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コーチングの心理学

野茂英雄が移籍したメジャーリーグのロサンゼルス・ドジャースにトミー・ラソーダ監督という人がいました。ラソーダ監督はメモ魔でありとあらゆることをメモしたことでも有名です。

例えば、A選手がホームランを打ったときに「内角低めのあの球を打てるなんてお前だけだよ!」と褒めると、A選手はただ親指を上げるだけだった。そんなときにラソーダは「技術を褒める:△」とメモをします。
別の日にA選手がホームランを打ったときに今度は「すっげーな! お前のバットはバズーカだぜ!」と褒めたらニヤリと笑って監督とハイタッチしました。そこでラソーダは「洒落た言い回し:◎」とメモをします。
これを全選手でやるほどにラソーダはメモ魔でした。もちろん野茂選手のメモもたくさんありました。
「ほめる」ことは当然相手にその褒め言葉を受け取って貰う必要があります。ラソーダ監督は相手によって「響く言葉」が異なることをよく知っていて、それらをメモして膨大な量のデータベースを構築していたわけです。オーダーメイドの褒め言葉を選手の数だけ持っていたというのもすごいことですね。

褒めるときの主語は大きく分けて2つの方法があると言われています。一つは「Youメッセージ」そして、「Iメッセージ」です。
つまり「君は本当に仕事が良くできるな」というメッセージと「私は君が仕事のできる男だと思っている」というメッセージです。
「Youメッセージ」の場合、内心喜んではいても、謙遜の気持ちから「そんなことありませんよ」と受け取ってもらえないこともあります。
一方「Iメッセージ」の場合は主語が私なので「そんなことありませんよ」とは言いづらく、「Youメッセージ」よりもスムーズに褒め言葉が受け入れられやすいという特徴があります。

褒め方により反応が異なるのであれば、何を褒めるかによっても反応がことなってくるはずです。
こんな心理学の実験があります。
まず生徒たちに簡単なテストと難しいテストとを2種類与え、生徒たち自身にどちらか好きなほうを選ばせます。
実験群Aの生徒たちには「一方のテストは君たちには難しいかもしれないが、やればとても勉強になるはずだ」と「挑戦」の強化を行います。
実験群Bの生徒たちには、「一方のテストは簡単だ。君たちは優秀だから少し物足りないかもしれない」と「賢さ」の強化を行います。
結果は、「挑戦」を強化された生徒たちの90%近くが、難しいほうのテストに挑戦しましたが、やはり正答率はあまりよくありませんでした。
一方「賢さ」を強化された生徒たちのほとんどが簡単なテストを選び、高い正答率を叩き出しました。

これはフィードバックにおいても同様でした。
再度、実験群を2つに分け内容が同じテストを行います。結果の得点に関わらずA群にはテスト結果に対して「もう少しできると思ったが、まぁ、こんなもんでしょう」とフィードバックをします。
もう一方のB群には同様に得点に関わらず「間違いは多いが考え方は合っている。次はもっとできるだろう」とフィードバックを行います。
するとA群は間違いを「無様な失敗」として捉え、失敗しないように挑戦を回避する傾向に傾きました。
一方B群は間違いを「成功の素」として捉え、新たな学びの原動力ととらえる傾向がありました。

声がけ一つでその後の成長を大きく左右することもあるので、一度自分がどういう言い回しをしていて、何を褒めていて、それがどの様に受け止められるかを考えてみるのもいいかもしれません。


まとめ

コーチングは修辞学


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