ほんそば日記 20241009 どうやら家が好き
心にヒビがはいる音が聞こえた気がした。
大袈裟ではなく、なんだか力が入らない。やろうと思えばできる、でも、やろうと思えない。
体もイマイチ本調子でなく、心も本調子でない。
帰りたくないからどこかへ行こうと思ったもののどこへ行きたいかもわからなくて、懐かしい街にふらりと立ち寄った。
子どもの頃から何かと通っていた、本がたくさんある街。参考書を買うだけで頭が良くなったように思えた大きな本屋さん、入るだけで絵が上手くなったような気分になる画材屋さん、好きな場所をふらりふらりと彷徨いながら、手には今好きなものが集まっていく。
約2時間の自分探しの現実逃避。逃避しているつもりが、逃げれば逃げるほど問題がクリアになっていき、じくりと痛む。時々胸を貫く罪悪感に目を逸らして、それに隠されそうになる自分の声を聞こうとしてみながら、ただ目の前を見ていた。
ぼんやりぼんやり歩き回ったショートトリップ。家へと向かう電車に乗ったとき、「わたしは住んでいる町が好きなんだな」とすとんと思った。「あそこに帰りたいな」と思った。意外だった。
家でやれることが好きなくせに家にいたくないというジレンマ。人混みが嫌いなのに家にいると自己嫌悪に押しつぶされそうだから目を逸らして外に出たがってばかりいる。でもそれは、本当はわたしはあそこが好きだったのだ。好きだから、居心地良くできない部屋も下手くそな料理もままならない掃除も悔しくて、嫌だったんだ。
ああ、私、家が好きだったんだな。
あの家で、気持ちのいい暮らしをしたくて、もがいて、からまっていたんだな。
扉を開けたらしっちゃかめっちゃかの現実が待ってる。でも、好きだからわからなくなっていたってわかったから、ここから何かが変わるような気がする。自分の気持ちがストンと腑に落ちた出来事だった。
今度こそ、部屋を整えられるかな。そうだといいな。
少しずつだよ。すぐには終わらないものだよ。
何度も自分の心を確かめながら、ようやく思えた「家が好き」を味わっていきたい。
【今日のお供】
『さめない街の喫茶店(全2巻)』(はしゃ)
…気になってはいたけれど読めないまま見かけなくなっていた漫画に今日偶然再会して即購入。奥付を見てびっくり、もう7年前だったのか…!最近月日が百代の過客すぎる。中の線とか空気感がドンピシャなのに、最近何故かこういう空気を避けていた。なんでなんだろう。同じようにドンピシャなのに避けていた『家が好きな人』(井田千秋)も最近買ったのだった。このところ、何かを取り戻すように本を手に取ることが多いような。