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フランス大学院修士課程雑記⑥後期開始-C2取得は始まりでしかなかった-
DALFの試験が終わって一休み……する暇もなく、後期が始まった。
後期の授業がようやく一回りして、なんとなくリズムもつかめてきたところで、記録を残しておきたいと思った。
①前期の試験結果
まだすべては出揃っていないが、前期の試験結果が一部科目で判明しつつある。
新年の記事(以下)にシレっと盛り込んでしまったのだが、私は一応Mention Très bien(すべての科目平均が16/20以上)の成績を目指しているので、試験や課題は16点以上を目指して臨んだ。
後期に入ってから点数が分かったものは3つあり、それぞれ
・18点(グループエクスポゼ・クラス最高点!)
・17点(試験[DST]・クラス最高点!)
・16点(試験[DST]・これ以上の点数が複数いてトップとは遠い一方、最低点は3点。あと、ひとり19点がいた。それぞれどんな答案なのかとても気になる。)
という結果で、Mention TBに一歩近づけた。
まだ結果がわからない科目が圧倒的に多いので、個人エクスポゼやDissertationの結果があまりにひどければ目標を軌道修正するかもしれないが、とりあえずこの目標を維持したまま後期も突き進もうと思ったときに、またまた修士、というかフランス語の道は甘くないと再認識させられる出来事があった。
②プロフェッショナルな道にはほど遠い、私のフランス語
フランスでは試験の回答用紙(copies)を開示することができる。
上記のうち、16点だった試験でどこが減点されたか知りたく教授のもとを訪ねた。
先生の研究室の扉を開けると、Bienvenue~(よく来たね)と優しく出迎えてくれた……と思いきや、扉が閉まった途端、先生は真面目な顔になり、以下のようなことを神妙に伝えてきた。
あなたの答案の採点は難しかった。
問題の理解は完璧だったが、アウトプットとしてのフランス語が弱すぎた。
もしこれが授業でいきなり当てて出てきた回答ならそれは素晴らしい。
でも、これは残念ながら試験だから、フランス語の分の4点を引いた。
DALF C2に受かってからの出来事だったので、ここまできてフランス語のダメさゆえに20点中の貴重な4点を落としたというのは大変ショックだった。
なおこの試験に限らずだが、私の課程ではフランス人学生と同条件で試験を受けさせられる。辞書の使用の可否や制限時間、すべてが同じ条件だ。
(※同じ大学内でも、違う課程や交換留学であれば辞書利用可のところもあると聞いている。)
採点は外国人に対してはさすがに甘くする先生もいると聞いていたが、この先生のときは学籍番号・氏名は見えない状態で答案を提出したし、この言い様だと甘くは見てもらえなかったのだろう。
唯一の外国人とはいえ、正規の課程で勉強しているのだから、特別扱いしてもらえればそれは「ラッキー」なだけであって、特別扱いは「当たり前」ではないのだ。
あなたはフランスの試験に慣れてないと思うから、それもあったと思う。後期はまたお題が変わるから、頑張ってね。
あと、もし今後フランスで働きたいと思うなら、もう一度綴りや文法をやり直した方がいいね。
答案を見終わって返すと、先生にこんなことを言われてしまった。
博士課程に進むにしろ、フランス語を活かして働くにしろ、いずれにせよ私のフランス語にはまだまだ伸びしろがあるということだ。
ここまでハッキリ言ってくれる人はなかなか少なくありがたいと思う反面、図星過ぎて辛かった。
※次にこの先生に授業で会う日、嫌すぎたのか久々に発熱した(一日で解熱したが、今も若干体調がよくない)。
③後期の自分に課すこと
大学院の試験はDALFとはかなり形式が違うし、DALFではある程度表現の暗記も効くところ、大学院の試験では教授の求めに応じたフランス語を出力しなければならない。仮に自分の得意分野でないところであったとしても、だ。
そしてこれは駐在帯同当初から言い続けていることだが、語学は結局自助努力の世界だ。
仮にフランス語ネイティブのパートナーがいたとしても、自分で意識しなければ結局伸びることはない。
大学院だってそうだ。ただ授業を聞いているだけでもある程度聴きだけは伸びてしまうのは事実だが、結局出力レベルは入学時とほぼ変わらない(私がC2を受ける前、C1レベルから進歩がないと言われたのが確固たる証拠)。
つまり、ここから意識してフランス語を修正し、伸ばさないと、今後進学するにしろ働くにしろ、どこかしらでボロが出てしまう。まだ修士1年で気づけて良かった。先生に感謝。
とはいえFLEの授業も学部生が混ざっていることや、C1レベルまでしか授業がないことから、正直”こなす”だけならあまり労力なくできてしまうレベルまで来てしまっている。FLEの授業を受け身で聞くフェーズはとうに終わってしまったのだ……。
後期は論文執筆を見据えて授業のコマ数が減っているため、幸い自主学習に充てられる時間は前期より長くなる。それを受け、
①ディクテ:日本では細々と続けていたが、こちらに来てから頻度が減ってしまっていた。しかし、フランス語4技能を効率的に伸ばすには不可欠。
王道のディクテ⇒オーバーラッピング⇒シャドーイングをやろう。
②文法書:自分で好んでよく使う動詞以外は活用が甘くなることがあるので、レベルを落とした参考書か日本語のものをやる。
③ボキャビル:C1/C2レベルのボキャビルの本を1日1課。
を自分に課したいと思う。
もしパリ会場が復活したら、動詞の活用や文法も問われる仏検1級(いまだ取り損じている)にチャレンジしたい。
英語を頑張って勉強していた高校生の頃は「英検1級って取れたらどんな感じなんだろう」とぼんやり思っていたし、大学の第二外国語でフランス語を始めたときには、まさかフランス語の方が早くC2レベルに達するとは思っていなかった。
私はまだ自分以外の生きた人間でDALF C2取得者を見たことがないので自分語り以外の何物でもないが、資格試験という道しるべを失った後、語学学習で見える景色は果てしなく大きく、広いというのがC2を手に入れた今の率直な感想だ。
振り返れば大学の第二外国語でアーベーセーを習って仏検4級から始まり、TCF、仏検準1級、DELF B2、DALF C1、そして最後にDALF C2と、これまで10年以上時に這いずりながら休み休み、もがきながらやっとのことで歩いてきた、看板の立った曲がりくねった長い道は見えるのだが、前を向けば看板も道しるべもない、何の印もない空間が広がっているようだ。
その空間を飛ぶのか、はたまた泳ぐのか、走るのか、まだ方法は分からないが、前に進むためにはもっと基礎体力(上記の勉強継続)をつけていかないと息切れしてしまうことだけはよくわかる。
そして、この目の前に広がる巨大な空間の入り口が、フランス語学習者としての第二章の始まりにすぎないということも。
フランス語上手だね、と言われれば笑ってお礼を言いつつ驕らないように気を付けながら、残り半年の修士1年生生活を悔いなく終えられるようにしたい。