原作が好きな『魍魎の匣』の舞台版が素敵だったのでメモしておく
人間だれしも個人の価値観を固める小説などのコンテンツがあるはずで私の場合はそのひとつが京極夏彦先生の京極堂シリーズのわけなのですがその舞台版が原作に負けず劣らずすごかったので感想的にメモを残しておきます。
凶器になりうる分厚い小説
最近togetterで新本格派ミステリーに関するまとめをみつけたなつかしいなーと思っていました。
「ゆとり世代ど真ん中の私達が探る新本格以降のミステリ二次創作変遷について」
私は多分、この世代のドンピシャで高校の文芸部でJDCシリーズのコスプレをする人がいた時代です。いまよりもミステリー小説に没頭していて、大学すらミステリー研究会があるかどうかで決めようとしていたぐらいです。
で、当時同じぐらい読んでいたのが京極夏彦先生の京極堂シリーズでした。講談社ノベルズで出ていたのですが、あとからミステリーに分類されていると知りました。(当時の私はミステリーとは思ってよんでいなかったのですが。)
人気シリーズなので、映画・漫画になっているのですが、実は舞台にもなっています。当時チケットが手に入らずみれていなかったのですがこの度ニコニコ生放送で配信していると聞き、観ました。結論からいうと、すごかったの一言につきます。生で見たかった。。。。
原作は京極堂シリーズのうち「魍魎の匣」。原作は人間のあり方を問う、怪奇性の強い小説なのですが、舞台は演出の力でこの怖さがパワーアップしており見入ってしまいました。以下ポイントです。
キャラクターの再現度
挿絵のない小説なので、キャラクターは文字の描写から感じ取るしかありません。私は漫画版のイメージが好きなのですが、舞台版のキャラクターの造形もすばらしい。京極堂シリーズのキャラクターはすべてあくが強いのですがそのあくの強さと雰囲気を各役者の名演技で舞台上に舞い降りていました。
中禅寺秋彦は劇団EXILEの橘ケンチという方。中禅寺は原作や漫画のイメージからすると神経質で常に眉間にしわが寄る、不健康そうな感じなのですが、舞台上ではすごく健康的できびきび動けそうな感じでした。あの京極堂の「圧」をリアルでやるならあれぐらいのパワフルさがいるのだなーと思いました。榎木津さんは「珍しく人の話、聞いている」と思ってしまいました。
個人的にそれぞれがキャラクターになりきっていたなと思ったのは京極堂が謎解きをするラストシーン。原作を知っていても衝撃的な結末と独白、そして京極堂のロジックなのですが、それを聞いたそれぞれのキャラが「ああそういう反応しそう」という演技をしていました。鳥口さん、ちゃんと蘇生したかなー?というか、これ会場でみたら絶対怖い。よくこれができる役者を集めてきたなーという印象でした。(と思ったら、プロデューサーが松田誠さんで「ああ」と納得しました)
プロジェクションマッピングの使い方が上手
最近の舞台はプロジェクションマッピングをうまく使っています。それは「魍魎の匣」も同様。特に京極堂シリーズは難しい言葉とかが使われますが、それをうまく伝えるためにも使うと同時に、榎木津が見抜いた情景とか、名シーンの活字とかも表示される。で、そのフォントがまた雰囲気にあっていい。
「魍魎の匣」はテーマとして人間のあり方、危うい境界というのがあるのですが、舞台上で演出とプロジェクションマッピングを使ってうまく表現していました。
一番すごいのは、あの凶器にもなりそうな分厚さの小説をうまく2時間程度の舞台にまとめた脚本と演出だと思います。それでいて名セリフと設定はひとつもこぼさず。原作の本質をぎゅっとまとめて出してきた感じでした。
生放送のコメントでもあったのですが、京極堂シリーズのほかの作品も舞台にしてほしいです。絡新婦の理とかどうですかね。