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127冊目:企業進化を加速する「ポリネーター」の行動原則

この本は、今の仕事内容に直結している。「ポリネーター」として働きながら、ポリネーターが何かイマイチ分からないのでこの本を読む。

ポリネーターとは

一般的にポリネーターとは花粉媒介者と訳される、花の花粉を運ぶハチのような存在を指す。本書におけるポリネーターとは、自社と社外のスタートアップを積極的に仲介し、既存ビジネスを補完するきっかけを作り、新しいビジネスの種づくりを仕掛ける人を指す。

VCである本書著者は、企業からの相談をよく受ける。スタートアップの紹介やオープンイノベーションについての講演など。

そんな時に適切なスタートアップを紹介するために次のような逆質問をするも、クリアに応えられる企業は少ない。

御社の具体的な未来像はなんですか?その未来像に向けて、どの領域であれば今のまま自社の強みを活かして達成できそうですか?逆に、どの領域は資源が不足しているとお考えですか?

本書p.28

ポリネーターはこの部分をクリアにし、会社の経営層に言い聞かせ、それに見合うスタートアップとのオープンイノベーションを創出する必要があると思う。

オープンイノベーションとは

オープンイノベーションとは、自社の強みと外部資源を掛け合わせ、新たな価値を創造することへの挑戦のことをいう。

今、このオープンイノベーションが盛んな背景としては技術・製品のライフサイクルが盛んになり、どれだけ大きな企業でも自前主義では追いつかなくなったからだと思う。

早い段階で市場に参入することがその企業を有利にする。その点で特に企業にとってメリットのあるスタートアップへの投資(CVC)は今後さらに求められるポリネーターの活動になる。

スタートアップエコシステム

ポリネーターとして、まずはスタートアップに認知してもらい、信頼を得る必要がある。

そのための処方箋が次の5つになる。

1.Startupの現場に何度も足を運ぶ
2.Startupのスピードと求めることを理解
3. Startupからの信頼を得て、維持する
4.シリコンバレーのルールを知る
5. PoCを大切にする

本書p.129より

スピード

スタートアップの成功にはタイミングが重要になる。その点でもスピード感は大企業側に合わせていては手遅れになる。

大企業側がスタートアップに合わせる組織の仕組みを作る必要がある。その意味でもスタートアップと大企業は対等なパートナーとなる。

PoC

PoCはスタートアップが事業化する前に行う実証実験のこと。

スタートアップとしては、PoCを経て、事業化もしくは本格採用を期待している。大企業側が「単なる技術検証」と考えている場合は、それを明確に伝えておかないと、期待値にギャップが生じ、トラブルにもなる。

本書p.176より

PoC開始前に「いつまでに何をするか」などの期限や、知的財産(IP)の取り扱い、意味と目的を明確にスタートアップに伝えておく必要がある。

また、PoCの予算を確保していくこともスタートアップとの連携では欠かせない。

PoCの費用は1件あたり数百万程度が一般的で、年間にして数千万円も確保できればかなりの件数を実行できる。投資の予算が数百億円もあるのに、PoCへの予算がないというのは、オープンイノベーションを通じて何を目指すか、そのための戦略が伴っていないことを表している。

本書p.178より

ポリネーターの役割

これまででの、ポリネーターの役割を整理すると以下のようになる。

①自社の将来像とスタートアップに求めることを明確に示し、②事業部との連携において期待値コントロールを間違わないように間に入って調整を行い、③経営企画などと連携しながら柔軟性ある予算を確保し、④データ連携、契約の手続き、IPの処理などについて他部門との連携も行なっておき、⑤事業部に適切な担当がいなければ連絡窓口になることなどが挙げられる。

本書p.179より

筆者が対話してきたポリネーターは社内政治に強く、会社への理解もある課長や部長クラスが多い。また、スタートアップと協業する上で「好奇心と強いメンタル」がいる。

また、ポリネーターの組織としては、「失敗の許容」と「アジャイル型行動」などが必要な要素になる。

両利きの経営

本書には「両利きの経営」の引用がいくつも登場する。いっそそっちを読んだ方がいいのではと思うほどに。

その中に、両利きの経営を実践するためにする作業がある。それは、ハンティングゾーンを明確にすること。

1. このまま一本調子で行けるのか?(健全な危機意識を持つ)
2. 自社の存在意義を再定義する(自社のアイデンティティを問い直す)
3. "ありたい姿”を描く(10年後のビジョンを描く)
4. 事業ポートフォリオを組み替える(コア事業領域と戦略領域を設定する)

本書p.323

こうして、事業アイデア(着想)を生み出し、アイデアの仮説検証を通じてインキュベーション(育成)し、最後に既存事業の資産と組織能力を活用することで、検証された仮説をスケーリング(量産化)にまで、持ち込む。それがポリネーターの役割。

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