或る記録.2
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「また明後日来てね」
…ということは、仕事を休むか、時間で抜けるか、か…。
とにかくどちらにしても、
上司と社長の2人にはこのことを話さなければならない。
しかし、幸いにもこの2人は理解があった。
上司はシングルマザーのため、
お子さんの事情でお休みをとることもあり、
お互いさま、と言ってくれた。
社長は、実は奥さんが20年以上前、
不妊治療をしていたそうで、
かなり大変なのは分かる、と。
ただ、この職場に受付は私1人。
私がいないときは上司がしてくれるが、
その上司が不在だったり、接客の予約が入っていると、
休みを取ったり、途中抜けることはできない。
なんといっても、その調整が難しかった。
初期検査は特に来院しないといけない回数が多く、
タイミングも難しい。
明日また来て、なんて、ザラにある。
しかも職場から病院まで約1時間。
時間で抜けるときはその往復もかなりツラい。
かといって、仕事が終わってからだと
診察時間に間に合わない。
…これ、みんな、どうやって両立してるの…?
どんなに理解がある、と言っても、
こう毎回毎回、さらには直前だと、
この日にまた…とお願いするのも
どんどん気まずくなっていく。
他人にどう思われようと別に平気な質だが、
それでも「またか…」と思われているようで、気が引ける。
自分の勝手な願望に、職場と周りの人を巻き込んでいる。
そんな罪悪感ばかりが募る中、
初期検査の中でも最も重要な検査の1つ、
卵管造影の日が迫っていた。