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自由な動きを撮るために

まずは何枚か写真をご覧ください。

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天井高4メートルほどのスタジオで、4灯のライトを天井にバウンス(反射)させて光を作りました。全体的に光の回ったシンプルなライティングです。


立ち位置を固定しない

今回このライティングにしたのは、人物の立ち位置を固定しないことを目的としたためです。

そもそもこの企画の意図としては、モデルに自由に動いてもらう中で、彼女のナチュラルな体の動きや表情を抑えることでした。

通常、スタジオでライトのセッティングをする際は人物の立ち位置を固定します。なぜなら立ち位置からズレると光の当たり方も露出(明るさ)も変わってしまうからです。

一方で、立ち位置を固定するというのはモデルの動きをある程度制限することにも繋がります。もちろん、固定された立ち位置の中でさまざまなポージングをしてもらい、ナチュラルな動きを捉えることもできます。

しかし今回はもっと予測不可能な、アクティブで伸び伸びとした動きを捉えたく、そのためには立ち位置が変わっても、光の当たり方や露出がそこまで変化しないライティングにする必要がありました。

そこで、次のようなライティングにしました。

カメラ:α7iii レンズ:sony 55mm f1.8 設定:iso320 55mm f5.0 1/125
側面図

太陽の下ではなぜ明るさが変わらないか

さて、広い草原に行き、太陽の下でモデルの写真を一枚撮ったとします。
続いて立ち位置を10メートルほどバックしもらい、同じカメラの設定でまたシャッターを切ります。
この2枚の写真は、当然同じ明るさで映ります。スタジオでは少し立ち位置が変わるだけで露出が変わるのに、なぜでしょうか。

それは、光源である太陽が遠く離れているからです。10メートルの立ち位置の差は、地球と太陽の距離から考えると、無いに等しいです。

つまり、光源(ライト)と被写体の距離が近いと、わずかな立ち位置のずれが露出のずれに繋がるのに対し、光源と被写体が離れれば離れるほど、立ち位置が変わっても露出の変化が少なくなります

大きな面光源を作る

しかし、だからと言ってスタジオ内でモデルから一番離れた場所から直射光を打てばいいわけではありません。そうすると当然光が固く(影が強く)なってしまうし、モデルのフリが変わると光の当たり方も大きく変化してしまいます。

そのため前述の通り、今回は4灯のライトを使い、スタジオの高い天井に幅広く光をバウンスさせました。光源を大きな面にして、光を柔らかくするためです。

左:天井の低い部屋で1灯天バン 右:天井の高い部屋で4灯天バン

仮に天井の低い部屋で1灯のライトで天バンをするどうなるでしょうか。天井に当たる光の面積は小さく、そこから跳ね返る光もやや硬いままです。

ところが天井が高い部屋で複数のライトで天バンをすると、広い面積に満遍なく光があたり、天井自体が一つの大きな面光源となり、その跳ね返りがモデルに当たります。そのためモデルの向きやカメラが狙う方向が多少変わっても、光の当たり方はそこまで大きく変化しません。

被写体から光源が離れていて、かつ光源が広い面になっているため、モデルがスタジオ内を動き回ってもさほど露出や光の当たり方が変わらない、という状況を今回は作りました。

最後に

モデルにどういう陰影をつけたいかを起点にライティングを組むだけでなく、どういうライティングをすればモデルの動きの幅が広がるか、という方向で考えるのも一つの撮影手法です。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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