報身とは法門身である

智顗は報身を法門身と言っている。このことを以下に論証する。

三法とは真性軌・観照軌・資成軌の三軌のこと
『法華玄義』では、三法とは真性軌・観照軌・資成軌の三軌であると説明されている。その説明文を『法華玄義』から引用すると以下の通り。

三法妙とは、総の三法・縦の三法・横の三法・不縦不横の三法・類通の三法を謂う。皆な秘密蔵なるが故に、称して妙と為す。

菅野博史訳注『法華玄義(上)』〔第三文明選書1〕、第三文明社、2016年、p.199

三法と言うは、即ち三軌なり。軌は軌範に名づく。

菅野博史訳注『法華玄義(中)』〔第三文明選書2〕、第三文明社、2016年、p.522

総じて三軌を明かすとは、一に真性軌、二に観照軌、三に資成軌なり。

菅野博史訳注『法華玄義(中)』〔第三文明選書2〕、第三文明社、2016年、p.522

法身・報身・応身の三身と三軌は「意を得れば義同じ」
『法華玄義』によれば、法身・報身・応身の三身と三軌は「縁に赴けば名異なれども、意を得れば義同じ」(大正蔵第33巻、p.744a)であり、以下のように言われている。

類通三身とは、真性軌は即ち法身、観照は即ち報身、資成は即ち応身なり。

菅野博史訳注『法華玄義(中)』〔第三文明選書2〕、第三文明社、2016年、p.547

法身・般若・解脱の三徳と三軌は「意を得れば義同じ」
『法華玄義』によれば、法身・般若・解脱の三徳と三軌も「意を得れば義同じ」である。菅野博史博士の解説を以下に引用しておく。

最後に、類通三徳では、『涅槃経』の法身・般若・解脱の三徳と、『法華経』の三軌とが一致することを説いている。『法華玄義』には、「『大経』の三徳は共に大涅槃を成ず。此の経の三軌は共に大乗を成ず。彼しこに法身の徳を明かし、此こに実相と云う。彼しこに仏性と云うは、亦た一なり。一切衆生は悉く一乗なるが故なり。亦た是れ実相を指して一乗と為す。彼の処に般若の徳を明かし、此の経に『其の智慧の門は、難解難入なり』、『我が得る所の智慧は、微妙最第一なり』、乃至、『声聞の法を決了するに、是れ諸経の王なり』と明かす。皆な是れ般若なり。彼の経には解脱の徳を明かし、此の経には数数示現して、生を現じ滅を現ずることを明かす。衆生を調伏する所の処に随いて、自ら既に累無く、他をして解脱せしめ、乃至、万善の事の中の功徳を収取して、悉く果を証することを得。豈に解脱に非ざらん。二経の義合す」(七四五下-七四六上)とある。真性軌が法身、観照軌が般若、資成軌が解脱と対応すると説かれていると解釈できる。

菅野博史『『法華玄義』を読む 天台思想入門』、大藏出版、2013年、pp. 237-238

実相身・法門身・色身は法身・般若・解脱に帰する
『魔訶止観』では、実相身・法門身・色身の三身は法身・般若・解脱の三徳に帰すると説明されている。以下にその説明を引用する。

別相とは、身に三種有り。一には色身、二には法門身、三には実相身なり。若し息化に帰を論ぜば、色身は解脱に帰し、法門身は般若に帰し、実相身は法身に帰す。

菅野博史訳注『魔訶止観(Ⅰ)』〔第三文明選書18〕、第三文明社、2022年、p.228

対応関係の図式的な表現
これまでに述べたことを図式的に表現すれば以下のようになる。

真性軌 = 法身 = 法身 = 実相身
観照軌 = 報身 = 般若 = 法門身
資成軌 = 応身 = 解脱 = 色身

結論
上の図式的表現から明らかなように智顗は報身を法門身と言っている。

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