私。
日本に行って、自分は日本人だから、日本人として扱われる。
ごく当たり前のこと。けど私は凄く辛かった。
私にとって日本は何も分からない新世界だった。
それなのに知らないのがおかしいと思われる世界でもあった。
ドイツ帰りたくて仕方なかった。
外見と書類から判断すると日本は私の国籍。
私の心を理解できないのも私も理解できる。
そうやって色々と飲み込んできた。
帰国子女のそういう現実を知らずに羨ましいと言っているのは知っている。
悪意も何もないのも全て理解できるし、責めもしない。
もちろん今の私は当時と比べると変わった。
帰国子女であることを嫌っているだけでは生きていけないからね。
あるものは全て自分の武器にして強くならなきゃ。
今の私がいるのはこの背景のおかげ。文句はない。
それでも、この苦労、辛い想い、涙、知ってほしい。
私は、こんな想いをせずに生きてきたみんなが羨ましいよ。