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或る記録.6


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「そろそろ不安になってきたやろ?」


……いえ、もうずっと不安です。


そんな言葉を飲み込んで、先生の話に相槌をうつ。

「次のステップに進もうかね」


---人工授精だ。


といっても、妊娠率は自然妊娠とあまり変わらない。
ただ、夫の単身赴任まであと2ヶ月を切っている。
やれることは全てやっておきたかった。

「お願いします。」

確実に排卵日を狙うため、
今まで以上にスケジュールの調整が難しい。

---排卵日を過ぎてしまったらどうしよう。

そうすればまた来月、となる。
36歳の私にとっては、その1ヶ月のズレすら惜しいのだ。

気持ちだけが先走って、待つ時間がもどかしい。


人工授精当日。

夫の精子を直接子宮に送り込む。

子宝祈願のお守りを握りしめながら、
モニターにうつるそれを見つめていた。


---あぁ、なんて人工的。


…どうして私はこんなことをしているのだろう。


帰りに抗生剤をもらった。
その薬が合わなかったのか、次の日の朝、
頭痛と気持ち悪さで起き上がれなかった。
そんな状態で出勤をする。
なぜだか無性に泣きたくなった。


---その数日後だった。


職場の同僚が1人が妊娠している、と
社長の口から告げられたのは。

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