かたちのないもの
「感謝を伝えたいんです」と多くの新郎新婦がいう。
結婚式の日はそのためにあると思うくらい大切で大好きな気持ち。
感謝、という形のないものを形にする。
どんなシーンでどう伝えるのか、
結婚式のスタイルは変わり続けてきたし、
ビジネスの視点からすれば、流行りもある。
流行りと普遍をうまく取り入れなければならないのは
提案するスタッフも当事者の新郎新婦も同じ。
その中で、
お父様お母様への感謝の気持ちを花嫁がメッセージに託して伝える、
披露宴の中でも大切な、普遍的なシーン。
もちろんメッセージを読まない新婦もいる。
迷っていらっしゃる場合は
「それぞれの考えなのでいいと思います、ただ、たくさんの披露宴に関わらせていただいて知っているのですが、この日にしか伝えられないありがとう、というのがあります。親として「よくがんばりましたね」と労われる日でもあると思うんです」と、勝手に近所のお節介おばちゃんになることもある。
この日のお2人。
「あ、手紙は読みません!」と言い切った新婦さんの笑顔があまりにも素敵だったので「あ、そうなんですね、わかりました〜!」とこちらも笑顔になった。
新郎新婦が感謝の思いを込めて
記念のプレゼントを渡すシーン。
2人が用意されたのは、生まれたときの体重と同じ重さのお米だった。
ちょっとびっくりして、
すぐに笑顔になり受け取られたお父さんお母さん。
大切そうに抱えられたその表情は
嬉しそうで誇らしそうで、
そしてほんの少しホッとした気持ちと寂しさが入り混じったものだった。
お二人の大好きな曲を、と
その日ご親戚がピアノで演奏してくださった
「人生のメーリーゴーランド」という曲に込められた思い。
ああ、そうなのか。
この日の花嫁は笑顔でいることを選んだのだ、
と気づいた。
人前で手紙を読むのが照れくさいから、とか
泣いちゃうと恥ずかしいから、
という自分だけの思いではなく、
これまでの日々、1番近くで愛し続けて来てくれたご両親にとって
娘である自分が笑顔でいること。
それがご両親にとって最高の幸せだとご存知だったのだ。
誰も涙を流さない、涙をこらえない、
ゲストも皆様笑顔で見守り、
ステージに並ぶ親御様へ、全力の拍手をおくった。
形はないものを形にする。
この日にしかできないことがこんなにもあるということをまた教わった。
私はこの仕事が好きで、
これからもきっと続けていくんだろうけど、
この司会が最後になっても、全く、全く後悔はないわ。
うん。
そんな完璧な1日でした。